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2021.10.29
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カテゴリ:食の安全
岸田首相、麻生氏発言を陳謝=道産米めぐり、立民道連は抗議
岸田文雄首相は自民党の麻生太郎副総裁が地球温暖化により北海道産米が「うまくなった」と発言したことに関し、「発言は適切ではなかった。申し訳ないと思う」と陳謝した。
岸田氏は「お米は、関係者の皆さんが絶えず品種改良など大変な努力をされ、その積み重ねでおいしくなっていると認識している」と指摘。気候変動についても「災害や農産物にも影響を及ぼす地球規模の大変重要な課題だ」と語った。
麻生氏は25日、札幌市などでの街頭演説で道産米について「昔は『やっかいどうまい』と言っていた。温暖化したおかげでうまくなった」などと発言。これに対し、立憲民主党北海道連は26日、文書で「農業関係者の長年にわたる努力を侮辱したもので、温暖化と結びつけるのは見当違いだ」と抗議した。

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無思慮な発言を、それも北海道での応援演説でやったことが批判を浴びています。
しかし、そもそも北海道で米作がなぜ可能なのでしょうか、そしてそれは温暖化と関係があるのでしょうか。

函館の松前藩では江戸時代から米作が試みられていたようですが、北海道での本格的な米作は明治以降に始まり、作付面積の年度別推移をみると、昭和初期には、すでに作付面積は現在を上回る作付面積(ただし、現在のコメの作付面積は減反政策直前の1960年代よりかなり減っている)となっています。
米作を地域別に見ると、多いのは道南と道央、特に旭川周辺の上川地方は北海道最大のコメどころです。網走近辺でも多少コメが作られますが、一方釧路、根室、宗谷などではほとんど米は作られません。

そこで不思議なことに気が付きます。旭川の年平均気温は7.0度で釧路の年平均気温は6.7度。0.3度しか違いません。それなのに旭川は屈指の米作地帯で釧路は米が作られないのは何故か?

答えは、「夏の暑さ」と「雪の量」です。
旭川の8月の平均気温は21.2度、日最高気温の平均は26.8度です。一方釧路は18.2度と21.5度。日最高気温の平均に5度も違いがあります。さらに、8月の日照時間は旭川154.6時間対釧路117.6時間です。稲の成長期に低温で霧ばっかりの釧路で稲作は厳しいのです。

もう一つは雪の量です。雪は実は天然の断熱材です。極寒の南極の氷床の下に、地底湖(氷底湖)があることはよく知られています。雪に覆われた土地は、ほとんど凍結しないのです。
旭川は豪雪地帯ですが、釧路はあまり雪が降りません。そのため、旭川より釧路の方が地面の凍結が遅くまで残ります。ちなみに、冬の寒さ自体は釧路より旭川の方が厳しいです(1月の平均気温釧路-4.8度対旭川-7.0度)しかし、真冬の気温の差より、春になって地面の凍結がいつまで続くかの方が、コメ作りにははるかに重要なのです。冬がどんなに寒かろうが、種もみはその間は倉庫に保管しておけばいいのですから。
この2つの条件によって、年平均気温では大差がないように見えるのに、旭川が米作地帯で釧路はコメが作られない、という差になります。
旭川の気象統計平年値
釧路の気象統計平年値

さて、「温暖化」というと、一般的には「夏に酷暑になる」という印象があります。しかし、実際には温暖化によって気温が上がるのは夏ではなく冬です。
旭川の過去の気象統計を見ると、統計開始最初の5年間(1889-1893年)の1月の平均気温は-11.1度、北海道の米作が急拡大した昭和最初の5年間(1927-1931年)の1月の平均気温は-10.0度、最近5年間(2017-2021年)は-7.1度と、128年前と比べて4度、90年前と比べても3度も暖かくなっています。一方8月の平均気温は1888-1892年平均20.0度、1927-1931年は21.6度、最近5年は21.0度、128年前に比べて1度しか上がっておらず、90年前と比べたら、今の方が若干ですが気温が低いのです。1931年の北海道は、翌1932年とともに、記録的な大凶作となっていますが、それでも1927-1931年の平均値としては、そういう数値になります。
従って、前述の米の生育条件を考えると、地球温暖化が米作に及ぼす影響は、皆無とは言えないにしても極めて限定的です。
実際、前述の記録的大凶作のうち、1932年1月の旭川は、それまでの観測史上でもっとも気温の高い暖冬だったのです(2月は平年並み)。しかし冬が暖冬でも、7・8月が低温で日照時間も少なかったため、前年以上の凶作になりました。

だいたい、近年の都道府県別の単位面積当たりコメの収量を見ると、年によって多少変動はありますが、2018年を除いて北海道は全国平均以上であり、とりわけ中国四国九州のどの県より北海道の方が収量は多いのです。温暖化すればコメの収量が上がるものなら、中国四国九州の収量は確実に北海道を上回っていなければおかしいはずですが、そうはなっていません。

北海道の米の単位面積当たり収量が急激に増加したのは戦後1940年代末から80年代はじめの時期で、平成以降はおおむね頭打ちです。しかし、その時代の旭川は、まだ温暖化はしていません。温暖化を「年平均気温」でとらえた場合、気温上昇が顕著になったのは、旭川の気象統計を見れば平成以降です。これはつまり、収量の向上が温暖化によるのではなく、品種改良や農業技術の発展(農薬や化学肥料の効果も含めて)による、ということです。

なお、これは収量、作柄に関する話です。「ご飯の味」という話なら、尚更品種改良の結果に決まっているじゃないですか。内地と北海道では栽培されるコメの品種が違います。温暖化によって本州のコシヒカリなどが北海道でも栽培できるようになったわけではありません。北海道向けの稲の品種が改良された(「ゆめぴりか」とか「きらら397」とか)結果です。それらを本州で栽培しても、気候と日照の関係で上手く育たないのです。この点からも、「北海道の米が美味しくなった」ことと温暖化に大きな関連性がないことは明らかです。





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最終更新日  2021.10.29 21:32:54
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