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リーリエからキュロス城へと向かい歩き始めて4日、私達はやっとの思いでジブリール帝国、キュロス城下町へと到着したんだけど、何か凄い数の人と出店があるよ・・これからお祭りでもあるのかなぁ?
「今の時期は丁度格闘技大会が開かれますのよ、それで全国から人が集まっているのですわ、確か優勝賞金は2万Gだったと思いますわ」 2万G……そろそろお金も尽きてきたし、ちょっと欲しいかも・・それがあればまた暫くはお金に困らないよねぇ。 「格闘技大会か、全国の猛者たちが相手!くぅ、燃えるぜ!!」 あ、クレッシルがすっごいやる気だよ!! 「クレッシル、残念ですけど、受け付けは2カ月前に終わってますわよ」 「ちぇっ、なんでぇ・・せっかく全国の猛者と戦えると思ったのによ、あ~あ、飛び入り参加とか出来ねぇかな」 がっくりと肩を落とすクレッシル、私も残念だよ・・2万Gがバサバサと羽を生やして飛んでくのが見えるよ・・・・ 「でも不思議ですね。ここアルカダ大陸は魔法研究が盛んだと聞いてましたけど、どうしてそんな場所で格闘技大会何でしょうかね?」 「キュロス王は無類の格闘技好きなんですのよ、だからですわ。それに時期は少し違いますけど、もちろん魔導士達が戦うそういった大会もありますわよ?むしろそっちの方がメインなんですけど、そこで優勝した方は確か、お城付きの兵士として雇っていただけると聞きますわ」 アセトから色々と話を聞きながら商店・出店・家が沢山立ち並ぶ道をお城へと向かって歩く私達、ほどなくしてお城の前に到着した私達は門にいた兵士にキャメロット王からの手紙を見せて謁見の間へと通して貰った。 「久しぶりだな、シジルの娘よ、そしてよくぞ参られたライト家の娘とその仲間の者よ」 「お久しぶりですわ、キュロス王、相変わらずお元気そうでなによりですわ」 挨拶もそこそこに、私は王様にお兄様がここに来てないか訪ねてみたんだけど、どうやらここキュロス城にお兄様は訪れていないとのことだった。 でも、ここで王様から思いがけない情報を得たよ。 「ここアルカダ大陸には、北のカサンドラにシジル家、そして南のアクロディーテにはザイート家という世界有数の魔法の名門があってな、昔よりこの両家が互いに手を取り合い、ここアルカダ大陸、そしてジブリール帝国を護ってくれているのだ」 「ザイート!?それって、お母様の旧姓だよ!!」 王様の言葉に驚き声を出すと、私のその反応にその場にいた全員が驚き、私を見てくる。 「何と・・お前さん、あのザイート家の娘の子だと申すのか!?確か、20年前に家を飛び出しそれ以来戻ってこんと聞いておったが、そうか、ライト家の者と一緒になっておったか、それならば一度アクロディーテへ寄ってみてはどうか?きっと孫娘の元気な姿を見れば、喜ぶだろう」 「まさかセラがザイートの血も引いていたなんて、驚きです」 「剣の名門ライト家に魔法の名門ザイート家両方の血を引く・・か、すげぇ血筋だな、おい!」 「貴女がザイートの血を引いていたなんて驚きですわね・・この贅沢者め!ですわ、でも魔法の腕前はわたくしの方が上ですけど」 右手を口元に持ってきて、上体を大きくそらして「おーっほっほっほっほ」と、高笑うアセト、だけど上体をそらし過ぎたのか、体勢を崩して後ろに倒れたよ・・・・ そんなアセトを冷ややかな目で見守った後、謁見の間を出ようとしたんだけど、それをクレッシルが止めてくる。 「なぁ、ちょっといいか?王様にちとお願いがあるんだけどよ」 「何だ?申してみろ」 「ちょいと小耳にはさんだんだけどよ、今ここで格闘技大会ってやってんだろ?それって飛び入りで参加出来ねぇのか?」 あぁ・・やっぱりクレッシル諦めてなかったんだね・・ 「今日予選が終わり、明日本選だからな・・急に飛び入りと言われても」 う~ん・・と腕を組んで考え込む王様。あはは、やっぱりいくらなんでも飛び入りは無理だよねぇ・・何て思ってたら意外な返答が返ってきたよ。 「ふむ、そう言うからには腕に覚えもあるのだろう、よし、この城1番の腕っ節を誇るアーレスから見事一本とる事が出来たなら、特別参加枠を与えようではないか」 「を!マジか!!やりぃ♪言ってみるもんだな」 玉座から立ち上がると「ついて参れ」そう言い、私達をお城の地下にある兵士たちの鍛錬場へと案内してくれた。 鍛錬所に着くと王様は「アーレスはおるか?」そう声をかけ、その声に1人の男性が反応し、こっちにやってくる。 そのアーレスと言われた男性は身長2メートル以上はありそうな程、大きくその全身は筋肉の鎧で覆われていて、とても強そうに見える。 「うぷ・・・・凄い漢臭ですわ・・・・」 「いやいや、中々良い体つきをしてますね」 「ねぇ、ミハイルってこういうのが趣味なの?」 「まさか、私が好きなのはセラみたいに可愛い子だけですよ?」 