|
神秘の泉からパンゲアに戻った私達は早速、イシリオンさんが待つ家へと向かい中に入った。
「戻ったか、ライトの表情を見る限りでは、マルミアドワーズは無事に手に入ったみたいだな」 「うん、これがそのマルミアドワーズだよ」 私が背中に背負ってるマルミアドワーズをテーブルの上に置くとそれをマジマジと眺めるイシリオンさん。 「これがマルミアドワーズか。我も実物は初めてみるが、やはりこの剣からはタダならぬ魔力を感じるな」 「こうしてマルミアドワーズも手に入りましたし、イシリオンさん。約束通りグリモアが眠る禁断の洞窟の鍵をわたくしどもに預けていただきたく思いますわ」 「うむ、わかった。約束通りこの剣を抜いてきたのだ、我もそなた達を認めよう、禁断の洞窟の鍵はアイナノアに預けてある」 アイナノアちゃんは手を自分の服の胸元から中に入れてゴソゴソとさせて、そこから先端に小さく金色に輝く精霊石のついたネックレスを取り出すと、それを私の方に手渡してきた。 「これが禁断の洞窟の鍵なの?」 「そうだ、それがあれば禁断の洞窟の中に入ることも出来るだろう。アイナノア、戻ってきて早々で悪いが、またこの者たちを禁断の洞窟まで案内してやって欲しい」 ん、アイナノアちゃんもついてくるんだったら、これはアイナノアちゃんに渡しておこうかな。 「はい、アイナノアちゃん♪これはアイナノアちゃんに預けておくね」 私が精霊石のついたネックレスをアイナノアちゃんに返すと、それを再び首から下げるアイナノアちゃん。 「それではお父様、行ってまいります」 「うむ、くれぐれも気をつけて行って来てくれ」 息をつく間もなく私達は再びパンゲアを離れ、今度は南に位置すると言う、禁断の洞窟目指して進みだした。 しばらくアイナノアちゃんの案内の元進むと、入口が大きな石の扉で閉ざされた場所へとたどり着いた。 「ここが禁断の洞窟なのですね」 「はい、そうです。お姉さん」 「何か、いかにもって場所だな」 「ここにグリモア光の書があるのですわね・・」 ゴクリと息を飲み物凄く緊張した様子のアセト。 アイナノアちゃんは石の扉の前まで行くと、その石の扉の中央部分にあるくぼみへ首から下げてるネックレスの先端についてる精霊石をはめ込む。 するとゴゴゴゴゴゴゴ……と、大きな音を立てながらその石の扉が開き、中への道が開かれた。 「さ、どうぞ中に入って下さい。この奥にグリモア光の書が安置されてます」 私達はドキドキしながらアイナノアちゃんに続いて中に入ったんだけど、チラッと横目でアセトの方を見てみると、さっきよりも幾分か緊張した様子を見せるアセト。まぁ、そうなるのも仕方ないかな?だって、念願のグリモア光の書がもうすぐそこにあるんだもんね。 洞窟の奥には、ちょっと広めの空間があって、そこの中央部分にある台座の上に一冊の古びた魔導書が安置されていた。 「あれがグリモア光の書なのですわね・・いよいよこの闇の書と1つになり、その真の姿がわたくしの前に……」 アセトがゴクリと息を飲んでから、中央の台座へと近づいて行くのを私達は固唾を飲んで見守る。 そして、アセトがその手に光の書を取ろうとしたんだけど、その時台座にあった光の書とアセトの持ってた闇の書がまばゆい光を放ちながら空中に浮かんで、ゆっくりとその2つが1つに合わさっていく。 グリモアが1つになると、その瞬間更に光り輝き辺り一帯を真っ白に染め上げる。 「なっ!?何ですかこれは!?」 「何が起こってんだよ?」 「うぅ・・凄い光・・」 「すさまじい魔力のほとばしりを感じますわ」 あまりの眩しさに私達はひさしを作りその発光が終わるのを待つ。 発光が収まると、私達は手をどけてグリモアの方を見てみたんだけど、そこには光輝く1冊の魔導書が静かに、ただその場に佇んでいた。 「これがグリモアの真の姿なのですわね」 アセトがその光り輝くグリモアへ手を差し出し、とろうとしたんだけど、その時どこからともなく声が聞こえ、その声が洞窟内に響き渡る。 「我は全ての魔法の知識を綴るグリモア、今再び1つとなった我から、新たなる主に試練を託そう」 そう聞こえたと思ったら、グリモアは再び淡く光を放ち、その光がアセトを飲みこんでいく。 アセトを飲みこんだ光が収まると、アセトはその場にドサリと倒れ込んだ。 「おい、アセト!?」 慌ててアセトの方に近寄りクレッシルは彼女を抱きかかえ揺さぶったけど、全く反応がないよ。 「な、何々!?何があったの?」 「さっき、男の声で新たなる主を試すと言ってましたね・・」 「はい、きっとお姉さんの精神はグリモアの記憶の中に入っていったんだと思います。ここはそっとお姉さんが起きるのを待っていましょう」 アイナノアちゃんの言葉を聞くとクレッシルは優しくアセトを地面に横たわらせ、アセトの意識が戻るのを静かに待つ事にした。 「ここはどこですの?」 グリモアから発せられた光に飲み込まれたと思った瞬間、わたくしは辺り一面真っ白で何もない空間へと来ていましたわ。 「セラ、ミハイル?クレッシルどこですの!?」 わたくしが声を出しても何も返事はありませんでしたわ。これはもしかして、何か特別な空間にグリモアの主となるであろう、わたくしを呼び寄せた、と見て間違いなさそうですわね。 「誰かいませんの?いるなら早く出てきて下さいまし」 わたくしが問いかけると、目の前に1冊の古びた魔道書がポン、と急に現れ、眼前でフヨフヨと浮かんでる。 「ここはグリモアの記憶の中で間違いありませんの?」 「そうだ、今からそなたに試練を受けてもらう」 「試練?それは何ですの?」 「我の持つ全ての魔法の知識と力をそなたに注入する、もしそなたがそれに耐えきれれば我はそなたを新たなる主として認めよう。だが逆にそれに耐えきれなかった場合は、我は再び新たなる主を探しに旅へ出ることとなる」 「もし、それを受けることすら断ったらどうなりますの?」 「その場合も我は再び新たなる主を探しに出る。受けるかどうかは全てそなた次第だ」 ここでわたくしが断ったり、試練に耐えきることが出来なければ今までの苦労が全てパーになってしまうということですのね・・ それだけは阻止しないといけませんわね。せっかくここまで来たんですもの、そうなると言うべき事は1つだけですわ! 「覚悟はとうに出来ていましてよ、いつでも良いですわ」 「では始めるぞ」 グリモアが開始の合図を出すと同時に、わたくしの頭の中に様々な魔法の知識がダイレクトに入ってきて、それと同時にわたくしの体の中に魔力が微量ながら入ってくるのがわかる。 最初はセラもよく使う事のある初級魔法から始まって、徐々に頭の中に流れ込んでくる魔法が高等なモノへとなっていく。 それと同様に、わたくしの体の中に入ってくる魔力もその魔法に合わせてだんだんと量が多くなってきている。 わたくしがよく唱えている中級~上級魔法の知識が入りこむと、そこで一旦頭の中へ知識が入りこんでくるのと魔力の注入が収まったのだった。 第28話 グリモアに認められしモノ その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年12月05日 00時49分22秒
コメント(0) | コメントを書く
[妹勇者冒険譚 ~兄を探して1000里~(完)] カテゴリの最新記事
|