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2004.12.10
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カテゴリ:帝国
厚くて低い雲が空全体をおおっている。どろりとした夜明けであった。そんな空を突き刺すように鋭く細い枝が一本、すっと庭先からななめに視界をはしる。一国単独主義の米国をダモクレスの剣で刺し貫ぬこうとする欧州(英国は別)のようだな、まるで。もっとも欧州はついに中国との間で武器輸出のゴーサインも先日決めてしまって、その交流はいよいよ固く深く成りつつある。日本企業ではオリンパスが、そんな中国とじつにタイミングよく提携した。衛星技術や液晶でオリンパスとユーロのEUそして中国の技術トライアングルの鉦の音が鳴る。いっそこれを朝の目覚ましのメロディにするか(笑)。イラク・中東情勢では、米英露VS欧州で、ウクライナをはさんでは米英・欧州連合VSロシアというところだが、後者では米国は欧州の権益に添い寝の形であろう。いっぽうオランダでは映画監督殺害事件からキリスト教徒とイスラム教徒の対立が深刻化(2004.11.17日記参照)。さながらローマ時代のイベリア半島に出来した、イスラムVSキリスト教の構図を連想してしまう。嗚呼、グラナダよ! フラメンコを踊る世界よ。ゴートの栄光はジプラルタルの海へ消えた。そしてまた、レコンキスタの闘士たちよ。1000年前の世界が、あらたな帝国のトライアングルが、いままた眼前するか。おりしもいま、ブエノスアイレスでは2005年2月発効の京都議定書をめぐる最終調整がはじまった(気候変動枠組条約第10回締約国会議=略称COP10=)。米国ブッシュ政権は「途上国に削減義務がないのはおかしい」と議定書からの離脱を2001年3月に宣言して、これも米国一国主義の国際的な批判のひとつになっている。たしかに、中国やインドなどおおきな人口を抱える途上国に対し(温室効果ガスの)削減義務を課していない議定書の成果には、すくなからず疑問がのこる。朝刊を読みながら、珈琲にトースト。日が射し込み、青空がひろがった。今日やってくるのは夏の天気だろうか。日替わりで季節が変わる、不思議な空である。

 実南天闇の中にて赤くなり

それでかんかん照りな正午が1時の時報に追い越された極東の島国では、「嘘にウソを重ね」つづけて半世紀の北の独裁国家 VS「惑言にワクワク」な政治屋ばかしの弓形虚言国家 か。いい勝負かもしれん。北担当インテリアの外務官僚タナカキンちゃんらには歳末のお手当が税込み500萬ほど入ったらしいよ。しかし問題は内政的には総務省の独走だろう。税の捕捉に狂乱状態の財務省の悲願でもある、サラリーマン、フリーター、ニートにいたるあぶれまでごそっと税金を捕捉する企画を進行中だ。言うことをきかない企業には罰則も用意と言うから、これはかつての内務省をしのぐ暴君に成長するかも知れない。独裁者にとって、IT情報技術はじつに簡便・コンビニだから、まして電波管理権まで掌握し、電波メディアに睨みきかすこの省にとっては、国民も学者もジャーナリストもぜんぶおのれらの掌の中。嘘だとおもう方は一度総務省の所管エリアをじっくりお調べになればいい。唖然である。地方分権を唱えるなら、総務省は解体しろ。情報産業のパーティなどでも総務省の役人がかならず顔を出している。テレビ局支配を通じて、株主の新聞社までコントロールするこの情報管理省は問題だ。こうして与太を書くあいだにも西日はだらりと山の向こうへ落ちていって、ようやく空気もひやっとしてきた。さて、あしたは朝から大掃除である。でも猫の手は借りない。

そうか本日は週末だったか! やれやれ。

■すこしだけ追加。オランダでの宗教対立と、すこし前のフランスにおけるモスリム女性のスカーフ着用禁止をめぐる対立、これらは同根だが、非常に気になる。後期印象派の画家ヴィンセントと画商だった弟テオの父親は南オランダ・ブラバント地方の牧師だった。ヴィンセントは画家になる前に牧師をめざし挫折している。画家の生涯とその膨大な書簡集を読まれたかたなら分かるとおもうが、ヴィンセントは画家である前に何よりも狂信的と言っていいくらい、熱烈で信心深い宗教者であった(余談だが、じつはゴッホ作品を正当に評価しようとするならば、なによりもまずこの画家の宗教性についてより深く考察しなければならないと、個人的に考えている。たとえば、なぜゴッホはしばしばパイプや煙草だけを描いたか、あるいは『ゴーギャンの椅子』に代表されるような、誰も座っていない空の椅子をなぜ描いたのかなどである。オランダに根付いたカルヴァン主義では聖人を描くことは禁じていた。ヴィンセントはそのことを年少から知っていて敢えてそのことを承知で非在の実在ともいうべき表現法へと転化したのである。空の椅子はそうしたことからくるヴィンセントの必然の表現手法であったのだ。日本でのゴッホ評価はこの点でまったく中途半端である)。いっぽうでオランダという国の国民性は、いい意味で宗教に対しては寛容である。だからこそ現在のようなさまざまな移民を受け容れる寛容の国として評価されてもいるわけだ。しかしこのことを考えるとき、今回の事件は、オランダ人にとっては非常な衝撃であったようにおもわれるのだ。いずれ、あらためてこの問題は考えてみたい。それは、9.11以降の米国(とくに内陸部)におけるキリスト教原理主義の強固さ、またモーゼの十戒の石碑をめぐるつい最近の騒動など、合衆国の奥に隠れた宗教国家としての貌をあらためてわれわれ日本人が再認識することにもなるだろう。





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Last updated  2004.12.11 11:30:49
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