1279549 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

JEWEL

全91件 (91件中 1-10件目)

1 2 3 4 5 6 ... 10 >

完結済小説:金の狼 紅の天使

2011年08月23日
XML

1878(明治11)年4月、東京。

高原鈴は庭の桜を見ていた。
戊辰戦争後、鈴は東京と名を変えた江戸に戻り、実家で静養した。
明治維新から10年。
明治5年には新橋-横浜間に陸蒸気が開通し、街並みも食べるものも西洋文化の影響を受けていた。
年が過ぎ、動乱の幕末の京都がまるで夢のように思えてきた。
だが10年前に日本中は血で染まり、鈴は幾度も修羅場をくぐり抜けていた。
新選組の生き残りとして、鈴は自伝を出版した。
あの頃に生きた生き証人として、真実を語りたいーそういう思いで書いた自伝は、多くの人々の心を打った。
自伝を出版した後、鈴は肺を病んだ。
ここ数年は、布団から起きあがれないほど病状は悪化していた。
鈴は縁側に座り、満開の桜を見ていた。
「綺麗だな・・」
「元気そうだね、高原君。」
裏口から背の高い、紺羅紗の制服を着た警官がそう言って鈴に微笑んだ。
「斎藤先生。」
「今は藤田だよ、高原君。」
斎藤-今は藤田五郎と名乗っている-は、そう言って家に入ってきた。
「体の調子はどうだ?」
「さぁ・・俺にはもう、時間が残されていないかもしれません。」
そう言って鈴は寂しく笑った。
「両親も亡くなって、もう俺1人です。自伝も出版したし、もう心残りはありません。」
「・・そうか・・」
斎藤は鈴の手を握った。
「前に頼まれていたもの、出来たから渡すよ。」
そう言って斎藤はポケットの中からネックレスを出した。
そこには金の髪と、赤い髪が納められていた。
「横浜で作って貰ったけどね・・気に入ればいいんだが・・」
「ありがとうございます。」
鈴はそう言ってヘアジュエリーを受け取った。
「また、来てくださいね。」
「ああ・・」
鈴はネックレスを首に提げた。
あのお守り袋は函館の時に銃で撃たれ、ボロボロになってしまった。
だが英人の遺髪は無事だった。
自分の髪と英人の遺髪を持って、斎藤にヘアジュエリーを作って欲しいと言ったのは数週間前だった。
これがあれば英人といつも一緒にいられる。
鈴は引き出しから簪を取り出した。
それはあの日英人から渡された、桂に初めて貰ったという鳥の簪。
「英人、お前に会いたいよ・・」
そう言って鈴は目を閉じた。

『鈴。』

どこからか、英人の声が聞こえる。

まさか、そんなはずはない。

英人は10年前に死んだはずだ。

『鈴。』

また声がした。
鈴は桜の木を見た。

そこには、京で出会った頃と同じような優しい微笑みを浮かべた英人がいた。

「英人!」

鈴は下駄を履いて英人の元へと駆け寄った。

『鈴、待たせてごめんな。』

英人はそう言って鈴を抱き締めた。

「もう、離さない・・」

鈴は英人の胸の中で目をゆっくりと閉じた。

1878年4月3日。

高原鈴、肺結核にて死去。享年32歳。
永遠の眠りによって、鈴は英人と再会した。
そして、かつての仲間とも。
彼らの絆は、永遠にとぎれることはないだろう。

時の激流に押し流されながら生きた2人の死から百数十年の歳月が経った東京の中心部にあるとある高級ホテルでは、ある政治家の豪華絢爛な生誕を祝う宴が開かれていた。
人々はシャンパンを片手に談笑し、ご婦人がたは美しいドレスで着飾りながら自分の美しさを周りに誇示していた。
そんな招待客の中で、ひっそりと会場の隅に佇む1人の少女がいた。
腰まである長さの金色の髪を結い上げ、華奢な身体をギリシャ神話に登場する女神のような幻想的で美しい蒼いドレスを纏った彼女の藍色の双眸は、憂いに満ちていた。

