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カテゴリ:ベリルのドタバタ冒険記~五宝石編~(完)
城の最奥にある扉を開け中に入ると、そこは巨大な部屋だった。
何もない、いや。一番奥には巨大なステンドグラス、その前には玉座が置かれ、そのステンドグラスの方へ向き美しい緑色のロングヘアをたなびかせて立っている、ナディー・・・・いや、ルシファーの姿。 雷が鳴り響き、それと同時に彼女は振り返り俺たちを見据えてきたが、その瞳はとても凍り付いていて、その瞳を見てるだけで圧倒されそうだ‥‥ 「外が騒がしいと思えば、何だ鼠が3匹か」 「ルシファー!ナディーの体を返せ!!」 「ナディールちゃんのその体を解放して大人しくしなよ!」 「ナディール?あぁ、今我の魂の入れ物となっているこの小娘の名前か。残念だがそれは聞き入れられんな。何せこれだけの力を秘めた器は中々ないからな」 ククク……邪悪な笑みを浮かべてから嘲笑するような笑みを俺たちの方へ向けてきたルシファー。 「我をどうするつもりだ、よもや。この器ごと倒す等と馬鹿げたことを言うのではないだろうな」 「く・・・そ、それは……」 「クク、出来ぬよなぁ?中身は違えど、この体はその小娘のものなのだからなぁ」 余裕の笑みを浮かべながら俺達の方へゆっくり歩み寄ってくるルシファー。 「ちぃ・・・どうすりゃいいってんだよ」 「ねぇベリル。ここは少し戦って弱らせるしかないんじゃないのかな?そうすれば、エリーの魔法で何とかできるかもしれないし」 「ナディーを傷つけるのか・・・あんましたくねぇが、今のままじゃどうにもなんねぇか」 やるしかないのか・・・と言っても、今のこの状況。やる以外の選択肢はなさそうだ・・・ 「おいエリー、いけるか?」 横にいるエリーをチラッとみてみたんだが、彼女はルシファーの力に圧倒されているのか、顔面はひどく青ざめ、そしてガクガクと震えてたんだ。 「ダメか・・・」 「う~・・エリーは特に強い魔力を持ってるしねぇ。ここはうち達でどうにか頑張るしかなさそうだねぇ」 俺とジルが剣を持ち構えると、それを意外そうな表情で見てきたんだ。 「ほぉ?我に戦いを挑むか‥‥その心意気、敵ながらアッパレだと褒めて使わそう。だが、我には敵わぬと知れ」 先に動いたのはルシファー。一気に俺との間合いを詰めると、右手を大きく振り上げ攻撃を仕掛けてきた。 「は、はぇええ!?」 何とかその拳を天の村雲の鞘で受けたものの、速さもさることながら、重さもすげぇ……受けた手がジンジンしてきやがる。 「我の攻撃を受けるか、人間にしてはやるようだが・・いつまで持つか」 更に攻撃を放ってくるルシファー。2撃目、3撃目、立て続けに行われる攻撃を捌いていったが、それだけでもすげぇ力が必要とされ、俺の体力はガシガシ奪われていく。 「何て攻撃密度なんだ、受けるだけで手一杯だぜ」 「どうした、我はまだ本気を出しておらぬぞ」 ニヤリとあざ笑いながら攻撃を更に加えてきたが、その時。ルシファーの後ろに回りこんでいたジルが力いっぱいの攻撃を加えようと大きくセイブ・ザ・クイーンを振り上げた。 「いくよっ!!ギガ・ブレイク!!!」 ジルの放った渾身の一撃。 ズシン!! だが、その攻撃はあっさり避けられちまった。何だコイツ?後ろにも目があんじゃねぇの?そうとしか思えねぇ。 「ふむ・・・今の一撃、悪くない、が。まだまだだな」 「うそぉ!?今のは確実に捉えたと思ったのになぁ」 「攻撃とはこうするものだ」 そう言った瞬間だった、ジルは短く呻いてから腹を押さえその場に膝をついちまった。 「う、うぅ・・・」 「ジ、ジル!?」 「今の攻撃全く見えなかったよ……」 「ふん、他人の心配をしている場合ではないぞ」 そう言葉が聞こえた次の瞬間には、俺の胸部へ重く鋭い攻撃が突き刺さっていた。 「がはっ・・・」 その衝撃で俺の体は後方に吹き飛ばされ ドン!! 全身を激しく壁に叩きつけられた。 「ぐ、ぐぅ・・・なんて力なんだ……」 「さっきまでの威勢はどうした。まだまだ貴様等の地獄は始まったばかりだぞ」 「ま、まだだよ‥‥まだ、うちは倒れてないよ」 「あ、あぁ・・・まだこれからが本番だぜ」 「くくく、そうだ。それでいい。さぁ、来るがよい」 立ち上がり、再び俺とジルでルシファーの方へ飛びかかろうとした時だった。 「ぐ、ぐぐ‥‥」 急に頭を押さえ苦しみだしたんだ。 「くぅ‥‥まだ、完全に取り込んでいなかったようだな。こんな時にでしゃばりおって・・・」 「な、なんだぁ?」 「ベ、ベリル君・・・ジルお姉ちゃん‥‥は、はや・・・く。はやく、まだ、私の理性が・・残ってる‥‥うちに」 「ナディー!!」 「ベリル、今しかないよ!」 「あ、あぁ・・・」 わかってる・・・今こうしてナディーが必死にルシファーを押さえ込んでくれてる間に攻撃をしかけないといけないってのは、わかってる‥‥ でもやっぱり、俺にはそんな彼女を傷つけるなんて・・・ そんな俺を見て何か言いかけたジルだったが、すぐにナディーの方へ体ごと向けた。 「ごめんね、ナディールちゃん・・・・・・・・・ファルコンスラッシュ」 攻撃を放ったジルだったが、ジルの攻撃が当たることはなかった。 当たる直前でナディーの精神を押さえ込んだルシファーが素早くその攻撃を避けたからだ。 だが、そのジルの素早い剣撃を完全に避け切れなかったようで、ルシファーの皮膚をわずかに掠めていき、そこから鮮血がポタポタと滴り落ちていく。 ルシファーは傷口を手でぬぐい、驚愕の表情を浮かべながら手についた血を見つめ、そして俺とジルに対してキッと鋭く強い殺意を帯びた瞳を向けてきた。 「この我が・・・・この我が‥‥まさかこのような下等な人間に一撃を喰らわされるとは・・・・・絶対に許さんぞ!貴様等、楽に死ねると思うな!」 怒りにワナワナと震えるルシファー。右手を大きく上に掲げると、ぐるぐると回し始め、そこに1本の大きな闇の矢が形作られていった。 「まずは貴様からだ!この場に来たことを後悔しろ!ベーゼアロー!!」 右手を前に突き出すと同時に、ルシファーの上にあった1本の闇の矢が放たれたのだった。 第53話 避けられぬ戦い その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年11月18日 00時01分24秒
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