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ジルコニアの気まま日記

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ジルコニア5519

ジルコニア5519

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天衣無縫傍若無人なトークで、リスナーをはじめ、スタッフと相方すらも圧倒する噛み様『風音様』と風音様をはじめ、ゲストやスタッフが投げかける、どんな球も打ち返すそのトーク力で番組を牽引する『荻さん』がメインパーソナリティーのインターネットラジオステーション『音泉』でNO.1の人気を誇る番組っす↓


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2010年12月19日
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 私とお兄様はお互い見つめあう形で、その状態でガチャガチャと音を立てながら力比べをしてたんだけど、このままじゃ力負けしちゃうよ・・
 そう思った私は、お兄様の腹部へひざ蹴りを一発入れてから、後ろに飛びのいて距離を少し取る。
 「セラ、随分と強くなったものだ・・幼い頃は、俺に全く太刀打ちできなかったというのにな」
 そう言ったお兄様の顔は、私のよく知ってる、ずっと追い求めていた優しい笑み。
 「私だって、ただお兄様の背中を追いかけてきたわけじゃないもん、お兄様、もう一回だけ言うよ、一緒にサタナエルを倒して、ヴァイデヴィレッジに帰ろうよ!」
 「俺の手は、セラの元へ帰るには、多くの人を殺めすぎてしまった・・・・もう後戻りはできんのだ」
 お兄様のその顔は、とても悲しそうなモノ。やっぱり、いくらサタナエルを油断させる為だって言っても、その力を借りて、多くの人々を苦しめてきたのに少し罪悪感を感じてたのかも。
 「今からでも遅くないよ、ううん、遅いなんてことはないよ!お父様とキャメロット王から、罰は受けるかもしれない。でも、一緒にサタナエルを倒したってことになれば、少しは軽くなるかもしれないよ!」
 「サタナエルを倒したとしても、俺が今まで殺めてきた人々は戻ってこない。それに、そんな俺を誰が迎えてくれるというんだ。ならば、ここでセラ、お前に倒されるのもいいだろう」
 何かの決心をしたのか、私を見据えてくるお兄様の目には一点の曇りもないように見える。
 「お兄様・・・・」
 「おしゃべりはここでだ、次で決めるぞ!セラも、その持てる力を全て出し撃ってこい!」
 お兄様は手に持ったガラハッドの剣に力を集中させ、その剣がどんどんと闇の力で包み込まれていく。
 それでも私の中には、お兄様に対してどうしていいのか・・このまま剣を振るって傷つけても良いのか、そんな思いが込み上げてくる。
 「セラ!何を迷っているのですか!?兄上は持てる力を全て出し、貴女と決着をつけたいと言ってるのですよ!」
 「あぁ、傷つけるのがこえぇとか、そんなのは考えるな!おめぇも一人の騎士なら、相手の事を本当に思うなら、それに応えてやるのが筋ってもんだろ!」
 「セラ、ここで剣を取らねば、貴女が死んでしまいますわよ!そうなってしまったら、わたくし達はどうすればいいんですの!?」
 「皆・・・・」
 「どうしたセラ、俺はそんな弱いセラは見たくないぞ!最期にお前のその雄姿を見せてみろ!そして、俺をサタナエルの呪縛から・・」
 皆の言葉が私の心の奥底まで届き、やっと私はマルミアドワーズを再び握り直し、お兄様の方へ顔を向けた。
 「そうだ、それでいい・・行くぞセラ、これで何もかも全て終わりだ」
 私がマルミアドワーズへ力を集中させると、その刀身がお兄様のとは逆に光の力で満ちていき、光り輝いていく。
 私とお兄様は同じタイミングで地面をけると、一直線に相手の方に向かっていく。
 「悪しき心を今こそ断ち切れ!」
 「闇よ、その全てを飲みこめ!」
 私達は互いに剣を振り、交差した。
 少しの間、静寂がその場を支配すると、さっきの一撃で斬られた私の左腕から血がぽたぽたと滴り落ちる。
 そして、それと同時に私の一撃を受けたお兄様がその場に膝をつき崩れ落ちるように倒れると、ミハイル達を縛りつけてた鎖が消えて、3人が一斉にこっちに歩み寄ってきた。
 「セラ、大丈夫なのですか!?」
 「今傷の手当てを致しますわ!」
 「これくらいかすり傷だよ、それよりもお兄様の方が!」
 私が倒れたお兄様の方へ駆け寄ると、ミハイル達もその後に続く。
 そして、私はその場にかがんで、倒れたお兄様を抱きかかえた。
 「セラ、そして仲間の者たちよ・・その力があれば、サタナエルを倒すことも出来るだろう・・・・だが決して油断はするな、サタナエルはお前達が思ってる以上に手ごわいぞ」
 そう言ったお兄様の呼吸はひどく弱ってて、凄く苦しそう・・いくらサタナエルに手を貸してた、そしてお兄様が望んだ事とは言え、私はこの手で大好きなお兄様を傷つけてしまった。
 そう思うと、とてもやりきれない感情がわいてきて、知らない間に瞳には涙が浮かんでた。
 「セラ、そんな顔をするな・・・・せっかくの綺麗な顔が台無しだ」
 血塗られた手で私の両目に浮かぶ涙を優しくぬぐってくれるお兄様。
 「でも、でも・・」
 その後の言葉が続かない、色々と言いたい事はあったはずなのに、その言葉は私から発せられず、かわりに嗚咽が止まらない。