(俺が何で女装なんか・・いくら兄貴の頼みだからって・・)

少女―兄嫁が急病の為にパーティーに来られなくなったので、急遽代役として兄とともにパーティーに出席する羽目になった少年の名は、正英華凛(まさひでかりん)。
今年の3月に私立の中高一貫校の男子校中等部を卒業し、4月に高等部に入学する15歳である。
日本舞踊・正英流の家元である父親から物ごころついた頃から所作や礼儀作法について厳しく躾けられた華凛は、自然に優雅な立ち居振る舞いを身につけ、周囲からは華奢な身体に女顔という外見もあってか、よく女性と間違われることがあった。
だが本人にとってそれは煩わしいものでしかなく、今こうしてドレスを纏ってパーティーに出席しているだけでも苦痛を感じていた。

(ったく、兄貴何処にいるんだよ・・さっさとこんなところ、出て行こう・・)

溜息を吐きながら兄の姿を探していると、彼は1組のカップルと談笑していた。

「兄貴、探したぞっ!」
「華凛、ここでは“あなた”だろう?乱暴な言葉遣いはやめなさい。」
上品な黒いタキシードにしなやかな肢体を包んだ兄の寿輝は、そう言って弟を窘めた。
「大体、義姉さんが急病で出られなくなったって、おかしいだろ!?やけにドレス選ぶ時乗り気だったし!」
「そういうことは後でな。それよりもお前に紹介したい人がいる。このパーティーの主役の鈴久先生のご子息の、高史さんだ。隣にいらっしゃるのは彼女の奥様である香奈枝さんだ。」
「高史です、初めまして。」

そう言った男の顔を見た途端、華凛の脳裏に1人の少年の姿が浮かんだ。
美しく艶やかな赤毛を持った、翠の瞳をした少年を。

“英人”

屈託のない明るい声で、自分の名を愛おしく呼ぶ声。
だが、そこにいるのは艶やかな黒髪を整髪料で固め、タキシードに身を包んだ美しい青年だ。

(違う・・彼じゃない・・)

「どうかしましたか?」

青年が心配そうに自分の顔を覗きこんだ。

その瞳の美しさは、あの少年と同じ色だった。
どこまでも汚れのない、澄み切った森の緑。

「いいえ、何でもありません・・」

その時初めて、両頬が涙で濡れていることに気がついた。


-完-

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村






最終更新日  2011年08月23日 17時18分47秒
コメント(0) | コメントを書く


1868年4月、会津・白河口。

鳥羽・伏見の戦いから始まった戊辰戦争は、新政府側の圧倒的勝利になりつつあった。

鈴達新選組は、会津で新政府軍と激闘を繰り広げていた。
だが最新兵器を前に、味方は次々と倒れていった。
会津に来て鈴は、京での日々が懐かしく思えてきた。
あの頃はいつも隣に英人がいた。
初めてあったときの英人の美しさは、未だ忘れることが出来ない。
敵同士であっても、英人とは愛し合っていた。
だがもう彼はいない。
池田屋の時と同じように、彼は敵として自分の前に現れるだろう。
その時は英人を殺して、自分も死ぬー鈴はそう決意していた。

1868年8月23日、母成峠。

旧幕府軍は新政府軍の猛攻に虚を突かれ、激闘を繰り広げていた。
白虎隊も戦ったが、飯盛山で19名が自刃した。
「俺達・・もう駄目かもしれないな・・」
貴はボソリとそう呟いて、溜息をついた。
「そんなこと言うなよ、俺達は必ず勝つんだから!」
「だって新政府側は最新兵器を持ってるんだぜ。」
真也はそう言ってうつむいた。
(悔しいけれど、この戦いも新政府軍に負けるかもしれない・・)

