少女漫画感想『CRAZY FOR YOU』『君に届け 番外編~運命の人~』(椎名軽穂先生)
久々に新しい少女漫画を読みました!椎名軽穂先生の『君に届け』の前後作です。もともと『君に届け』の恋敵役・くるみ(胡桃沢 梅)ちゃんが好きだったので彼女が主役の『運命の人』が気になっていて読んでみたかったのですが、ヒーローが『CRAZY FOR YOU』の人気キャラ(赤星栄治くん)だと聞き、ちゃんと続けて鑑賞したいな! と思いました。以下、簡単感想です。『CRAZY FOR YOU』(椎名軽穂先生・別冊マーガレット・全6巻・2003-2005年)美人でもなく、昔から「ひきたて役」と言われ続けて来た、明るくお人好しな幸(さち)。彼女は、合コンで出逢った男の子・ユキちゃんのことを大好きになるが、ユキちゃんは女癖が悪く、「嘘ばっかつくよ」と突き放しにかかってくる。また、ユキちゃんには「本気で好きな人」が居るようで…。椎名先生の「君に届け」以前の作品が、五角関係のドロドロものだというのはなんとなく知っていました。今回初めて読んでみましたが、すごく面白かったというか…興味深かったです。私はもちろん、「君に届け」は名作だと思っていますし、この作品がとても売れたのもすごく納得しているのですが…なんだろう…ちょっと違和感を感じる作品というか。すごく純情な青春ラブストーリー…なんだろうと思うんですが、嫉妬、妬み、自己否定、(自己を守るための)他者否定…と、そこかしこに『黒い感性』が出て来る。こういった感情は人としてある方が自然なので、違和感というわけではないですが、ヒロインの爽子ちゃんは、それらから遠い存在過ぎて、読者としては思考回路に今いちついていけなかったり…。風早くんは、爽子ちゃんの心のキレイなところが大好きなんだろうな、というのももちろん分かるんですが、風早くん自体、個人的には「爽やかな子」だと素直に認識できないというか…。なんかこう綺麗なんだけど、裏を返せば「器が小さい」とも言えるというか。あくまで私の受け取り方なのですが、なんて言うかな…当たり前みたいに「黒い感性」が存在する世界線なのに、そこからヒーロー・ヒロインを遠ざけた「美しい」存在として描写しようとすると、どうにも「周囲の人の気持ち/空気感に鈍い子たち・分かってない子たち」な感じになっちゃうというか…。※実は「君に届け」は20巻くらいまでしか読んだことがないので、 その後の展開できちんと突っ込んだ描き方がされていたらすみません…。『君に届け』に上記のような印象を抱いていた私にとっては、今回『CRAZY FOR YOU』を読んで、こっちが作家様の元の気質爆発の作品だったんだな…!とすごく納得感があり、非常に素直に読み進めることが出来ました。五角関係ということで、「迷い」だらけの非常にめんどくさい恋愛模様が展開されます。ここに来て、「黒い感性」で目いっぱい話を回すのですが、「人を傷つけたい・悪い人」が居るわけではない「爽やかさ」を非常に感じて、椎名先生のお人柄が非常に活きているなぁ、と感じました。主人公の幸ちゃんも「黒い感性」から遠いわけではなくて、全部分かってるんですよ。全部分かって許容・自分の中で全部咀嚼した上で、何があっても「みんな大好き」だし、いつでも自分の気持ちに素直に行動できる強さがある娘で、「この子はすごいなぁ!」とリスペクトしながら読むことができました。この目線が、作品の恋愛面では報われることのなかった赤星栄治くんの目線なんだろうな、と思いますし、幸ちゃんと赤星くんが「良かった」と思えるラストだったので、爽やかに読み切ることが出来ました。ただやはり、五角関係のドロドロでかなり椎名先生も神経を使ったんだろうな…特にラストのラストのあたりは、相当悩んで描かれているのがひしひしと伝わって来て、この反動で、次に『君に届け』が出て来たのはすごく納得!と思いました。(「君に届け」1巻の欄外で、作者様のこういった説明がされてましたね。)『君に届け 番外編~運命の人~』(椎名軽穂先生・別冊マーガレット・全3巻・2018-2022年)爽子ちゃんと同じ大学に進学したくるみ(本名:胡桃沢 梅)は、爽子ちゃん宅に通い詰める、ガッツリ依存した生活を送っていた。合コンに参加してみるも怪しげな男に絡まれてしまうが、爽子ちゃんの従兄の大学生「えーじお兄ちゃん(赤星栄治)」が助けてくれて…。『君に届け』のくるみちゃんと、『CRAZY FOR YOU』に登場した赤星くんのラブストーリーです。両作の良いとこ取りをしたような作品というか、とにかくめっちゃ良かったです!!くるみちゃんは幼少期より美少女で僻まれやすく、また自分でも自覚している通り我が儘で疑り深い&黒い感情も内包している「敵を作りやすい性質の女の子」。『君に届け』本編では、恋敵の爽子ちゃんの悪い噂を流す等 嫌がらせもしてしまい…(爽子ちゃんのような「毒気の無い&性格の良い女の子」には、絶対敵わない、自分の黒い&面倒くさい部分を見られたら、絶対愛して貰えない)と思ってます。距離を縮めてくる赤星くんに対して、くるみちゃんは(内心ときめいたり期待しつつも)「私、こんなに黒くて酷いことやっちゃう女だよ!めんどくさい女だよ!」ってアピールしまくって、そんな人を試すようなことばかりしか出来ない自分に落ち込んだりするんですが…そもそも『CRAZY FOR YOU』の世界線を生きて来て、超めんどくさい(人を試したがる)気質のユキちゃんのことが、友人として大好きで、そんなユキちゃんを全身全霊で許容してくれる幸ちゃんのことを尊敬していた赤星くんにしてみれば、くるみちゃんのやることなすこと、全部ただただ可愛いだけ、自分に「甘えたい」と思ってくれてるのが、ただただ嬉しいだけ、という奇跡のマッチング。くるみちゃんがもうとにかく可愛くて可愛くて…!『君に届け』本編を読んでいる時から大好きなキャラクターでしたが、本作を読んで、もっともっと大好きになりました。くるみちゃんに相応しいのは、絶対に風早くんじゃないよ!…包容力のある『年上』だよ!全3巻ながら画面やモノローグ、キャラクター同士のやり取りがとにかくキレてるし、2人の相性の良さが本当に立っていて『運命の人』というタイトルが、大げさではなくぴったりだな!純な少女漫画、最高だな!と感じることが出来る作品でした。繋がりのある2作品、読み応えがありました!いや~、良かったです!!椎名軽穂先生の新作が連載開始しているみたいですね。そちらも気になりますが…『CRAZY FOR YOU』以前の初期作も是非読んでみたいな、と思っています。by姉