「あ、あはは・・・・冗談だとしても、ちょっと怖い・・かな」 王様がこれから格闘技大会の特別参加枠をかけてクレッシルと戦って欲しい事を伝えると、それに快く応じてくれたアーレスさん。 「ねぇクレッシル、大丈夫なの?アーレスさん凄く強そうに見えるけどさ」 「へへっ、私を誰だと思ってんだ?まぁ、見てなって」 私とアセトは流石にこの体格差、ちょっと無理があるんじゃないのかな?そう思って心配してたんだけど、当の本人は本当気楽なもので、そう言うと、パチリとウィンクをして、身にまとってたマントをとり私に手渡してきた。 顔はターバンをグルグル巻きにして隠し、長袖と長ズボンを穿き完全に肌を隠してる怪しい人物、ことクレッシルは鍛錬場の中央にある試合をする場所(これ何て言うのかな?)に移動して、アーレスさんと対峙する。 「多少腕に覚えがあるようだが、女の細腕で俺を倒す事は出来ないぞ、怪我をする前に帰る事だ」 「はっ!そんなのやってみなきゃわかんねぇだろ?女だからって油断してっと、そっちが怪我するぜ?」 「ふん、威勢だけは良いようだな。良いだろう・・俺も本気で行くぞ」 お互いそれだけ言うと、構えを取り王様と私達が見守る中、試合が開始された。 じりじりと間合いを詰めながらお互いの出かたをみる二人。 「これは一瞬で勝負がつきますね」 ミハイルが真剣な眼差しを二人に向けながらそう言うから、私とアセトもじっと真剣な眼差しを二人に向ける。 「もらった!」 先に動いたのはアーレスさんだった、クレッシルめがけて正拳突きを放つ、そのスピードは凄く早く私はその動きを目で追うのがやっとだった。 「遅いぜ!」 しかし、クレッシルには止まってるように見えるのか、それをサッと横に避けるとアーレスさんの脇の辺りめがけて拳を繰り出した。 それが当たるとアーレスさんは前に倒れたんだけど、アーレスさんの巨体が地面につく前にクレッシルは右手でアーレスさんを受け止めていた。 「へへっ、楽勝だぜ」 私達は一瞬の出来事にポカンと、開いた口が塞がらない状態だった。 その中一番早く正気に戻った王様は慌てて勝利宣言をする。 「しょ、勝負あり!勝者クレッシル!!」 そう宣言したものの、今の出来事が意外だったのか、驚きながらクレッシルに声をかける王様。 「まさか、あのアーレスを一撃で沈めてしまうとはな・・お前さん、一体……」 「いえ、今のは一撃ではありません、3発入れてましたね、後ついでにアーレスさんのお尻も触ってました、その間0.5秒です。破廉恥な・・」 はぁ・・と、大きなため息をつくミハイルにクレッシルは嬉しそうにする。 「を!今のミハイルにはちゃんと見えてたのか!?流石だな」 「えっ!?えっ!?今3発も入れてましたの?わたくしには1発だけに見えましたわよ!?」 あ、よかった・・今の攻撃が見えてなかったの私だけじゃないんだ・・ 今の出来事にその場にいた他の兵士たちがざわめき始める。 「お、おい・・アーレスさんがあんな小娘に負けたぞ!?」 「何なんだ、あの娘は?」 「実はアーレスさんって、そんなに強くなかったんじゃ?」 「ん?何だ、信じられねぇのか?何だったら今ここにいる全員で一斉にかかってきてもいいんだぜ?」 アーレスさんを下に横たわらせたクレッシルが右手をちょいちょいと手招いて挑発してたよ・・・・ お願いだから、騒ぎ大きくしないで・・・・ 「えーい、静かにせんか!この者の強さは本物だ、そなた等が束になっても勝てぬだろう。約束は守るぞ、クレッシルとやら、そなたに明日の本戦の特別参加枠を与えよう、そなたの活躍楽しみにしておるぞ」 王様は大きく笑いながらその場を後にし、そして私達は明日の本戦が行われる場所と時間を聞いて宿屋へと向かったのだった。 「まさか飛び入り参加がOKになるなんて思ってもなかったよ」 「これで2万Gはわたくし達のものになったも同然ですわ!あぁ、これでお酒飲み放題ですわぁ♪」 既に優勝賞金の2万Gが手に入ったかのように喜ぶアセト、うん、安心して・・クレッシルが優勝しても絶対にアセトには飲ませないから・・ 「でもクレッシル、油断してはダメですよ?本戦にはアーレス以上の猛者が出てくるかもしれませんから」 「わかってるって、試合では油断や驕りが命取りだからな」 「うんうん、わかってればいいんです」 あ~、でも本当、私が出るわけじゃないけど今からドキドキするなぁ。 「クレッシル、頑張ってね。優勝出来るといいね♪」 「あぁ、ありがとなセラ。必ず優勝して見せるぜ」 明日の試合の事もあって、私達はいつもより早めに床に入ったのだった。 第13話 魔法大国ジブリール その2.終わり 第14話 第25回格闘技大会 その1.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年08月22日 01時18分06秒
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