悔しいけれど、それが揺るぎない事実なのだ。

鈴は溜息をつきながら、胸に提げたお守りを取り出した。

あの日、八坂神社で英人と買ったものだ。
薄紅色の袋は何度も触ったせいか、端のところが少しボロボロとなっていた。

京都にいた頃の楽しかった思い出。
今はもう過去となってしまった物。
もう戻ることがない時間。

「それ、確か・・」
「うん・・捨てようかと思ったけど、英人との大切な思い出だから。」
「悪いことしたな、俺・・あの時殴られて当然のことしたよ・・」
貴はそう言ってうつむいた。
「もう過ぎたことだよ。」
過去は振り返っても二度と戻らない。
今は前に突き進むのみ。
「あのさ、俺・・」
貴が何か言いかけた途端、敵の攻撃が始まった。
「行くぞっ!」
貴はそう言って飛び出した。
「貴、待てっ!」
鈴はそう言って貴の袖を掴んだが、貴は既に敵の前に躍り出ていた。
鈴の目の前で、貴は全身に銃弾を浴び、地面に倒れた。
「貴、しっかりしろ!」
「ご・・め・・ん・・な・・俺・・先・・に・・逝く・・わ・・」
貴はそう言って鈴に微笑み、息を引き取った。
「貴、貴ぃぃ~!」
親友の胸に顔を埋めて、鈴は泣いた。
「よくも貴を~!」
いきり立った真也が刀を抜き、貴を撃った男を斬ろうとした。
だがその前に真也の体は頭から真っ二つに割れ、地面に倒れた。
金色の髪が、風に揺れる。
「英・・人・・?」
藍色の瞳が、じっと鈴を見据える。
5年ぶりに再会した英人は、あの頃よりもずっと大人びて見えた。腰まであった金色の髪は背中までの長さになっている。
背も高くなり、あの頃は同じ背丈だったのに、今は鈴を見下ろすようになっている。
英人は刀をゆっくり構えた。
彼は敵なのだ。
思い出に浸っている時間はない。
鈴は刀を構え、英人に突進した。
鈴と英人の腕は互角だった。
鈴が英人の服を破けば、英人も鈴の服を破いた。
刃を交えた英人の藍と鈴の翠の瞳が、雷によって光る。
2人とも体力を激しく消耗している。
次が最後の一撃だ。
英人と鈴は間合いを取った。
その時、背後に光るものがあり、鈴が振り返った。
そこには拳銃を構えた山本重太郎の姿があった。
「菊千代の仇ぃぃっ!」
重太郎はそう叫んで引き金を引いた。
林の中で、乾いた銃声が響いた。
鈴は目の前で英人がゆっくりと地面に倒れるのを見た。
「英人!」
鈴は英人を抱き留めた。
「す・・ず・・」
「英人、しっかりしろ!」
鈴の涙が、英人の顔に落ちた。
「おれ・・は・・だい・・じょう・・ぶ・・」
英人はそう言って笑った。だが英人は血を吐いた。
「英人、しっかりしろ!」
鈴は英人の腹から血が流れるのに気づいた。
「待ってろ、助けを・・」
「もう・・いいんだ・・俺・・は・・死・・ぬ・・お・・前・・の・・こ・・と・・見え・・ない・・」
「ここにいるよ!俺ここにいるから!」

鈴は英人の手をしっかりと握った。

「い・・ま・・ま・・で・・あ・・り・・が・・と・・う・・楽・・し・・い・・思・・い・・出・・作っ・・て・・く・・れ・・て・・お・・前・・に・・会・・え・・て・・よ・・かっ・・た・・」

