|
「ねぇねぇカグヤ。後でまたあたしに回復魔法や光魔法教えてよ」
「はい、すぐに後片付け終わらせますから、それ終わったらはじめましょう」 カチャカチャと俺達の食べ終えた食器を洗いながら微笑みエリーに対して返した彼女。 すぐに退屈だから何かしろよ、って無茶振りするエリーの相手をしてくれるカグヤさんマジ聖母。 というか、だ。アイツの中でどんな心境の変化があったんだろうか? だってよ、あの努力とかそういったのを一切放棄して生まれ持った才能に胡坐を搔いて自分は最強だとか抜かしてたエリーがですよ?自分から率先して教わりにいってんだぜ? そして、そんなエリーを邪険に扱わず相手してくれてるカグヤさん。 まぁ、そもそも俺もジルも魔法が全く扱えないからエリーが本当は心の中で魔法の勉強したいって思ってたとしても、それをかなえてやることは出来なかったわけだが。 でも、意外だったな。確かにカグヤさんは巫女ということもあって光魔法が得意なんだが。普通に攻撃魔法なんかも扱えるらしいんだ。 「さて、飯も食ったしとりあえず外出るか」 「そうだねぇ、そうしよっか」 俺とジルは一度操舵室に寄って航海図をとってきてから甲板に出た。 航海図と方位磁石、それと空を見比べて現在地を確認してるジルの姿はやっぱりかっこいいと思う。 っていうか、出来る女って感じがするな。 普通女性って地図が見れなかったり、方向音痴な人が多いって聞くがジルに限っては本当しっかりしてる。 本当は俺も航海図を読めるといいんだがなぁ・・・いかんせんそういったのは苦手なんだよ。 「なぁジル、今どのあたりなんだ?」 俺の言葉にジルは見ていた航海図から視線を外し俺の方へと顔を向けてきた。 「ん~・・・こないだメルケの近くを通過したし、今の状態から考えるに、この辺りかな?」 そう言いながらジルは今俺達がいるであろう場所を世界地図で指差した。 「後2・3日くらいでハスデアってところかな?」 「ん、つまり順調に進んでるってことなんだよな?」 「うん、魔族もそんなに襲ってきてないし、今のところは順調だねぇ」 「あぁ、順調といえば、カグヤさんが一緒に行動してくれるようになって、エリーも自発的に魔法の勉強してくれるようになって、色々と光魔法も覚えてるみたいだな」 俺の言葉にジルは目を細め、優しい微笑みを浮かべ遠くを見つめた。 「そうだね、それにカグヤさんとエリーって歳も近いみたいだし、仲良くなってくれて本当嬉しく思うよ」 「あぁ、歳が近い子と一緒にいることってそんなになかったからな。カグヤさんも楽しそうにしてくれてるし、本当連れてきて正解だったな」 「でもでも、エリーがカグヤさんと常に一緒にベッタリしてるから、うちたちは基本ほったらかしだねぇ」 「ま、仕方ないんじゃね?」 「まぁ、おかげでうちはベリルを独り占めできて嬉しいけどさ」 「ばwおまw何恥ずかしいこと言ってんだよw」 すんげぇニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら俺の方を見てくるジル。 何でかそんなジルを見てドキドキしてしまったんだが・・・ ジルはニヤニヤとしながら更に言葉を続けてきた。 「本当はカグヤさんにエリーをとられて寂しいんじゃないのぉ」 「べ、別に、そんなことねぇよ。俺はエリーの保護者だ、逆に俺はカグヤさんと仲良くしてるのを見ると、凄く嬉しく思うぞ」 まぁ、嘘は言ってない。確かに寂しいって気持ちもあるが、それよりもカグヤさんとエリーが仲良くやってることに対して嬉しいと思う感情の方が強いのは間違いない。 「そういうジルはどうなんだよ」 「うちもそうだねぇ、エリーもカグヤさんも2人とも楽しそうにしてるから、それを見てるだけでこっちも楽しくなってくるよ」 「そっか、ま、こっちはこっち、2人でのんびりと航海でも堪能するか」 空を見上げるとそれにつられてジルも空を見上げ雲ひとつない真っ青な空を見てポツリと呟き始めた。 第83話 平和だなぁ その2.終わり 第84話 船上の告白 その1.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年08月27日 01時56分58秒
コメント(0) | コメントを書く
[ベリルのドタバタ冒険記 書き直し分 (完)] カテゴリの最新記事
|