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テーマ:政治について(20231)
カテゴリ:政治
「パワハラ、おねだりは捏造」説が後押しする斎藤元彦前知事の復活劇
11月1日夕刻。雨が降る中だというのに、JR姫路駅前のアーケードには数百人の人垣ができていた。その中心にいるのは、マイクを握って笑う斎藤元彦前兵庫県知事。 「旧態依然の県政に戻すわけにはいかないんです」 「僕の写真を撮ってSNSでみんなに伝えて下さい」 斎藤氏の訴えに聴衆はやじを飛ばすでもなく、静かに聞き入り、求めに応じてスマホを掲げている。 疑惑に対する“疑惑” しかし、斎藤氏といえば、パワハラ、おねだり疑惑で世間から集中砲火を浴び、県議会の全会一致で不信任決議案が可決されて、9月30日、失職した身である。仮に再出馬しても、味方する者などいないだろう、とみられていた。 それが、10月31日に知事選が告示されると、現実は違ったのだ。 いったいこの1カ月の間に何があったというのか。在阪記者が解説する。 「斎藤氏の復活にはいくつもの理由が挙げられますが、いちばんは疑惑に対する“疑惑”です。斎藤氏のパワハラ、おねだりが実は捏造だったのではないかという話を、県内の市会議員あたりが流しているようで、それが出所不明のままSNS上で広まっているんです。斎藤氏の改革路線をつぶすための守旧派の策略だったのではないか、と」 昨今の選挙におけるネットの影響力は計り知れず、さらにややこしいことに今回の選挙にはNHK党の立花孝志氏も出馬したうえで、こうした言説の拡散に貢献している。(以下略) --- そうだったのか!あのパワハラ、おねだり疑惑は捏造だったのか!!! ・・・・って、あのね、バカも休み休み言ってくれないか、という感じです。 何をもって「おねだり」「パワハラ」というか、定義は人によって違うかもしれませんが、斎藤前知事がやったことの客観的な内容は、職員に対するアンケートやその他の証言、「おねだり」の一部は録音データによって裏が取れています。しかも、それらについて斎藤前知事自身が全面否定をできていません。 更に荒唐無稽なのは、引用記事にはありませんが、ネット上で立花たかしやその一派がまき散らしている「自殺した局長は公用PCに10年の複数女性との不倫日記やクーデター計画を蓄積していた」なる話。 この話の発信源は、斎藤前知事の側近とされ、疑惑が表面化するとサッサと退職した片山前副知事で、10月25日に行われた非公開の百条委員会での証言の音声が流出したものであるとされています。 そもそも、片山前副知事は、斎藤前知事の一連の問題の完全な当事者であり、また辞職の追い込まれる原因となった元県民局長に対する恨み、悪意は当然あるはずです。その人物の県民局長に関する証言を、裏付けなしに信じてよいものかどうかは、大いに疑念があります。 先に指摘したように、斎藤前知事のパワハラ、おねだりは、表面化した経緯は元県民局長の告発文ではありますが、職員アンケート、証言、実際におねだりしている場面の録音音声など、それを裏付ける証拠がたくさん出てきています。要するに、知事の周囲にいる人間なら誰もが知る「公然の事実」だったからこそ、元県民局長の告発という「熱したフライパンに注いだ油」が一挙にはじけたわけです。 それに対して、この片山前副知事の証言については、裏付ける証拠は何も出てきていません。明らかに利害関係者である片山前副知事が言っているだけ(それも途中で制止されて、ちょっと言いかけているだけ)です。当然、その証拠能力は、極めて怪しいというしかありません。 客観的に見ても、どう考えても怪しいところ、つじつまの合わない部分がたくさんあります。 自殺した県民局長の公用パソコンは、3月25日に告発文の「犯人捜し」をしていた片山副知事らに取り上げられ、5月7日に停職3か月の処分が下されています。 懲戒処分の理由は、「知事らを中傷する文書を配布し、県政への信用を著しく損なわせたと指摘。勤務中に14年間で計約200時間、公用パソコンで私的な文書を作成したことや、次長級職員の人格を否定する文書を匿名で送付したハラスメント行為なども処分理由とした。」と報じられています。 「14年間で200時間、公用パソコンで私的な文書を作成した」まで調べているんだから、パソコンのデータの調査は済んでいたわけですが、このとき「複数女性との不倫日記」だの「クーデター計画」だのの話は、一切出てきていませんし、懲戒理由にもありません。次長級職員の人格を否定する文書を匿名で送付、なんてことも理由に挙げているのに、です。 そんな話が何故今になって突如として出てくるのか。まったく不思議です。 