英人はそう微笑んで、ゆっくりと目を閉じた。

「英人、しっかりしろよ、英人!」

鈴は英人の体を揺さぶったが、藍色の瞳はもう二度と開くことはなかった。
英人を殺して、自分も死ぬって決めたのに。
英人が死んでしまった。
銃に撃たれて死んでしまった。
「お前も死ねぇ!」
重太郎は鈴に銃口を向けた。
鈴は怒りに燃えた目で重太郎を斬り伏せた。
「英人・・」
鈴はゆっくりと、英人の髪を撫でた。
何かが地面に転がった。
拾い上げると、それは八坂神社で揃いで買った縁結びのお守り袋だった。

「英人・・持っててくれたんだな・・ありがとう・・」

鈴は英人の髪を一房切り、自分のお守り袋の中に入れた。

1869年5月18日、函館・五稜郭で榎本武揚が降伏し、これで約1年半続いた戊辰戦争は終結した。

鈴の心に、癒えない傷を負わせて。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村






最終更新日  2013年07月17日 07時18分49秒
コメント(0) | コメントを書く

沖田は白馬に乗って山南の姿を探していた。

(どうか・・どうか・・)

沖田の脳裏に、山南との思い出が走馬灯のように駆けめぐる。
試衛館での日々、共に駆け抜けてきた京での日々・・全てが、楽しい思い出であった。
山南を助けなくては。
逸る気持ちで馬を駆けていると、山南が街道を歩いているのを見つけた。
沖田は山南の前で馬を停めた。
「沖田君・・」
「どうして脱走なんかしたんですか!どうして・・」
「ちょっと外の空気を吸いたくなったんだよ・・」
山南はそう言って笑った。
「馬鹿なんですか、あなたは・・」
鈴は山南が屯所へ戻ってきたことを知った。
「山南さん!」
格子越しに見た山南の顔は、優しい顔をしていた。
「高原君、心配かけてすまなかったね・・」
「山南先生、死んじゃいやです!先生言ってくれたでしょう?死んだ人の分まで生きて、命が尽きるときその人に楽しい思い出を語れるように生きるんだって・・言ってくれたでしょう?」
鈴はそう言って手を伸ばした。
山南の手は、温かった。

「高原君、私の分まで・・生きてくれ・・」

山南はそう言って鈴に微笑んだ。
それは鈴が見た最初で最後の、山南の笑顔であった。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村






最終更新日  2011年08月23日 17時11分04秒
コメント(0) | コメントを書く

禁門の変から三ヶ月が過ぎ、山南は部屋に引き籠もりがちになることが多くなった。

六角獄舎で見た光景が忘れられず、山南は毎晩悪夢にうなされていた。
そんな中、山南は1人の女と出会った。

その女の名は明里。
島原の天神だった。

明里と会うたびに、六角獄舎で見た光景を忘れられるだろうと山南は思っていた。
だが悪夢は未だに続いていた。
山南は次第に鬱状態になっていった。
悪夢もそうだが、この頃新選組の屯所を勤王色が濃い西本願寺へと移転しようという話が出ていた。
山南はそれに反対したが、近藤も土方も耳を貸さなかった。
もう、限界だった。
「山南さん?」
ある夜、食事を運んできた鈴は、山南が部屋にいないことに気づいた。
「馬鹿野郎が!」
土方はそう言って文机を叩いた。
「沖田先生、山南先生戻ってきますよね?」
「ええ、戻ってきますよ。」

沖田は白馬に跨って屯所を出た。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村






最終更新日  2011年08月23日 17時09分41秒
コメント(0) | コメントを書く

1864(元治元年)年7月19日。

京都蛤御門において長州藩兵と、会津・桑名・薩摩各藩の諸隊と衝突した。
英人は風のように敵を次々と斬っていった。

「正村、こっちも頼む!」

会津藩士と刃を交えながら山岡はそう叫んだ。
英人は目の前にいる者を全て斬った。
その姿は獲物を狩る狼のようだった。
鈴達新選組も、激闘を繰り広げていた。
鈴は一人、また一人と敵を斬り伏せていった。
戦いは、幕府側の勝利に終わった。
「・・勝ったな・・」
「うん・・」
鈴と貴が勝利の余韻に浸っていると、煙が見えた。
炎は強風に乗って京の街を舐めるように焼き尽くした。
山南はその頃六角獄舎へと向かっていた。
そこには池田屋事件で捕縛した古高俊太郎達がいた。
獄舎の奥へと向かうと、そこには槍で突かれた古高達がいた。
山南はその場で吐いて獄舎を飛び出した。

(私は・・何のために・・)

一体誰のために、自分は戦っているのだろうか?

