愛の炎に抱かれて ♡5♡
画像は湯弐様からお借りしました。「FLESH&BLOOD」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。 クリスマスは、海斗にとって大切で大好きな日だった。 母が生きていた頃、母は僅かな収入の中から海斗へのプレゼントを買ってくれた。 母が亡くなってから、クリスマスはハ―リントン家で一年の中で最もこき使われる日だった。 だが、それでも海斗はクリスマスが好きだった。「うわぁ、雪だ!」「綺麗~!」「みんな、風邪ひかないでね。」 クリスマスの朝、ロンドンには大雪が降った。「テムズ川が凍ったってさ。」「そりゃ大変だね。」 ジェフリーが街を歩いていると、大雪の所為か商店の多くは閉まっていた。「ジェフリー、来てくれたのね。」 カフェにジェフリーが入ると、奥のテーブル席に座っていたジェフリーの継母・エセルがそう言って立ち上がった。「あなた、家には戻らないつもり?」「あぁ。」「クリスマスだというのに・・」「俺はもう、あの家には戻らない。」 エセルに背を向け、ジェフリーはカフェから出て行った。 ナイジェル―ジェフリーの異母弟とジェフリーはよく連絡を取り合っているが、両親とは殆んど会っていない。 軍に入った頃―正確に言えば、パブリックスクールに入学した頃から、実家に寄りつかなくなった。 両親は政略結婚で結ばれ、ジェフリーが産まれた頃は既にその夫婦仲は冷え切っていた。 ジェフリーは実母であるエセルよりも、乳母のアンナに懐いた。 だがそのアンナは、ジェフリーが12歳の頃に事故で亡くなった。 事故の内容は詳しくは憶えていなかったが、噂によればジェフリーの父親が殺したという。 アンナが父の愛人だったのか―今となっては、わからない。「ジェフリー。」「ナイジェル、どうした、こんな所で会うなんて珍しいな。」「母を見舞いに来た。」「そうか。お袋さん、大丈夫なのか?」「いや・・」 ナイジェルの母は、半年前にロックフォード家のメイドを辞め、入院していた。「あの人は、どうしている?」「さぁな。それよりもジェフリー、今は“天使の家”で暮らしていると聞いたが、本当なのか?」「あぁ。」「また会おう、メリー・クリスマス。」「メリー・クリスマス。」 ナイジェルと別れたジェフリーが“天使の家”に戻ると、正面玄関にはクリスマスツリーが飾られていた。「お帰りなさい。」「このツリーは?」「みんなで飾りつけたんだ。ハロッズみたいに豪華には出来なかったけど。」「センスがあっていいな。」「ありがとう。」 クリスマスの夜、海斗達はご馳走を食べ、プレゼントを交換し合った。「来年も、みんなとクリスマスを祝えたらいいわね。」「はい、お祖母様。」 だが、これが海斗とナオミが共に過ごした、最初で最後のクリスマスだった。 クリスマスの四日後、ナオミは肺炎に罹り亡くなった。「海斗、あなたはもう独りじゃないわ。彼と幸せになりなさい。」「お祖母様・・」 海斗は、涙を流してナオミの手を握った。 ナオミの葬儀が終わり、海斗は“天使の家”の運営に携わったが、無理をしてしまい、熱を出して寝込んでしまった。「カイト、大丈夫か?」「うん。」「医者が言うには、お前は働き過ぎなんだそうだ。暫く休め。」「わかった・・」 海斗が自室のベッドで休んでいると、外から突然何かが弾けるような音が聞こえた。「カイト、起きろ、火事だ!」「え?」「子供達は無事だ!」 海斗はジェフリーと共に燃え盛る孤児院から脱出した直後、建物は紅蓮の炎に包まれ、崩落した。 子供達と職員達に全員怪我は無く、ナオミの遺品や孤児院の帳簿などが入った金庫は無事だった。「これから、どうしましょう・・」「立ち止まっている暇はないよ。」 火事の後、海斗は孤児を受け入れてくれる孤児院探しに奔走した。「みんな、良い子にするんだよ。」「マザーも、お元気で。」 キング=クロス駅で孤児達を送り出した後、海斗はジェフリーと共に彼の自宅へと向かった。「ここ、本当にあなたの家?」「ああ。今朝不動産屋を叩き起こして買ったんだ。ここならお前と気兼ねなく過ごせるからな。」 ジェフリーはそう言うと、海斗の唇を塞いだ。「荷物を置いてくるね!」 赤くなった顔をジェフリーに見られないように、海斗はジェフリーが自分の為に用意してくれた部屋に入った。 そこは、薔薇色の壁紙に彩られた美しい部屋だった。「気に入ったか?」「うん。」「そうか、良かった。」 その日の夜、海斗は誰かが屋敷のドアを叩いている音で目を覚ました。「誰なの?」「俺が出る。」 ジェフリーがランプを手にして玄関ホールへと向かいドアを開けると、そこには渋面を浮かべたナイジェルの姿があった。にほんブログ村