213217 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

佐遊李葉  -さゆりば-

佐遊李葉 -さゆりば-

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

vyゆりyv

vyゆりyv

カレンダー

カテゴリ

カテゴリ未分類

(0)

露野

(129)

心あひの風

(63)

孤舟

(59)

かるかや

(68)

蒼鬼

(253)

光明遍照

(53)

山吹の井戸

(52)

きりぎりす

(217)

遠き波音

(50)

羅刹

(193)

コメント新着

vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -193-(10/05) 千菊丸2151さん いつもお読みいただいて…
千菊丸2151@ Re:羅刹 -193-(10/05) 是非このブログを残してください。 ゆり様…
vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -192-(09/14) 千菊丸2151さん だらだら更新に最後まで…
千菊丸2151@ Re:羅刹 -192-(09/14) 漸く完結しましたね。 ちょっと後味が悪い…
vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -190-(09/08) 千菊丸2151さん 花山院皇女は惚れた弱み(…

サイド自由欄

QLOOKアクセス解析
2016年06月17日
XML
カテゴリ:羅刹
 父は何か知っているのだろうか。

 結局、能季は父には何も打ち明けなかった。

 年老いた父にはできるだけ迷惑は掛けたくなかったし、それにもう済んでしまったことだ。

 ただ、数日前、父はふと思いついたように、能季へ道雅が死んだことを告げた。

 曲がりなりにも、廟堂の長老の一人である父のことだ。おそらく誰かから報告を受けたのだろう。

 もちろん、能季が友人の婿入りの件と偽って、以前道雅のことを詳しく尋ねたことを思い出したからかもしれない。

 だが、そうさりげなく切り出した父の眼差しには、どことなく深い慈愛のようなものが感じられた。

 もしかしたら慧眼の父は、能季が一人で苦悩していることを、すべて見抜いていたのかもしれない。

 だが、自分の力だけで何とか問題を解決しようとしている能季を、一人前の男と信頼してじっと見守っていてくれたような気もする。

 能季はそんな父の心遣いが嬉しく、せめて一つくらい父に頼って親心を満足させたくなった。

 それで、当子内親王の乳母から預かった道雅の文を、父に見せたのだった。

 父は古い結び文を解いて、書き記された和歌を何度も読み返した。

 それは、和歌の上手として知られ、当代一の審美眼を誇る父の心さえも、揺り動かすようなものだったらしい。

 やがて、父は感慨深げに溜め息をつきながら、静かな声で能季に言った。

「これは私が預かっておこう。このまま埋もれさせてしまうには惜しい歌だ。私の手元にあれば、いつか何らかの形で、この世に残していくこともできようから」


にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016年06月17日 14時18分45秒
コメント(0) | コメントを書く
[羅刹] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.