第12話 突然の休日!? その2.
「うぅ・・気持ち悪いですわ……クレッシル、お水を取って下さいまし」 「あんなに飲むからこんなんになるんだぜ?次からは自重してくれよ?」 呆れた様子の顔を向けながらも水をコップに注ぐクレッシル。 「クレッシルまでそんなことを・・ま、まぁ・・以後気をつけますわ」 わたくしにお水の入ったコップを手渡すとクレッシルはベッドにごろんと横たわりわたくしの方を見つめてきましたわ。 「さて、それじゃ私はアセトの事も気になるし、今日はここでのんびりとするかね」 「ありがとうございます、クレッシル」 「へへっ、良いって事よ、どうせ私も暇だしよ、それならアセトと二人でおしゃべりしてた方がいいと思っただけだ」 その後、わたくしはクレッシルとおしゃべりをしながら時間を過ごしていたのですけど、お昼頃になると酔いも冷めてきたので、わたくしはクレッシルと一緒に町中に出て散歩することにいたしましたわ。 そして、町中をブラブラとしてるとセラとミハイルを見かけましたの。 「クレッシル、クレッシル!あそこに見えるのはセラとミハイルじゃありませんの?」 「ん、本当だな!こんな所にいたなんてな、そうだ!一緒に合流して町中でも散策しねぇか?」 クレッシルがセラとミハイルの方に駆け寄ろうとしたのをわたくしは手を取り阻止してこっちに引き寄せ物陰に隠れ、声を押し殺してクレッシルにある提案を持ちかけてみました。 「クレッシル、ここはひとつ二人の後をつけてみませんこと?」 「な、何でそんなコソコソしなきゃなんねぇんだよ。別に普通に一緒に合流すりゃいいだろ?」 「わかってませんわねぇクレッシル、それだと面白くありませんわ」 「そ、そんなもんかねぇ?」 「そんなもんですわ!というわけでクレッシル、尾行開始いたしますわよ!」 あまり乗り気でなかったクレッシルを半ば強引に言いくるめたわたくしは、二人の入ったアクセサリーショップに入って商品を壁に二人を見守っていたのですけど、何やら店員さんの視線が痛いですわね・・でも、ここで気にしたら負けですわよね? 「ねぇねぇミハイル!このヘアピン凄く可愛いよ♪ほらほら、ミハイルに似合うんじゃないかな?つけてみてよ」 「確かに可愛いですけど、私がつけてもきっと可愛くないですよ?むしろセラの方が似合いそうな気もしますけど」 「ううん、そんなことないよ!ミハイルって顔立ちが整ってて凄く綺麗だし、きっと似合うよ」 セラが笑顔でそう言うと、ミハイルは恥ずかしそうにしながらもセラから受け取ったヘアピンを右目を隠すように垂れ下げている前髪につける。 「何か、凄く二人とも楽しそうだよなぁ、あんなミハイルみたことねぇぜ」 「そうですわね、意外にもミハイルって可愛いモノが好きなんですのね、これは良い事を知りましたわ」 ミハイルはさっき前髪につけた花の装飾のついたヘアピンを購入すると早速それをつけてその店を後にする。 わたくし達もその後を追って店を出たのですけど、その時クレッシルが「アセト、ちょっといいか?」と、呼びとめてから先程の店で買ったであろうシンプルなシルバーの指輪を渡してきましたわ。 「えっと、これなんですの?」 「アセトに似合うかな?って思ってよ、つけてみてくれ」 「ありがとうございますクレッシル、早速つけてみますわね」 わたくしは早速そのシルバーの指輪を右手薬指にはめてみたんですけど、それを見たクレッシルは「似合ってるぜ」そう言って、親指をグッと立ててきた。 その後、町を一回りしながら色々な店を回っていた二人をわたくし達は、その度にお店の店員さんからの刺さるような視線に耐えながらその後ろについて見て回っていましたわ。 そして、夕方となってそろそろ日もくれそうだという時、二人は海の見える公園にやってきましたので、わたくし達はこっそりと草むらに入って、二人を観察することにいたしましたわ。 「ミハイル、今日は一日付き合ってくれてありがとね♪どう楽しかった?」 「ありがとうございますセラ、おかげで良い息抜きが出来ました」 「よかった、いつも迷惑かけてばっかりなのに文句一つ言わないで私達をまとめてくれてるミハイルに、どうしても今日一日はゆっくりしてもらいたいと思ったから」 ミハイルの言葉が嬉しくて、私はホッと胸をなでおろす。 その時、一隻の船が私達の前を通り過ぎて行くのを見付け、私はその船を見つめながらポニテを掻きあげる。 「明日は私達もあの船に乗っていよいよアルカダ大陸に向かうんだね、向こうで何があるかはわからないけど、無事にお兄様に会えるといいな」 そう言ってからミハイルの方に振り向くと、彼女は今まで見たこともないような真剣な眼差しで私を見てくる。 「セラ、どうして私がキャメロット城でセラと一緒に旅をするって言ったかわかりますか?」 「えっ!?どうしたの突然!?」 