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テーマ:憲法議論(165)
カテゴリ:憲法
《個人の自律を保障する権利の範囲が,常に公共の福祉によって支配され,画定されるという考え方は,憲法13条前段の言う「個人の尊重」の原理と真っ向から衝突する.この原理と整合するように12条を解釈しようとすれば,そこで言う「国民の自由及び権利」とは,人類普遍の人権ではなく,「この憲法が国民に保障する自由及び権利」と解さねばならない》(長谷部恭男『憲法の理性』(東京大学出版会)、p. 85)
《人類普遍の,そして個人の尊重の原理から当然に導かれる「人権」に加えて,憲法が特に「国民」に対して,一定の「自由及び権利」を保障する理由は,それが人権のより有効な保障に役立つから,あるいは,その保障が何らかの公共の福祉の実現に役立つから,といういずれにしても手段的な権利として保障するという理由に帰着するであろう. 憲法12条の言うのは,これら憲法が特に国民に与えた自由及び権利が,その保障の根拠からして,公共の福祉に反しえないことを明らかにしたものと解される.逆に言うと,常に公共の福祉のために利用されるべき権利・自由を,この憲法が,特に,人権に加えて国民に与えている旨を示していることになる》(同) さらに長谷部氏は、第13条について次のように解説する。 この条項が,「立法その他の国政」のみに関する指針を設けたもので,裁判所による裁判の基準を与えようとするものではない…立法,行政など,国政を担当する政治部門の国家機関が,第1次的には公共の福祉の実現に努めるべきであり,またそれに適した組織と決定方法をとることは一般に受け入れられた見解であろう.だとすると,13条は,そのような第1次的任務に加え,かつその任務に反しない限りで,生命,自由および幸福追求に対する国民の権利一般についても,これを最大限尊重すべきことを,政治部門に対し要請するものと考えられる.前述したような,個人の自律を保障する人権を,公共の福祉の要求に抗しても保護すべき任務は,政治部門よりは司法機関に委ねられるべきである.個々の当事者の請求に応じて手続を開始し,個別の事情や理由をつぶさに勘案して,事件毎に解決を下す司法機関こそが,このような任務を適切に果たすことができる.(同、p. 86) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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