2915211 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Profile

bunakishike

bunakishike

Recent Posts

Category

Archives

2014年05月22日
XML
カテゴリ:



図書館で偶然見つけタイトルに惹かれて借りて読んだ。
どうせ、よくある内容だと思って読んでいたが、これが私の期待?を裏切って素晴らしい読み物だった。
著者のパウル・ベッカーはドイツ生まれで、ナチスが政権をとった翌年の1934年にニューヨークへ移住している。
彼の著作では「ベートーヴェン」(音楽之友社刊)が有名らしいが、私は知らなかった。
この作品は亡くなる1年前に書かれたもので、英語で書かれた唯一の作品だ。
オーケストが生まれてから現在(1936年)までの状況を綴っている。
副題が「大作曲家が追い求めた理想の音楽」となっていて、作曲家を中心にしたオーケストラの変遷を描いている。
こういう書物にあるような、堅苦しい学術的なものではなく、著者のいい意味での独断と偏見に満ちた考えを自由に書いていて、痛快ですらある。
こういう書物の中では異色の存在だと思う。
中心は、ハイドンからストラヴィンスキーまでのオーケストラ音楽で、著者の個性的な意見が新鮮だ。
オーケストラほ発生から古典のオーケストラ、オペラの伴奏と次第に進化し独立して演奏するようになる。
ベートーヴェンはオーケストラにデュナーミクの幅の広さを求めた。
当時、作曲家が楽想が浮かぶと、その楽想に適した音色を出せる楽器は何かを考える。
そして、その楽器が最も鳴る調性は何かを考えるという。
この意見は作曲を知らないものとしては目から鱗だった。
ロマン派の時代ではウエーバーの評価が高い。
古典派のオーケストラと比べると、最も違う点は、従来オーケストラを一つの楽器として響かせようとしていたベートーヴェンに対し、ソロとして扱った時のみ得られる演奏効果を強調したり、
ヴィルトゥオーゾ並みのテクニックを要求して一定の楽器に新たな重要性を与えた。
また楽器のギリギリの音域の音を使って性格的な音色を出すことで新たな演奏効果を多数見出した。
こうしてウエーバーはこの時代の作曲家全員のお手本となった。
ベルリオーズは管弦楽の大家ではあるが、変えたのはオーケストラの編成のみで、音楽形式は多少の修正のみで、革新的音楽家という評価は過大評価されているという。
また、作品を書くよりも著述業に忙しいと手厳しい。
ベルリオーズは楽器の調整に関しては保守的で、それに比べると同時代のマイヤベーアはずっと大胆だった。
悲しいことに彼は「うわべだけの効果を狙った」という中傷を未だに受けている。
マイヤベーアはヴィルトゥオーゾの時代において最も大きな影響を及ぼした作曲家のひとりで、純粋に音楽的な観点からは最も独創性にあふれた発明家と言えると力説している。
ブラームスが交響曲を書けなかったのはベートーヴェンの第9に連なる曲を書く重圧に克服するために時間を要したという説がまことしとやかに伝えられているが、単に興味がなかっただけだと喝破している。
シェーンベルクやストラビンスキーの時代になると、オーケストラはその役割を終える。
歌うことからデュナーミクの拡大、ハーモニーの進化を経て、最後にオーケストラは最後の要素であるリズムの進化に至る。
その段階になると、今までのオーケストラの主役であった弦は主役の座を降りなければならなくなる。
結果として、オーケストラの終わりがやってくるというのがベッカー流「オーケストラの音楽史」だ。
この本が書かれたのが今から70年以上前の1936年であることを考えると、ベッカーの感覚は現代のわれわれとそう違っていないことに驚く。
当時あまり普及していない、ブルックナーやマーラー(代表作が第8交響曲というのは現在の評価とは違うが)も高く評価している感覚の鋭さには驚く。
意外だったのは、先の述べたウエーバーやマイアベーア、近代ではヒンデミットが高く評価されていることだ。
個人的にはマイアベーアなんて、聴いたこともないくせに、何となく胡散臭い作曲家と根拠もなく思い込んでいた。
あまりにも褒めるので、心を入れ替えて?彼の音楽を聴こうと思ったが、あまり種類は多くない。
世の中の評価も作曲家の存命中から変わっていないのだろう。
 面白いのは当時の指揮者の印象。
マーラーがステージと音楽に一体感をもたらす演奏を繰り広げたというのは初めて聞いた。
また、ワインガルトナーがハンス・フォン・ビューローの模倣に過ぎないとか、持ち前の真摯な姿勢を捨てて技巧に走るようになったフルトヴェングラーなど、辛辣な批評も面白い。
ベッカーはベルリン・フィルの奏者であったり指揮も手掛けていて、そのあと評論家になったという経歴なので、俗にいうディレッタントと呼ばれている人々とは一線を画す評論家だ。
そういう経歴なので、評論に説得力もあるし、大胆なことも言えるのだと思う。
 松村 哲哉氏の訳は日本語としてこなれており、すいすい読み進むことが出来る。
オーケストラが好きな方には絶対のおすすめ!


パウル・ベッカー著 オーケストラの音楽史 白水社 2013年4月30日発行











お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2014年05月22日 23時35分39秒
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.