1603975 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

照千一隅(保守の精神)

照千一隅(保守の精神)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Free Space

「照千一隅(しょうせんいちぐう)」(一隅を守り、千里を照らす)は伝教大師・最澄の言葉。本を読み、考えたことをこのブログに書いて参ります。ご意見、ご感想など御座いましたら是非お寄せください。

Profile

平成ソクラテス

平成ソクラテス

Comments

Calendar

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

まだ登録されていません
2023.01.24
XML
カテゴリ:歴史

ケンブリッジ大学にて「歴史とは何か」と題するカーの講演がなされたのが1961年のこと。カーは、

今日の社会学は2つの相反する危険――超理論的になる危険と、超経験的になる危険とに直面しています。(E・H・カー『歴史とは何か』(岩波新書)清水幾太郎訳、p. 94

と言った。社会学だけに留まらず、恐らく社会全体が経験と理論の平衡を乱している状態にあったということではなかろうか。

第1は、社会一般に関する抽象的な無意味な一般化に熱中するという危険であります。大文字で書いた社会も、大文字で書いた歴史と同様に私たちを惑わせる誤謬(ごびゅう)であります。この危険が切実になっておりますのは、歴史が記録する特殊的事件の一般化という仕事だけを社会学に認める人たちがいるせいで、「法則」を持つという点で社会学は歴史から区別される、というようなことまで言われている始末です。(同)

 「一般化」(generalization)には「検証」が不可欠である。必要十分な「検証」を伴わない、安易で軽率な「一般化」では、現実世界から乖離(かいり)してしまう。

もう1つの危険は、30年ばかり前にカール・マンハイムが予想したもので、今日では非常に広く見出されるものですが、社会学が「社会的再適応における幾つかのバラバラな技術的諸問題」に分解してしまうという危険であります。(同)

The outlines of a sociology which is indifferent to the historical time-element were already perceivable in America, where the dominant type of mentality became more completely and more quickly congruent with the reality of capitalistic society than was the case in German thought. In America, the sociology derived from the philosophy of history was discarded at a rather early date. Sociology, instead of being an adequate picture of the structure of the whole of society, split up into a series of discrete technical problems of social readjustment. – Karl Mannheim, Ideology and Utopia: IV. The Utopian Mentality: 4. Utopia in the Present Situation

(歴史的時間要素に無関心である社会学の輪郭は、支配的な物の考え方が、ドイツ思想の場合よりも、資本主義社会の現実と完全で迅速に合致するようになったアメリカで既に認識されていた。アメリカでは、歴史哲学に由来する社会学は、可成り早い時期に捨て去られた。社会学は、社会の全体構造を適切に描写する代わりに、一連の社会再調整の個別的技術問題へと分裂したのである)― マンハイム『イデオロギーとユートピア』:IV. ユートピア的意識:4. 現在状況のユートピア

社会学というのは、さまざまの歴史的社会を研究するもので、それぞれの社会は特殊な歴史的な原因と条件とによって作り上げられた独自のものなのです。しかし、計算や分析という、謂(い)わゆる「技術的」な問題に仕事を限って、一般化や解釈を避けようという試みは、静的な社会の無意識的擁護者になるほかはないでしょう。

もし社会学が豊かな研究領域になろうというのでしたら、歴史と同じように、特殊的なものと一般的なものとの関係を取扱わねばならないでしょう。しかし、社会学もダイナミックにならねばなりません――静止した社会(こういう社会は存在しないのですから)の研究でなく、社会の変化および発展の研究にならねばなりません。

あとは、ただ、歴史が社会学的になればなるほど、社会学が歴史的になればなるほど、双方にとって好都合である、と言うにとどめたいと思います。両者の間の国境線は往復が出来るように広く開いておきましょう。(カー、同、pp. 94f






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2023.01.24 21:00:10
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.