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「イズー、大丈夫?」
「ったく・・・何だってカグヤがこんな場所にいんのよ……」 サキュバスを倒しジルはイズーさんの元へ、エリーはカグヤさんの元へと駆け寄っていった。 突然の俺達の登場に現状をうまく飲み込めずにいる彼女達は目を丸くさせてるだけ。 まぁ、そりゃそうだろ。だって彼女達は俺達がこの場に来るってことは全く知らないはずなんだから。 「ジ、ジル・・・ジルなのか?」 「何言ってるのイズー?うち以外に誰がいるのかな」 「いや、どうしてお前がこの場に来ているのだ・・・」 「ベリルさん、ジルさん・・・それにエリーも……どうして?何でいるの?」 「まぁ、簡単に言っちまえば、俺達はルシファーに体を乗っ取られたナディーを助けに来たんだよ」 「そうそう、そしたらイズー達が先にこの島についてたってわけ」 「ふむ?」 俺達は今この場にいるルシファーは本来の姿ではないこと、今ルシファーの依代となっている彼女は俺の大切な人であり、ジルの幼馴染であること。そして、彼女は今ルシファーに体を乗っ取られていることを掻い摘んで話した。 「なるほど、そうであったか」 俺達の説明にとりあえずは納得してくれたイズーさんとカグヤさん。 「それで、今の状況はどんな按配なのよ。見たところほぼほぼ全滅してかなり苦しい状況に見えるけど」 俺達の登場に喜んでたイズーさん達だったが、エリーの言葉にイズーさんは表情を暗くした。 「うむ・・・それなのだがな?最初1200人程で我々率いる先発部隊とその後ろを護る後発部隊に分かれて行動をしていたのだが、後ろからの連絡が全くないところを見ると、もしかしたら・・・」 「俺達がここまで来る間に見た限りじゃ・・・イズーさん達以外は全滅してる感じだったな」 俺の言葉にイズーさんは酷く落ち込んだ様子を見せたよ。 「そうか・・・ということは、1200人いた勇敢なる戦士達のうち、残ったのは我々6人だけとなってしまったのか・・・」 「流石に魔王の城だけあって、敵の抵抗は激しいモノでした。今こうして私が五体満足な状態で立っていられるのが本当不思議でなりません」 「そ、そんなに厳しい戦いだったのか……」 「ねぇ、ところで1つ聞きたいんだけどいいかしら?」 「む、どうなされた。エリー殿?」 「何でカグヤがこの場所に参加してるわけ?」 「彼女は、我々が魔王を討伐しに行くというのを知り、自ら志願してくれたのだ」 「はい、ベリルさん達に私は巫女としてではなく、1人の人間として、カグヤ=ツキイシとして新たな一歩を踏み出させてくれました。そして、そんな時に丁度魔王討伐作戦に参加する兵を募集していると聞いて、是非皆様のお役に立てれば、そう思い志願したんです」 カグヤさんの言葉を聞いてる間、エリーはすんげぇ不機嫌そうな表情を浮かべてた。 「そうか、そうだったのか」 「なるほどねぇ・・・」 「ふ~ん・・・自分からこんな命の保障が全く出来ない死地に志願、ねぇ?」 エリーの呟いた言葉は静かだが、確実に苛立ちの色を帯びている。 「あんた何考えてんのよ!?馬鹿じゃないの?ばっかじゃないの!?せっかくあんたは新たな生活を手にしたのよ?なのに・・・なのに・・・何でこんなとこに身を投じてんのよ。ここで死んだら意味ないじゃない!」 エリーのすさまじい剣幕に非常に申し訳なさそうな表情を浮かべるカグヤさん。 「で、でも・・・でも私は、私はじっとしてることが出来なかったんです!イェクンの祠にいた私は既に死んでいたと言っても過言ではありません!ですから、私は今回の作戦に参加したんです!別に死ぬことに対して恐怖だとか、そんなものは全く感じていませんし、それが皆の為になるのであればこの命喜んで差し出します」 まっすぐな瞳をエリーの方へ向けそう力説したカグヤさんだったが、そんな彼女にエリーは睨まれただけで凍りつくんじゃねぇか、ってくらいに冷ややかな目を向けた。 「あんたに一言いってあげるわ。あんたは今の自分を勇敢だとか、カッコいいって思ってるかもしれないけど、あたしから言わせればただ命を無闇に投げ捨てる、死に急いでる残念な人間にしか見えないわ」 エリーから発せられた言葉は本当に棘しかなかった。 そんな彼女の言葉に俺とジルはエリーとカグヤさんの間に割って入った。 第105話 後は任せて! その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年11月19日 00時30分23秒
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