カテゴリ:読書
北沢 秋(きたざわ しゅう)という作家のデビュー作「哄う合戦屋」を読みました。まずは、そのあらすじを・・・・ 時は戦国の世、所は山に囲まれた中信濃(長野県松本市あたり)。三千八百石の領地をもつ、土豪、遠藤吉弘の元を一人の浪人が訪れる。身の丈六尺の大男で顔には大きな傷痕(きずあと)、おまけに無愛想極まりない。名を石堂一徹といい、その存在は信州一円に鳴り響いていた。希代の戦上手で、指揮した戦いでは負けたことがないという。しかし、長いこと主を持たず、浪々の身を続けていた。ひょんなことから遠藤吉弘に軍師として仕えることになるのだが、1年もたたずに近隣の土豪を倒し、遠藤家を二万石まで押し広げてしまう。 遠藤家の領土をあっという間に拡大し、家中でも従来からの家老を押しのけ、遠藤家NO.2にまで取り立てられた石堂一徹ですが、この状況を現代社会の会社に当てはめて見ると・・・業績はまずまずの会社で人望は厚いが、その人柄ゆえに業容の拡大にまでの野心があまり無い社長のもとに営業成績では抜群の力量を発揮する人材が途中入社して、あっという間に社内ナンバーワンの営業成績を上げて、会社自体も成長企業として注目されたといったところでしょうか? この石堂一徹ですが、戦場での働きは抜群ですが、日常業務は無頓着でこの方面で部下をまとめるようなことは一切やりません。この点、営業成績は群を抜いているが、会社員として日常守らなければならない事項を無視する人とよく似ています。 こういうタイプは家中でも社内でも、旧来の上席者に疎まれることになり、次第に居場所が無くなり、立ち位置が微妙になってきて、旧来の上席者からは排斥運動が起こり、一方では若い人たちからは頼りにされ、下手をするとお家や会社が崩壊してしまう・・・ということになりかねません。 さて、小説上での石堂一徹も家中の古参家老から敵意を持たれるも、殿様からの厚い信任を得て事なきを得るのですが、次第に殿様から「ひょっとして、自分が殿様になろうとしてるんじゃないか・・・」などと疑いの目を向けられるようになり、遠藤家から去ろうとします。が・・・ 最後まで書いてしまうとマズイので、ここら辺で止めときますが、この小説の時代背景は戦国時代なのですが、いつの時代であれ、他人を信じるということがいかに困難なことであるか、他人を信じるということがいかに大切なことであるか、を感じさせてくれる作品です。 北沢 秋(きたざわ しゅう):東京大学工学部卒業、会社員生活を経て執筆活動に専念する。「哄う合戦屋」がデビュー作となる お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年01月31日 16時52分58秒
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