「実は私にはセラと同じ歳の妹がいたんです、まぁ生きていればですけど」 「う、うん・・・・」 「最初会った時、私はセラに妹を重ねてました、妹のミラクと同じ歳の少女が家の慣わしだとか、そういうのは関係なくただ、行方知れずとなった兄上を探しだしたい!そんな思いで旅に出ようとしてる、それを聞いた時、私は姉として手伝いをしてあげたい、そう思ってセラと一緒に旅に回ると言ったんです」 「そ、そうだったんだ・・・・」 「それこそ最初の方は旅のいろはも全くわかってないセラでしたから、お姉さん風を吹かせてあれやこれや、と色々教えてましたけど、日に日にセラはどんどんと立派な冒険者の顔つきに、いえ、顔つきだけじゃなく実際、私達のリーダーとして立派に成長してました・・」 私がミハイルの言葉に静かに耳を傾けていたら、近くの草むらからガサガサっていう音が聞こえたから、私とミハイルが音の聞こえた方に視線を向けると、そこにはクレッシルとばつの悪そうな顔をしたアセトの姿があったよ・・・・ クレッシルは私達と目が合うと、あっ!と、短く言ってからその場を離れようとしたんだけど 「クレッシル・アセト……怒らないですから、ちょっとこっちに来て下さい」 わなわなと震えながら、今までに聞いた事もないくらいドスのきいた低い声で言うと、二人は逆らう事も出来ずに脅えながらこっちにやってきた。 「盗み聞きとは言い趣味をしてますね、いつから見てたんですか?」 「ぐ、偶然ですわ!そう、たまたまクレッシルと町を散歩していたら先程二人をみかけたものですから!」 「ん?アセト、その指輪はどうしたんですか?今朝までつけていませんでしたよね?」 「こ、これはそこのアクセサリーショップでクレッシルがわたくしに似合いそうだって、買ってくれたものですわ」 「お、おぅ、別に私達はそこでセラとミハイルが楽しそうに買い物をしてる所なんて見て・・・・・・・あっ!」 そ、それってお昼くらいからずっとって、こと・・だよね? 私も、ちょこぉっと二人にムカッとしてきたよ・・・・・ 「という事は、お昼すぎからずっとということですね?アセト……今日は一日大人しくしてると言ってましたよね?それにクレッシル、どうしてアセトを止めなかったんですか?これは、二人にキツイお仕置きが必要なようですね……」 ミハイルは目を座らせ、ふふふ……と、怪しく笑いながらパルチザンに手をかける。 「わ、悪かった!この通り反省するから許してくれ!!」 「も、申し訳ないですわ!!ちょっとした好奇心でしたのよ」 二人は土下座して謝ってたけど、それだけで許せるはずが、ねぇ? 「ふふふ……今宵私のパルチザンが血に飢えてますよ・・・・」 「奇遇だねミハイル、私のヴィーキングソードもそうだよ」 私とミハイルは武器を手に持って、地面に座る二人を見据えた。 さて、どうしようかな・・ そんな私達を見て二人は「ごめんなさい、もう二度としねぇから!(しませんわ)」そう言い残し、その場から逃げ出したのだった。 私とミハイルは逃げた二人を追いかけ、そしてミハイルは二人の肩をがしっと捕まえて力任せに肩を握りこっちに振り返らせる。 「いてぇえええええええええええええ!」 「ちょっ!!ミハイル!力が入りすぎですわよ!痛いですわぁあああ」 ミハイルはクレッシルとアセトをまるで親の仇でも見るかのような怖い顔で睨みつける。 「もう二度とこんな下賤な事はしないと神に誓いますか?」 ミハイルのその言葉に二人は涙目になりながら、首がもげるんじゃないか?と思えるほど全力でぶんぶんと首を縦に振ってたよ。 そんな様子を見ると、何か私としてはもうこれくらいでいいような気もしてきたんだけど・・ 「そうですか、それなら今日は半殺しで許してあげます♪」 あ、あわわわわ・・・・あの目は本気でやりかねないよ・・流石にここで二人にけがをされたら、向こうに渡るのがもっと遅くなるし、一応止めないとね・・ 「ま、まぁ、二人も反省してるみたいだし、今回は晩御飯抜きで勘弁してあげようよ」 私の言葉にミハイルは驚いた様子でこっちを見たけど、再び鋭い目つきに戻すと顔を二人の方に向ける。 「命拾いしましたね二人とも、慈悲深いセラがそう仰っているので今回はそれで許しますけど、もし次同じような事をしたら…………コロス!」 こうして今回のこの騒動は幕を下ろした、その後宿に戻った私とミハイルは二人の見てる前で、いつもより豪勢な食事をとったのだった。 今回の教訓!アセト先生のお言葉。 皆も軽い気持ちで絶対にコソコソと後をつけたり盗み見をしてはダメですわよ?これは、お姉さんとの約束ですわ♪ 後、セラとミハイルは普段は優しいですけど、怒らせると凄く怖いですわ・・・・ 第12話 突然の休日!? その2. 終わり 第13話 魔法大国ジブリール その1. へ続く