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~そして次の日の朝~
「一晩お世話になりました」 「オルロフさん、ありがとね」 「それじゃ、オルロフ。今回は申し訳ないけど、そういうことだからあたしは行くわね」 「はい、気をつけて行ってきてください」 俺達のことを笑顔で送り出してくれたオルロフさんだったが、何かを思い出したのか、ポンと手をうった。 「そうだ、暗闇の丘に行かれる前に、ここから北東に位置する孤島へ行かれてはどうでしょうか」 「北東にある孤島???」 「はい、そこにイェクンの祠という場所があるのですが。そこへ寄って見てはいかがでしょうか?」 イェクンの祠?始めて聞く名前だな。 「なんかあんのか?」 「はい、エリーさんが今持っているグリモアは魔力もなく、本来の姿ではありません。ですが、そこへと行けば再びグリモアに魔力を宿し、本来の姿によみがえらせることが出来ます」 「へぇ・・・そんなこと出来る場所があんのね」 簡単の声を挙げながらグリモアを眺めるエリー。 「グリモアを本来の姿に戻す事が出来る、凄い魅力的ね。是が非でもそこへ行かないといけないわね」 「でもでも、うち達船なんて持ってないし、そんな場所に行く船なんてないよ?それこそ、個人用にチャーターしないとだろうし、そうなると何十万Gっていう巨額な費用がかかっちゃう」 「うへぇ・・・マジか。行きたいとこではあるが、そんな金ねぇしなぁ・・・」 「えぇ~・・・それじゃあ、あたしのこのグリモアはこのままの姿だっていうの?あたしのような高貴な魔導師が持つなら、本来の姿のそれじゃないと釣りあわないわよ」 「と言っても、ない袖はふれねぇんだよ」 と、そん時だった。オルロフさんが申し訳なさそうに声をかけてきたんだ。 「あ、あの~・・・」 「ん?どうしたの?」 「いえ、それでしたら小さいですが僕の船がありますので、それを使ってください」 !? 「へ?いいのか?」 「でもでも、うち達に船貸したらオルロフさんどうするの?」 「いえ、僕はここから離れるわけにはいきませんし、それでしたら皆さんに使っていただいた方がいいと思っただけですよ」 「でも、あたし達そんなお金とか持ってないわよ?」 「お金は結構ですよ。これも新たな弟子の旅立ちを祝う贈り物だと思って受け取ってください」 「本当にいいのか?」 「うんうん、船って小型のものでも相当高いよね?」 「気になさらないで下さい」 「ん、わかったわ。それじゃありがたく使わせて貰うわよ」 流石に船なんて高価なモノをタダで譲り受けるわけにもいかないと俺とジルは困惑してたが、エリーはニッコリと微笑んでから快諾したよ。 「それではこちらです。着いてきてください」 俺達はオルロフさんに着いて人気のない海岸までやってきたわけだが・・・ 「すげぇ・・・」 「結構しっかりしたやつだねぇ・・・」 うん、そこには小型ながらもかなりしっかりとした造りの船が一艘ポツリと岩場に括り付けられていた。 「かなり古型の船ですが、航海をするだけならまだまだ十分使える代物です」 「ありがとね、オルロフ♪それじゃ、早速そのイェクンの祠って場所に行って来るわ」 「はい、エリーさん。どうかお気をつけて行ってきてください。そして、貴女がこの場所へ再び帰ってきて下さるその日を楽しみに待っていますよ」 にっこりと親のように優しい微笑をエリーに向けるオルロフさんに手を振りながら俺達はその場に停泊する小型船へと乗り込んだ。 そして、俺達3人はプロイセンからオルロフさんに言われたイェクンの祠ってのがある北東の孤島目指して船を出したのだった。 第79話 新たなる旅立ちへ その2.終わり 第80話 ここがそうなの? その1.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年08月13日 00時05分43秒
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