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村






最終更新日  2011年08月23日 17時08分27秒
コメント(0) | コメントを書く

「英人・・?」

殺さなければ。

彼は敵だ、殺さなければ。

心とは裏腹に、手が動かない。

殺したくない。
鈴は初めて出来た友達。
殺したくない。
英人が葛藤していると、援軍が池田屋に入る気配がした。
英人は鈴から離れ、窓から飛び降りて逃げた。

「大丈夫か、鈴?」
「うん・・貴は?」
「まだ息がある。けど・・あいつは・・」

(英人は俺を殺そうとしたのに、殺さなかった・・)

翌朝、鈴達は池田屋から屯所まで行進した。

「貴、大丈夫か?」
「うん。」

友を気遣いながらも、鈴は英人のあの涙を思い出していた。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村






最終更新日  2011年08月23日 17時06分37秒
コメント(0) | コメントを書く

「えやぁぁっ!」

志士達と新選組は入り乱れて激闘を繰り広げた。

その最中、藤堂平助は額を切られ負傷し、沖田総司は喀血した。
鈴達は無我夢中で刀を振るった。

「大丈夫か、鈴?」
「うん、大丈・・」

そう言って鈴が振り向くと、貴の背後で敵が刀を振り下ろしていた。

「貴、後ろっ!」

鈴は飛び上がり、敵の頭蓋骨を叩き割った。

「助かったぜ。」
貴はそう言って鈴に微笑んだ。
だがその笑みが苦痛に歪んだ。
「英人・・」
英人が貴の胸を刃で貫いていた。
「どうして・・」
鈴の問いかけにも答えず、英人は貴の胸から刀を抜き、構えた。
藍色の瞳は、冷たく光っていた。
鈴は刀を構え、英人に突進した。
激しい剣戟を繰り返し、英人は鈴の腹を蹴り、畳の上にねじ伏せた。

「鈴!」

英人は刀を振り下ろそうとしたが、できない。
気づくと自分は泣いているのだとわかった。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村






最終更新日  2011年08月23日 17時05分10秒
コメント(0) | コメントを書く

1864(元治元年)年、6月5日。

桜舞い散る季節は過ぎ、蒸し暑い京の夏が再びやってきた。
鈴はいつものように、道場で稽古をしていた。
もういないとわかっていても、目は英人の姿を探してしまう。
英人がいなくなってから五ヶ月が過ぎた。
英人はどこで何をしているのだろうか?
元気にしているのだろうか?
鈴は寝ても覚めても英人のことばかり考えていた。
そんな中、新選組に衝撃的な知らせが入った。
長州が京の街に火を放ち、その混乱に乗じて天皇を長州へと拉致するという。
そして今夜どこかでその会合が行われているという。
新選組は近藤隊と土方隊に別れて、会合が行われている旅籠や茶屋を虱潰しに探した。
鈴と貴、そして柵原真也は近藤隊にいた。
近藤隊は、とある旅籠へと入った。
そこは三条河原町の『池田屋』であった。
「御用改めである!」
近藤はそう言って主人を気絶させ、階段を駆け上った。

「新選組!」

長州の志士達はそう言って鈴達を睨んだ。
志士の一人が灯りを消し、辺りは闇一色となった。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村






