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非常に適当な本と映画のページ

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2005.07.19
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カテゴリ:洋画
宇宙戦争

 H.G.ウェルズのSF小説を、スティーブン・スピルバーグが映画化。トム・クルーズ出演。スピルバーグとトム・クルーズはマイノリティ・リポートでも監督・主演の関係にある。




粗筋

 レイは、離婚した元妻から息子と娘を週末の間預かることに。元妻は既に別の男と再婚しており、その週末は再婚した夫の実家があるボストンで週末を過ごすことになっていたのだ。
 息子と娘はレイと元妻の間でできた子だが、新しい「父親」に慣れており、レイを「実父だから一応付き合ってやっている」という捉え方しかしてくれない。
 そんなところ、レイは奇妙な嵐を目撃する。
 稲妻が同じ場所を数十回直撃する、というものだった。
 そこから、地中に埋まっていた何かが飛び出した。
 呆気に取られて見ている群集に対し、その何か――エイリアンの戦闘兵器「トライポッド」――は、容赦ない攻撃を開始。
 町はアッと言える間に壊滅状態になった。
 レイは、命辛々自宅に戻ると、息子と娘を連れて町を脱出。元妻の実家があるボストンへと向かう。
 レイはエイリアンの戦闘機器は一台だけだと思っていたが、実は無数にあり、世界中の町を破壊していた。
 エイリアンはただ問答無用で町を破壊しまくるだけなので、レイ一行はひたすら逃げるだけしかない。
 無論、逃げようとしているのは彼らだけでなく、アメリカ中の住民が逃げようとしていた。
 しかし、エイリアンはどことなく現れては破壊の限りを尽くす。地球には反撃の希望すら見えないでいた……。


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感想

 「エイリアンの無慈悲な攻撃によって人類が大打撃を受ける! 人類はエイリアンに勝てるのか?」
 ……というストーリーの映画は、最近では他にインデペンデンス・デイがある。
 本作とインデペンデンス・デイの最大の違いは、主人公がエイリアンの撃退において中心的な役割を果たしているか否か、という点。
 インデペンデンス・デイでは、主人公はエイリアンの企みを事前に察知できるほどの才能を持ち、アメリカ大統領に偶然にも近付くことができたので、アメリカ軍のエイリアン撃退に参加することができた。
 一方、この宇宙戦争では、主人公は単なる一般市民。エイリアンの襲撃に対し何の手も打てず、娘と息子を引き連れて逃げ回るだけしかできない。
「エイリアン撃退は完全に他者におまかせ」といった状態なのだ。
 一般市民の観点を描くというのも、ストーリーに深みを持たせるという風に使うなら悪いことではないが、本作のようにずっと一市民の視点でエイリアン襲撃を描く、となるとスケール感に非常に乏しい。
「宇宙戦争」と大々的に名乗りながら、「宇宙」のうの字も見られなかった。
 これもインデペンデンス・デイと異なる点。
「エイリアンは圧倒的な有利な状態で地球のあらゆるものを殲滅。人類はどうなってしまうのか……?」と、思っていたら、「エイリアンはいつの間にか自滅していて、レイは無事ボストンに到着し、元妻とは勿論、途中で離れ離れになって死んだと思ってばかりいた息子とも再会して終わり」という展開に。
 エイリアンが自滅した理由は、地球の微生物(細菌)でやられてしまったから、という風になっていた。
 これ、原作そのまま。
 H.G.ウェルズが原作を発表した時代は、細菌は一般市民にあまり認識されておらず、「エイリアンは細菌によって倒された!」という結末は斬新でそれこそSFっぽく見えたのだが、細菌というものの存在が比較的身近な現在、全く同じ結末は物足りないというか、馬鹿馬鹿しい。
 なぜ全く同じ結末にしたのか、理解し難い。
 現在の観点から観ると、宇宙をも飛行できるほどの技術を持つエイリアンが、侵略する惑星の細菌と自分らとの適合性を全く調べないまま総攻撃するなんて、アホ過ぎるのだ。
 ま、調べていたが、それでも調査し切れなかった、としよう。
 一部のエイリアンが細菌に犯されたことを、他のエイリアンが全く気付かず、全滅してしまう、というのはおかしい。互いに情報伝達できなかったのか? それとも全てのエイリアンが同時に細菌に犯されてやられた、てことか?
 この映画の中で分からないのが、群衆の行動。
 とにかく逃げない。
 地面で地割れが発生した時も、群衆はニ、三歩下がるだけで、その場に留まる。
 エイリアンが地面から登場した時も、群衆は十歩程度下がるだけで、呆然と見守っている。エイリアンが殺戮を開始した時点でようやく逃げ始めるが、それでも半数以上は影に潜んで様子を窺い、その結果殺されるという始末。
 最後の場面で、倒された「トライポッド」からエイリアンが出てくるが、この時も群衆がわんさと集まってきて、エイリアンが死んでいく有様を呆然と見守る。
 危機意識がないのかね?
 スピルバーグは宇宙人による侵略が絡んだストーリーの中で一市民の家族愛を描きたかったらしい。
 家族愛を描くことにおいては成功したといえるが、宇宙人による侵略をきちんと描いたか、となると疑わしい。
 結局宇宙人がどういう連中で、どういう目的で地球を襲撃したのか、全く説明しないまま終わってしまったのだ。
 スピルバーグはアメリカ的なハッピー・エンディングをどうしても描かなければならない監督になってしまったようで、とっくに死んでいると思われていたレイの息子が、最後の場面で何事もなかったかのように登場して(つまり息子は父より先にボストンへ到着していたことになる)、父との再会を喜ぶ、というのはどんでん返しというより喜劇だろう。
 本作品は、いざ全面戦争になると、一般市民は情報が不充分なままとにかく逃げ回ることを強いられ、全て終わった後になってからようやく戦争の全体像を把握できるようになる……、という現実的な状況を描いているといえる。
 冴えない父レイを演じるのはマイノリティ・リポートやミッション・インポシブル2でヒーロー役を演じたトム・クルーズ。ヒーローとは程遠い役を演じるトム・クルーズを観るのは久し振り。
 レイの元妻を演じるのは、ロード・オブ・ザ・リング:二つの塔とロード・オブ・ザ・リング:王の帰還にも出演したミランダ・オットー。いつの間にかオバサンっぽくなってしまった。
 本作は、インデペンデンス・デイとは全く別の映画。
 が、観る限りではタイアップしていた方がよかったのでは、と思う。
「レイは家族を連れて逃げ回った。逃げ回るしかなかったからだ。そしてふと気付くとエイリアンはいつの間にか倒されていた。テレビを点けると、インデペンデンス・デイの大統領が勝利宣言をしていた」という風に。
 ようするに、「本作は実はインデペンデンス・デイのサイドストーリーだったんですよ!」
 そうすれば、どんな観客も予想できない大どんでん返しになっていただろう。


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Last updated  2006.01.08 11:04:07
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