大衆が大衆に説く時代
HOME > 今日のことば 1/27 Tue大衆が大衆に説く時代 その昔、日本の僧たちは中国に渡って懸命に修行をし、その熱意に応じて中国のすぐれた僧が、これまた命がけの航海をして日本にやってきて仏教を伝えてくれました。そうして仏教が日本に伝えられた当初は、専門家の僧が同じ専門家の僧に法を説いたわけで、在家で仏法を聞くことができたのは、ごく一部の貴族階級だけでした。当時の仏教は限られた人たちのためのものだったのです。これに対して、「釈尊は一切衆生(しゅじょう)の教化(きょうけ)を願いとされているのに、ひと握りの知識階級だけのための仏教でいいのだろうか」という反省が生まれ、鎌倉時代の祖師方の仏教が説かれるようになりました。法然(ほうねん)上人をはじめ、道元(どうげん)禅師、親鸞(しんらん)上人、日蓮(にちれん)聖人などの祖師方は、一般大衆に仏の救いを伝えるためにそれぞれの方法で法を説かれたのでしたが、それから七百年が経過した現在、その祖師方の教えを伝える各宗派も当時のような活発な教化活動が行なわれていないのが実情ではないでしょうか。現代の社会で、お釈迦さまの教えを広く人びとに伝える新しい仏教が求められるのは当然のことなのです。大衆が大衆に説く時代、まさしく普門示現時代の到来です。 庭野日敬著『開祖随感』より