 「すまなかったな、ライト家の顔に泥を塗るような事をしてしまって・・この事はいくら詫びても許されない事だ。そして、最期まで兄らしい事をしてやれずにすまん・・・・セラ、どうか父上と母上を俺の分まで・・大切、に・・して、やって・・・・く・・・・・・れ・・・・」
 そこまで言うと、お兄様は目を閉じて、安らかな表情を浮かべながら息を引き取った・・・・
 私はまだ起きるんじゃないか、そう思って、お兄様の頬をペチペチと叩いたり「お兄様、お兄様・・起きて、お兄様」そう言いながら体を揺さぶって目を覚まそうとしたけど、全く目を覚ましてくれない。
 「お兄様、お兄様ぁあああああああああああああああ!!」
 私の目から頬を伝って、下に落ちた大粒の涙がお兄様の顔をぬらしていく。
 私はお兄様の亡骸を強く抱きしめ、周りを気にせず、大号泣を始め、それをなんともいえない、寂しそうな表情で見守る3人。
 「いくらサタナエルに手を貸してたとは言っても、私はこの手でお兄様を・・・・」
 胸に抱いてたお兄様を膝の上に降ろしてから、私はそばで立ちつくす3人をキッと睨みつける。
 「どうして!?どうしてサタナエルはお兄様に言い寄り、その力を貸し与えたの!?どうして、私とお兄様が戦い傷つけあわなければならなかったの!?こんなの、こんなのひどいよ、ひどすぎるよ!ねぇ、誰か教えてよ!この世界には、神もいないというの!?お願いだから誰か何か言ってよ!!!」
 私の絶叫にも似た叫びに、皆はただ目線を落として無言で立ち尽くす。
 悲壮感に打ちひしがれた私は、再びお兄様を強く抱くと、大粒の涙を流したんだけど、だんだんと私の心の内に、一つの感情が沸き起こってくる。
 自分を倒そうとしてると知りながらも、それを利用して、お兄様に力を貸し、そして、右腕として使っていたサタナエルが絶対に許せない!もう世界平和だとか、そんなの関係ないよ!
 私はただ、ただサタナエルが憎い、そして、絶対にこの手でサタナエルを殺してやるんだから!
 いつの間にか私の顔は、泣き顔から、その目に狂気の色を浮かべた鬼のようなモノになっていたと思う。
 お兄様をその場に横たわらせて立ち上がると、それを静かに見守る3人。
 「皆、今からサタナエルの所に行くよ!私は絶対に許さない、この手でサタナエルを殺さないと、私のこの感情は収まらないよ!!」
 そこから立ち去ろうとした私の手を急に誰かが掴み、振り向かされたと思った瞬間。
 バシーン!
 いつも眠たそうな半開きの目をして何を考えてるか分からないような顔をしてるアセトが、目を釣り上げて私を見つめていた。
 その瞬間、私はアセトに叩かれたのだと気付き、叩かれた頬を手で抑えながら、キッと強くアセトを睨みつける。
 「セラ、大切な人を失ったその気持ち、わたくしにはよくわかりますわ・・ましてや、それが自分で倒してしまったんですもの・・きっとわたくし以上の感情を抱いてるというのは嫌という程わかりますわ」
 「だったら、どうして私を止めるような事をするの!?私はリーダー何だよ!?私の言う事が聞けないの!?」
 今にも襲い掛かりそうな状態で、アセトの両肩を掴むと、力任せに握りしめたんだけど、痛いはずなのに、悲鳴の一つもあげず、ただただ私を表情を変えずにじっと見つめてくる。
 そして、ふいにアセトは私を強く抱きしめると、頭に手を置いて優しくなでてくる。
 「ア……アセト……」
 私はアセトの突然の行動に訳が分からなくなって、その手を肩から離す。
 「今のセラは、突然の出来事に我を忘れてしまっているだけですわ。さぁ、少し冷静になって下さいな。今のセラは怒りに身を任せ、冷静さを失っていますわ。そんな状態でサタナエルの所に行っても、返り討ちにあうのが目に見えていますもの。仮にもセラはわたくし達のリーダーなんですのよ?そんな事で失いたくありませんわ」
 「そうですよ、セラ。私はもう、大切な人を失うのは二度と見たくありません・・どうかアセトの気持ちを分かってあげて下さい」
 「それに、セラが死んじまったら、こんな姿の私に誰が優しくしてくれるってんだ?」
 皆は、私に対して温かい目を向けてきてくれる。
 「皆……そうだね・・私がしっかりしないとね・・ごめん、ごめんね・・」
 皆は、気にする必要はないなんて言ってくれたけど、その温かさ、今の私にはちょっと重いよ……でも、嬉しい。
 私はそのままアセトの大きな胸に顔をうずめると、ポロポロと涙を零しながら泣き始め、それをアセトは優しく受け止めてくれた。
 どれくらいの時間、そうしてたんだろう。いつしか涙も出尽くした私は、アセトから離れると、お兄様の亡骸をそっと抱きかかえる。
 そして、そのお兄様の亡骸を玉座へと座らせた。
 「お兄様・・今からサタナエルの所に行ってくるね。そして、この手で、もう誰も悲しむ事のない、平和な世界を手に入れてみせるよ。だから、お兄様・・その力を少し頂戴」
 お兄様の唇に軽く触れるようにキスをしてから、私は首から下がってる、幼少のころから身につけてたペンダントを取り、身につけた。
 「さて・・・・それじゃ、一回キャメロット城に戻って、お父様とキャメロット王に報告しないとね」
 「そうですね、結果はどうあれ、キチンと報告しないとけいませんね」
 そして、私はお兄様に向かって小声でさよならの挨拶をしてから、キャメロット城へと向かって歩き出したのだった。

 第30話 涙の決別 その3.終わり
 第31話 魔よけの鈴 その1.へ続く





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最終更新日  2010年12月19日 00時53分15秒
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