そもそも10年も不倫をして発覚しないことが、あり得るでしょうか?先の国民民主党玉木の不倫など、地元では何年も前から知れ渡っていたと報じられています。一人の女性との不倫でもそうですが、まして、複数の女性との不倫なんて、必ずバレます。 その場ではバレなくとも、このような騒動になった時点で、「あの人は告発状は立派だけど、下半身が-」みたいな噂は必ず出てきます。複数の女性と、ということになると、別れる別れない、私がいながらあの女と-みたいな騒動が不可避だからです。人間の怨念を甘く見ない方がいい。 にもかかわらず、一切そういう証言が出てこないのは何故でしょうか。不倫なるものが存在しないから、と考えるしかありません。 あえてあり得る話を考えると、県民局長氏は部長級の管理職※ですから、部下の人事情報とか不祥事等に関する情報は持っていたはずです(そのことは、以前より指摘されていました)。その中に不倫等の情報も含まれていたとしても不思議はないし、中には公的なルートではなく私的に入手した情報もあったかもしれません。 ※東京都や国では、部の上に局という組織が存在し(都交通局とか都福祉局とか)、局長は部長の上位に位置する役職ですが、兵庫県では「局」は部と同格の組織の一部をそう呼んでいるだけで、局長は部長級です。 一方クーデター云々に関してはどうでしょうか。 もちろん、このような告発を行った時点で、斎藤知事と片山副知事ら4人の腹心を県政から排除したい、という意図は当然持っていたでしょう。それをクーデターと呼ぶなら、そのような意図はあったはずです。 しかし、それに代わって自分自身が権力を握る、という意味でのクーデターの意図があったとは考えられません。 理由は簡単で、元県民局長は退職予定だったからです。現在公務員は定年延長の経過措置中で、今年3月末時点で60歳だった元県民局長の定年は来年の3月末です。しかし、県民局長氏は1年早い今年3月末で退職を選んでいました。だから「退職を取消して停職処分」なんてことが可能だったわけです。 さらに、再就職先も兵庫県庁での再任用や第三セクター等関連団体への天下りを選ばず、自分で再就職先を探し出してきたと報じられています。しかし、この件で退職を取り消されて再就職ができなくなったことが、自殺の大きな要因になったと言われています。 副知事は特別職なので、就任に際しては職員を退職しますし、外部から登用されることもあります。しかし、副知事を外部から登用するというのは、何らかの目的、政治的アピールとして行われるものであり、すでに退職してしまった「元公務員」が副知事や副市長、副区長の特別職に任命されることは稀です。 副知事以外の、総務部長とか企画部長といった、職員としての中枢の地位に就くことも、退職してしまえば不可能です。 とすれば、退職してしまった元部長が権力を握る唯一の手段は知事選に立候補して当選することくらいしかありませんが、そのような準備をしていた事実も一切報じられていませんし、実現可能性は低いと誰が考えても分かります。過去に自治体職員から首長に転じた事例を見ても、ギリギリまで勤めて立候補というのが定石です。 つまり、早期退職を選んだ時点で、自分自身が出世して権力を握る、という選択肢は考慮の外であったことは明らかなのです。したがって、自分自身が権力を握るためのクーデターというのもまったくつじつまが合いません。 百条委員会で虚偽の証言をすれば、罰則があります。しかし、片山副知事は7月末に副知事を辞任し、おそらく9月中にはその退職金も貰っているはずです。更に、前述のとおり副知事に就任する際県職員は退職しているので、県職員としての退職金も、その時に貰っています。 職員、副知事の身分で百条委員会で偽証することには、懲戒処分という大きなリスクが付きまといますが、退職し、退職金も受け取った後なら、偽証による金銭面のペナルティーはほとんどなくなります。その点も片山氏の証言の証拠能力に疑念を抱かせる根拠となります。 結論として、片山前副知事の、証拠能力の怪しい証言だけを根拠に「これで真相がわかった」などと決めてかかるのは、デマに踊らされ過ぎ、ということです。 あとは、「守旧派の妨害がー」とかの無根拠の印象論は、何の意味もありません。 そんなことにはならないと信じますが、このような、明らかに怪しさ満点の「ネットで真実」に乗せられてトンデモ知事がまさかの復活を遂げてしまうことだけは、起らないことを願うばかりです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.11.15 08:01:35
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