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アラキバを出てから数日、リーリエに着いた私達は早速船着き場へと行き、ハイアシス行きの船に乗船し、甲板で皆で話をしながら船旅を満喫していた。
「そう言えば、今から向かうウリエルって方は何でも占えますの?」 「うん、屋敷の入り口にある看板にも何でも占いますって書いてあるくらいだしねぇ」 「そうですの、ならセラのお兄様の場所を聞くついでに、グリモア光の書のことも聞いてみることにしますわ」 「アセト、ついでに運命の人がどこにいるのか聞いてみたらどうですか?貴女ももう23なんですし」 「確かにそこも気にはなりますわね・・ですけど今はまだ結婚とかそういうのには興味ありませんわ」 「興味がない、ねぇ・・?何か、私にはモテないアセトの負け惜しみにしか聞こえねぇんだがよ」 「まっ!それ、どういう意味ですの!?」 「意味なんてねぇよ、言葉まんまだ」 「そういえば、アセトって綺麗だしスタイルもいいはずなのに、どうして特定の相手がいないんだろうね?」 「それはあれですよセラ、普段のアセトを見てれば理由はわかるはずです」 「普段のアセト・・・・」 頭の中に普段アセトが取る行動や言動とかを思い描いてみる。 移動するとすぐに疲れた~、って言って休憩したり。ちょっと褒めると調子に乗ったり・・後、町に入ると私達に隠れてコソコソとお酒を飲みに行ったり・・ 「あ、あ~・・・・」 何か、思いつくものすべてがその容姿にあってないというか・・到底淑女というには程遠いモノが思い浮かんだよ・・ とりあえず、私はアセトに対して残念なモノを見るかのような視線を投げかけた。 「なっ・・何ですの、セラ・・・・」 「あ、ううん、何でもないよ。何でも」 「今の反応、どう見ても何でもないという風には見えませんわよ」 「にしし、セラもどうやらアセトが男に縁がない理由ってのが分かったみてぇだな」 「アセト、とりあえず普段の行動から全て見直した方がいいみたいですね」 「み、皆してひどいですわ・・わ、わたくしにだって1つや2つくらい良い所くらいありますわよ!」 「どこだよ?」 「そんなのないと思いますけど?」 「えっ!?ア、アセトの良い所?・・う~ん・・・・う~ん・・・・」 「な、何か悲しくなってきましたわ・・」 船の縁に身を預け、遠くを見るアセトは本当に可哀想な人のように見えてきたよ・・・・ そんな話をしながら(?)船旅を満喫してた私達だけど、船は無事ハイアシスへと到着し、私達はそこから一路、オファニム城下町を目指して北上し始めた。 ハイアシスを出てから2日程経ち、私達はまたこの場所に戻ってきちゃったよ・・・・ 顔を上げると、眼前には高くそびえたつ魔法の山。うぅ・・前回登った時、凄く苦労したっけ。 確か、登りだけで2日、そして降りで2日・・うねうねと曲がりくねった山道、歩いても歩いても全く終わりが見えないこの地獄の山・・・・ 「はぁ・・もう二度と登ることもないと思ってたのになぁ・・」 またあの地獄の登山をしないといけないと思うと、自然と私の口からは、大きなため息が零れ落ちる。 だけど、登りたくない、もう二度と来たくないって思ってたのは私だけじゃなかったみたい。 「どうしても、またここを通らないとダメなんですの?」 私の横で大きく肩を落とし、うんざりとした表情を浮かべるアセト。 私とアセトの少し前を歩いていたミハイルとクレッシルが、私とアセトが山の入口で足を止め、そう口にしたことで足を止め、こっちに振り返ってくる。 「一応、迂回路もあることにはありますよ?」 ミハイルの言葉を聞くと、パァっと表情を明るくするアセト。 「なら、そっちを通りましょう!それがいいですわ!そうしますわよ!!」 「ですけど、ここを登り降りするより時間がかかりますよ?」 「それでも構いませんわ!こんな山道をまた登る事に比べたら、多少時間がかかっても、そっちの方が良いに決まってますわ!!」 「はぁ・・わかりました、それではアセト・セラ。貴女達はそっちを通って下さい、私とクレッシルはこっちの山道を歩いて行きますから」 「な、何でわたくしとセラだけですの!?皆で迂回しませんの?」 「これも鍛錬だと思えば、多少は気がまぎれると思うぜ?ほら、諦めてアセトもセラもちゃちゃっと行くぞ」 「む、むぅううう・・・ぐぐぐぐぐ・・・・」 何やら難しい顔をしてミハイルとクレッシルを見つめてたアセトが、急に私の方に振り返って、両肩をガシッと掴んできたよ・・ 「セラ、貴女からも二人に迂回しようと言ってやって下さいまし、きっとセラの言う事なら聞いてくれますわよ」 物凄く真剣な眼差しで私の方を見るアセトと、そのアセトの奥からは、呆れた・・と言いたげな表情をしながらこっちをじと~、っと見つめるミハイルとクレッシルの姿。 「あ、う・・う~ん・・・・」 この場合、どう答えればいいんだろう・・私もアセトと同じで、正直こんな山道は登りたくないけど・・そう言っちゃうと、ミハイルとクレッシルが怖いわけで・・ 「はぁ・・ほら、こんな所で時間を無駄に使わないで、早く登っちゃいましょう。こうしてる時間が無駄です」 「そうだぜ、二人とも。ほら、ちゃちゃっと足を動かす、動かす」 結局私とアセトはミハイルとクレッシルに引きずられる形でずるずると魔法の山を登り始めることになっちゃったよ・・・・ 何か・・前に魔法の山を登り始めた時も、こんな感じだった気がするんだけど、き、気のせい・・だよね? 第21話 魔法の山再び その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年10月17日 01時02分56秒
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