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カサンドラを出てから約10日、途中色々(?)とあったけど、やっと・・やっと・・・・オファニム城下町に着いたよ・・
「何か、前にここに来たのって1カ月くらい前だったはずなんだけど、すっごい懐かしい気がするよぉ♪」 「あぁ、あの時セラがはしゃいでたのが昨日のことのように思い出されるぜ」 「あ、あははは・・あれは本当恥ずかしかったよ・・」 流石に城下町だけあって、人の活気が凄いよぉ。そして、そんな喧騒の中、私は一人はしゃいでたんだけど、そこへアセトがその長く美しい黒髪をかきあげながらミハイルの方へ視線を向ける。 「それで、前に言われてたウリエルさんは、どちらに見えますの?」 「ウリエル氏の家は城下町の北のはずれにあります。ほら、セラ行きますよ。アセトもついてきて下さい」 ミハイルに連れられて私達は店や家が沢山並ぶ通りを進み、ウリエルさんの家までやってきたんだけど・・・・ 以前来た時は順番待ちの人が凄く大勢いたのに、何故か今日に限ってそこには全く人の姿がない・・よ? 「あれぇ?前来た時ってさ、もっとこぉ、凄い人じゃなかったっけ?」 「本当ですね?どうしたんでしょうか」 「いつも混んでるというわけでもないのかもしれませんわね」 不思議に思いながらも入口から中に入ろうとしたんだけど、内から鍵でもかかってるんだろうか?入口の戸はかたく閉ざされている。 「閉まってますね」 「どうしたんだろぉ?」 「せっかく来たのに、これじゃ何のために来たのかわからないですわね・・」 入口の戸が閉まってるのなら仕方ない、今日は諦めてまた後日訪れよう、そう思って踵を帰そうとしたんだけど、その時クレッシルが何かを見付けたようで声をかけてきた。 「なぁ、何かここに張り紙があるぜ」 クレッシルが入口の横を指差すものだから、私達もそこを見てみたんだけど、そこには小さな木の板が立てかけられていて、その木の板に何やら張り紙が貼り付けられてたよ。 そして、そこにはこう書かれていた。 諸事情によりしばらくの間、占いはお休みします。急ぎの御用のある方のみ、裏口からお越し下さい。 「何ですかね、この張り紙は?休むとかいてありますけど」 「諸事情って何なんだ?家を留守にしてるってわけでもねぇんだよな?」 「占い家業の他の事が忙しくて沢山の方を見ていられない、という意味ですかしら?」 「まぁまぁ、それよりもさ、せっかく来たんだし、裏口に行ってみようよ」 裏口へまわった私達は勝手口の前で立ち止まり、ドアをコンコン、と叩いた。 するとしばらくして、そのドアが開き、ウリエルさんがそのドアの隙間からこっちの様子を窺うように覗きこんでくる。 「ん、お主たちか。待っていたぞ、さぁ、中に入るがよい」 ドアの外にいたのが私達だとわかると、ウリエルさんはドアを大きく開き、私達を中に招き入れてくれた。 中に入った私達は、ウリエルさんに連れられ、居間へと通されると、そこに置いてあるソファに腰掛けるように言われ、そこへ腰掛けた。 「よく来たな、セラフィム。そして仲間のモノ達よ」 「お久しぶりです、ウリエルさん」 腰掛け、簡単な挨拶を済ませた後、私はお兄様の事を聞く前に、ちょっと気になった事を聞いてみる事にした。 「ねぇウリエルさん、占い家業をお休みするって書いてあったけどさ、何かあったの?」 私の問いかけにウリエルさんは、ふふっ、と短く笑ってから答えてくれた。 「何、別に何かあったわけではない。ただセラフィム達がそろそろここへ再び来ると、お告げがあったものだからな。それで店を閉めていたのだ。今度はゆっくりと話をしたかったのでね」 「なるほど、そういう理由だったのですね」 「しっかし、前の時もそうだったけどよ、便利な夢だよなぁ。予知夢って」 「便利・・確かにそうかもしれんな。だが、決して良い事ばかりみるわけではない、時に直視したくない現実というモノも見えてしまうからな」 そう言ってからウリエルさんは苦笑を浮かべ、そしてすぐにスッと顔を引き締め真面目な面持ちで私の方を見据えてきた。 「セラフィムよ、再び我が元へ訪れたということは、アルカダへ渡り、兄上と会ってきたと見てよいのだな?」 「うん、アルカダでお兄様と会う事は出来たんだけど、お兄様はマモンと名乗り、サタナエル三大柱の一人として私達の前に現れたの・・」 「そうか・・それでセラフィムよ、お主はこれからどうしたいと思っている」 「お兄様はきっとサタナエルから与えられた魔族の力に酔いしれてるだけだと思うの、だからもう1回会って、私はお兄様の目を覚ましてあげたい!そう思ってるよ」 「なるほどな、話は分かった。少し待ってくれ」 ウリエルさんは机の上に置かれた水晶玉へ両手をかざすと、呪文のようなモノを唱えはじめ、その呪文が終わると水晶玉がまばゆい光に包まれる。 それを私達はゴクリと息をのみ、静かに見守りウリエルさんの言葉を待つ。 水晶玉の光が収まるとウリエルさんは難しい顔をしながら私の目を覗きこんで、少しためらいながらも口を開いてきた。 「今お主の兄上はセイレーン国にいるようだ。だが今のままそこへ向かえば、彼を救うどころか、お主達が命を落とす事になるだろう」 「それって、再びセラの兄貴と戦う事になるってことなのか!?」 「そういうことだ、そして・・その戦いは避けて通れぬと出ている。お主たちも覚悟しておくことだ」 「お兄様と再び剣を交える事になる・・そして、それは避けて通れない運命・・なら、私は・・・・」 「ウリエルさん、今のままでは、と仰りましたけど、何かありますの?」 「うむ、アルカダ大陸のはるか南に忘れられた大陸レテというのがあることは知ってるか?」 「レテ大陸・・」 確か、前にお兄様と戦った後、私の精神はゲティンって人にそこへ招かれたっけ。 「そういえば、前にセラが夢で行ったと言ってた場所ですね」 「そうだな、けどよ。それってどこにあんだ?」 「ふむ・・名前は知っているが場所は知らないということか。まぁ、無理もない、世界地図にも載ってないような大陸だからな」 ウリエルさんは世界地図を取り出すとそれをテーブルに広げ「この辺りだ」そう言いながら、アルカダ大陸から南にある海の真ん中を指差した。 「ここレテ大陸にはゲティンという名の女神がいる神秘の泉という場所があるのだが、そこにはマルミアドワーズという聖なる力に満ちた悪しき心を斬ることのできる剣があるそうだ」 「マルミアドワーズ・・聞いたことありますね」 「ねぇミハイル、それってどういう剣なの?」 「セラ、アーサー王の伝説は知ってますよね?」 「うん、円卓の騎士がどうたら~、とかいう話だったよね?」 「そのアーサー王がかつて使ってたとされる、とても切れ味鋭い剣ですよ」 「あれ?でもでも、アーサー王の武器ってさ、エクスカリバーじゃなかったっけ?」 「えぇ、一般的にはそうとされてますし、そっちの方が有名ですね。書物としてはほとんど残ってないので、私もあまり詳しい話は知りませんが、確かこういった話だったはずです」 そう言うと、ミハイルは語り部モードに入り、私達はミハイルの言葉に静かに耳を傾けたのだった。 第22話 新たなる手がかり その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年10月24日 02時22分13秒
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