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私達はアセトと一緒にアセトの家の地下室の前へとやってきていた。
「それじゃあ、開けますわよ」 さっきスルトさんから受け取った鍵を使って扉を開けると私達はその中に入った。 その地下室は倉庫代わりになっているのか、中にはごちゃごちゃと色々なモノが無造作に置かれ、それをぐるりと見まわしてみた。 「すっげぇな、流石に金持ちの倉庫だ。何か高そうなモノばっかり置いてあるぜ」 「さっきスルトさんは、これからの旅に役立つモノがあると言ってましたけど、それって一体何なんでしょうかね」 「ここに置かれてるモノはどれも役に立ちそうにないものばかりですわね」 「ねぇ、あそこの奥に宝箱が置いてあるけど、あの中身がそうじゃないのかな?」 地下室の奥にポツンと埃の被った宝箱が置いてあり、私達はそれを引っ張り出して、中を開けてみたんだけど、そこには1つの大きな宝石をあしらったネックレスが入っていた。 「何だこりゃ?私にはただのネックレスにしかみえねぇんだが」 「魔法的な力をそのネックレスから微量ながら感じられますね、アセト一体何なんですか?」 アセトは宝箱からネックレスを取り出し首にかけながらこれが何であるのか、説明をしてくれた。 「これはタリスマンというもので、確か使用者の魔力を増幅してくれる効果を持っているはずですわ。こんな物が地下にあったなんてびっくりですわね」 「へぇ、魔力増幅装置かぁ。元々の魔力が高いアセトなら凄い効果がありそうだよねぇ」 「そうですわね、これがあればまさに鬼に金棒、ベリアルもイチコロですわね、って!わたくしは鬼じゃありませんわよ!!」 「何一人でボケて突っ込みをいれてるんですか・・まぁ、でもそんな元気があるならもう大丈夫そうですね。安心しました」 ミハイルはアセトに対して今まで見せた事のないような優しい笑みを向け、それを見たアセトは、ふふっ。と笑い返した。 「へへっ、やっぱりアセトはそうじゃねぇとな。ボケ担当がいつまでも落ち込んでっと、張り合いねぇしな」 「ちょっ!?誰がボケ担当ですの!?どう見てもわたくしはお色気担当でしょうに」 地下室に入る前までは突然訪れた両親の死に凄く悲しい顔をしてたはずなのに、今は楽しそうに見えるよ。 「えっ!?誰がお色気ですか??お色気はセラでしょう、ねぇセラ?」 ミハイルが何やら私に熱い視線を投げかけてきてるよ・・っていうか、私ってお色気じゃないような・・・・こんな返しづらい無茶ぶりは勘弁してもらいたいよ・・・・ 「はいはい、ミハイルのつまらない冗談はいいからさっさと行こうぜ」 「セラがお色気とか・・ありえませんわ」 そう言うと、何故かアセトは私の方に冷ややかな目を向けながら全身を舐めるように眺めてくる。 この何でもないやり取りが妙に温かく、さっきまでの空気を完全に吹き飛ばしてくれてるように思えると自然と笑みがこぼれてくる。 「な、なんですの?急に笑いだして、不気味ですわね」 「とうとうセラが壊れちまったか・・」 「いや、うん。特に意味はないんだけどさ、やっぱりこういう空気っていいよねぇ。皆元気も出てきたみたいだし、さっそくベリアルの城に行こっか」 私の言葉に3人は頷き、地下室を出て私達はカサンドラを後にしてベリアルのいる城へと向かって歩き出したのだった。 カサンドラから東に進む事1時間強、平野の中にポツンとその城は建っていた。 ただ、そのお城は普通のモノとは少し違って、外は真っ黒に塗られていて、いかにもな雰囲気を漂わせ、城の上の方には角のような2本の塔がついている。 「ここがベリアルの棲むお城ですわ」 「ザガンの館もそうだったけどよ、どうして魔族達はこうも悪趣味なんだ?」 「わざと目立つように造ってその力を誇示したいからじゃないでしょうかね」 「他人のセンスをとやかく言うのはあれですけど、確かに見た目あまりよいものではありませんわね」 「まぁまぁ、おしゃべりはこれくらいにして、ささっと中に入っちゃおうよ。こうしてる間にもベリアルは体力を回復させてるだろうしさ」 私達は気合いを入れ直してベリアルの城の中へと入っていく。 ベリアルの城の中は外と同じように真っ黒に塗られていて、しかも灯りがついてないものだから、おどろおどろしい雰囲気が漂っているように思える。 「う、うぅ・・何か魔物とかそういうの以外のモノも出そうな雰囲気だよね」 「何やら、この城全体から強力な力を感じます。ベリアルが戻ってきていると見て間違いないかもしれませんね」 「なぁ、どこから探すんだ?」 「あそこの奥にひときわ怪しい大きな扉がありますわよ?とりあえず、あそこに行ってみませんこと」 アセトが奥の方を指差すからそっちを見てみると通路の一番奥に、その中にはいかにもボスがいそうな大きな扉があったから、そこへ移動し扉を開けて中に入ってみた。 その部屋は奥に大きな玉座が1つだけ置いてあり、他には何もない部屋。玉座の奥には更に奥に行く為のものだろうか?小さな扉がある。 「何かさ、謁見の間みたいな部屋だね」 「ここでベリアルは手下の魔物たちに指示を出してるんでしょうかね」 私達が謁見の間にも似た部屋の入り口付近でぐるりと部屋の中を見回していたら、突如奥の扉が開きそっちの方へ顔を向けると、頭に大きな角を2本持ち、炎の翼を背中から生やした魔族、サタナエル三大柱のベリアルが立っていたのであった。 「何やら鼠が入ってきたと思ったらお前達だったか、まださっきの傷も完全に癒えてはないがお前達等、今のままでも充分だ。ここでザガンの仇を取らせてもらうぞ」 ベリアルは私達の方をキッと睨むとその手に持った大きな斧を握り直す。 「ベリアル!お兄様は、お兄様はどこにいるの!?」 「お兄・・様?誰の事だ」 「貴方がマモンって言った人の事だよ!!」 「ふん、お前がマモンの妹、セラフィムだというのか。なるほどな、確かに言われてみればよく顔が似てるな」 「私の質問に答えてよ!!」 「マモンは今別室にいる、どうだセラフィム。マモンと一緒に俺達の元にこないか。そして、一緒にここにいる馬鹿な七大英雄の末裔どもを皆殺しにしようではないか」 「誰が魔族の仲間になるっていうの!?私は絶対にそんな事はしないよ!」 「そうです、セラの兄上もきっと本心からサタナエルに従ってるとは思えません!連れて帰ります」 「そうか、お前は俺達の元に来ないというのだな。その事を後悔させてやる」 「うだうだ言ってねぇでさっさとそこをどきやがれ!邪魔するってんなら、まずはてめぇから倒してやんぜ」 「罪のない町の人達をその手に掛けた償い、ここでとってもらうよ!!」 「ベリアル!お父様とお母様の仇、ここで取らせて貰いますわ!貴方だけは絶対に許さないですわよ、覚悟なさいな!!」 「さっき殺した死にぞこないの娘か、いいぞ、いいぞ!その憎しみの心、その心こそ俺達魔族の力となる!さぁ、かかってこい!七大英雄の末裔どもよ」 第18話 決戦!ベリアル城 その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年09月26日 00時31分37秒
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