最終更新日  2011年08月23日 17時04分00秒
コメント(0) | コメントを書く

「なんだと、椿屋が壬生狼の襲撃に遭った!?」

京の高級旅館の一室で、桂はそう言って声を荒げた。

「はい。半時前に壬生狼が椿屋にいた女将とその家族、そして女中達を虐殺した後椿屋に火を放ちました。」
英人はみつの櫛を握り締めながら言った。
「そうか・・英人、報告ご苦労だったな。体を洗ってすぐに休め。」
「桂さん、さっき鈴と別れてきました。」
「あの子と?」
英人は桂の胸に顔を埋めた。
「鈴となら、仲良くなれると思っていました。けれどそれは間違いでした・・俺は椿屋で犠牲となった人達の仇をとります・・必ず!」
「・・やっと、私のところへ帰ってきてくれたな・・」
桂はそう言うと、英人の唇を塞いだ。
「お帰り、英人。」
「ただいま、桂さん。」
英人はそう言って桂に微笑んだ。
「俺はもう二度とあいつに会うことはないでしょう。もし会うとしたら・・その時は敵同士です。」
「そうだ、それでいいんだ。それが真実なのだから。」

やがて2人は体を重ねた。

もう、後には引き返せない。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村






最終更新日  2011年08月23日 17時01分56秒
コメント(0) | コメントを書く

英人はしばらく椿屋の焼け跡に佇んでいた。
その目はうつろで、手は何かを夢中に探していた。

「英人・・」

鈴は英人とともに焼け跡の中を探した。
やがて英人は薄紅色の櫛を見つけた。
それは地獄の炎の中でも、無傷であった。
「みつさん・・ごめん・・」
英人はそう言って櫛を握り締めた。
「帰ろう、英人。」
英人は涙を流して、鈴の肩に寄りかかった。
「英人・・」
鈴は優しく英人の髪を撫でた。
「これでお前の居場所はもうないな。」
声がして2人が振り向くと、そこには腕を組んで満足げな貴が立っていた。
「貴・・もしかして・・」
「そうさ。俺が土方さんにここを教えたんだ。こいつを殺すために。」
貴の指が、鈴の肩によりかかってうつむいている英人を指した。
「こいつは俺達を裏切った。俺達を騙した薄汚い狼だ!」
「貴、やめろ!一体どうしちまったんだよ、お前!?」
鈴は貴の両肩を掴んで揺さぶった。
「鈴、お前が悪いんだぞ・・そいつと仲良くなんてするから!敵と仲良くなんてするから!」
「・・くも・・よくも・・みんなを・・」
英人は貴に突進し、彼の頬をこぶしで殴った。
貴はよろめき、地面に倒れた。
英人は馬乗りになり、貴の顔を何度も殴った。
「英人、やめろ!」
鈴はそう言って必死に英人を止めたが、英人は自分の気が済むまで貴を殴った。
「どこ行くんだ、英人?」
貴をさんざんぶちのめした英人は立ち上がった。

「鈴、お前とはもうお別れだ。俺達は敵同士。俺と一緒にいたら不幸になるだけだ。」

英人はそう言って鳥の簪を懐から出し、鈴に渡して椿屋を去った。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村






最終更新日  2011年08月23日 17時00分42秒
コメント(0) | コメントを書く
このブログでよく読まれている記事

全91件 (91件中 1-10件目)

1 2 3 4 5 6 ... 10 >

PR

カレンダー

プロフィール


千菊丸2151

お気に入りブログ

卓球オーストリアOP… New! friendly0205さん

クレヨンしんちゃん … New! おいら♪♪さん

今月のお寺さんすれ… New! クレオパトラ22世さん

NHK連続テレビ小説『… New! くう☆☆さん

時効警察始めました… New! みつき2733さん

バックナンバー

日記/記事の投稿

コメント新着

千菊丸2151@ Re[1]:蒼―lovers―玉 238(12/25) New! 風とケーナさんへ 環は欧州で色々と学び…
千菊丸2151@ Re[1]:その花の名は。第4話(11/16) New! マトリックスAさんへ わたしも最近、小説…
風とケーナ@ Re:蒼―lovers―玉 238(12/25) New! 千菊丸様、こんばんは♪ いつも本当にあり…
マトリックスA@ Re:その花の名は。第4話(11/16) New! >自分のペースで更新していけばいいんじ…

