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佐遊李葉  -さゆりば-

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2016年05月13日
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カテゴリ:羅刹
 小さくなっていく車を見送っているうちに、能季の胸は哀しみに詰まり、猛っていた心は逆に鎮(しず)まっていったようだ。

 能季はようやく後ろを向き直り、兵藤太の方へ近づいていった。

 道雅は後ろ手に縛られたまま、嘯(うそぶ)くような目でこちらを見ている。

 その目は能季を何となく嘲笑(あざわら)っているような気がした。

 能季は再びこの爺を殴りつけたい衝動に駆られたが、強いて自分を押さえて言った。

「そなた、ここがどこだかわかるか」

 道雅は黙っている。

 ただ、小八条第で最初に見た時のような、無機質な玻璃(はり)の珠のような目で、じっとこちらを見返しているだけだった。

 能季は少し呼吸を置くと、ゆっくりと言った。

「ここは、今から三十年前、一人の女が殺された場所だ。この大宮川の中で、そなたに切り刻まれ、食い荒らされた女の……」

 道雅の玻璃の目は、能季の身体を突き通して、その向こうにある大宮川をじっと見つめているようだった。

 だが、道雅はやがて目を閉じ、自分の膝に目を落すと、背を小刻みに震わせ始めた。

 泣いているのだろうか。

 己の罪を悔い、女を哀れんで。

 いや、そうではない。

 道雅は目を閉じて俯(うつむ)いたまま、くぐもった声を上げながら笑っているのだった。

 その声は、最初は微かなものだったが、次第に大きくなり、いまや哄笑(こうしょう)とも言えるほどになっていった。


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最終更新日  2016年05月13日 14時48分07秒
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