サイド自由欄

ランキングに参加しております、気が向いたらバナーをクリックしてくださいませ。

PVアクセスランキング にほんブログ村

キーワードサーチ

▼キーワード検索

フリーページ

カテゴリ

ドラマ・映画

(102)

日記

(205)

グルメ

(502)

読書記録

(1411)

大人の発達障害

(11)

連載小説:Ti Amo

(115)

連載小説:VALENTI

(141)

連載小説:茨の家

(40)

連載小説:翠の光

(31)

連載小説:双つの鏡

(174)

連載小説:鬼と胡蝶

(15)

完結済小説:炎の月

(160)

完結済小説:桜人

(70)

完結済小説:白昼夢

(57)

完結済小説:月光花

(401)

完結済小説:暁の鳳凰

(84)

完結済小説:金襴の蝶

(68)

完結済小説:金魚花火

(170)

完結済小説:狼と少年

(46)

完結済小説:翡翠の君

(56)

完結済小説:胡蝶の唄

(40)

小説のこと(短編小説etc)

(184)

連載小説:茨~Rose~姫

(85)

完結済小説:琥珀の血脈

(137)

完結済小説:螺旋の果て

(246)

完結済小説:紅き月の標

(221)

完結済小説:黒衣の貴婦人

(103)

完結済小説:lunatic tears

(290)

完結済小説:わたしの彼は・・

(73)

連載小説:蒼き炎(ほむら)

(50)

連載小説:蒼き天使の子守唄

(40)

連載小説:麗しき狼たちの夜

(221)

完結済小説:金の狼 紅の天使

(91)

完結済小説:孤高の皇子と歌姫

(154)

完結済小説:愛の欠片を探して

(140)

完結済小説:最後のひとしずく

(46)

連載小説:Black Bird~慟哭~

(6)

連載小説:蒼の騎士 紫紺の姫君

(42)

完結済小説:金の鐘を鳴らして

(35)

連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~

(151)

連載小説:狼たちの歌 淡き蝶の夢

(13)

完結済小説:宿命の皇子 暁の紋章

(262)

連載小説「女王達の輪舞曲<ロンド>」

(3)

完結済小説:玻璃(はり)の中で

(95)

完結済小説:美しい二人~修羅の枷~

(64)

完結済小説:碧き炎(ほむら)を抱いて

(125)

連載小説:皇女、その名はアレクサンドラ

(63)

完結済小説:蒼―lovers―玉(サファイア)

(300)

完結済小説:白銀之華(しのがねのはな)

(202)

完結済小説:薔薇と十字架~2人の天使~

(135)

完結済小説:儚き世界の調べ~幼狐の末裔~

(172)

二次創作小説:天上の愛 地上の恋「時の螺旋」

(0)

二次小説:進撃の巨人 腐向け小説「一輪花」

(2)

二次創作小説:天上の愛 地上の恋 「蒼き翼」

(11)

二次創作小説:黒執事×薔薇王中世パラレル「薔薇と駒鳥」

(27)

二次創作小説:火宵の月 幕末パラレル「想いを繋ぐ紅玉」

(8)

二次創作小説:火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル「華夜」

(7)

二次創作小説:薔薇王韓流時代劇パラレル「白い華、紅い月」

(8)

二次創作小説:火宵の月オメガバースパラレル「その花の名は」

(4)

二次創作小説:天上の愛地上の恋オメガバースパラレル「あなたに出会わなければ」

(0)

連載小説:二人の皇太子~アメジストとエメラルド~

(6)

Copyright (c) 1997-2019 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.