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カテゴリ:作家
あらすじ
悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、すくすくと育った。長野高校に進学し、2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会に参加した。2か月後頃、突然、小平由樹枝と付き合っているか? と怖い先輩に言われる。その噂の理由は、由樹枝が言い寄る男達を避ける為の口実であったのである。翌年冬、その由樹枝から手編み手袋を貰う。 =================================== 映画のあと、悠介は、その後、帰るのか、どこかに行くのか、どうして良いか分からなかった。もっと一緒にいたかった。腹減ったなーと思い、 「ねぇ、焼きそば、食べる? 安くて美味しいお店があるんだ。」 由樹枝は、学校の行き帰りに、食べてはいけないと両親に言われているようで、そのお店も知らないし、行った事もないと言う。 「どうだった映画?」 「うん、可哀そうだね、せっかく結婚したのに・・・。」 「そうだよね。愛は後悔しない事だって、言っていた。」 「愛って分からないけど、愛に限らず、後悔したくないですよね。」 「そりゃ、そうだ。後悔せずに生きて行ければ一番いい。」 悠介は、話していて、彼女は、美しいだけでなく、考え方も大人だ、と思った。益々、好ましい相手に感じた。焼きそばがやって来た。 「食べよう、関根とたまには、来る事があるんだ。」 「そう、関根さんね、写真部の?」由樹枝は、美味しそうに食べている。悠介は何か話さねばならないと話題を探した。 「関根と言えば、由樹枝さんは、写真部に入っているの?」 「ええ、あんまり行けないけど、写真部には入っている。」 「そうなんだ。俺は、入っても良いかな、と思っていたけど、誘われないから、入ってない。勉強以外、何もしていない。」 「じゃー、バドミントンやる?」 「え? バドミントン?」 彼女は、バトミントン部にも入っているらしい。その話になったら、美しい目がさらに輝き、きらきらした目をして語り出した。 高校生活の間に、バドミントンの国体に出たい、それが目標らしい。今日の午前中も、みっちり練習して来たと言っている。悠介は、考えてもいない国体の話が出て驚いた。ちょっと近づいた彼女との距離が、離れた感じがした。彼女は、遠い存在に思えた。 「ねぇ、バドミントン嫌い?」 「嫌いも何も、やったことないよ。」 「じゃー、来週の日曜日、午後やろう! 午前中だけ練習だから。」 由樹枝は、やる気満々である。悠介は、運動神経は悪い方ではない。小学校でも中学校でも、どんな運動でも、うまくこなした。しかし、一つの競技をずっと続けた事がない。 「別に暇だし、勉強以外何もないから、いいよ、やる? でもやったことないし、下手だよ。練習の相手にならないよ。」 「いいの、いいの、たまには、練習でなくて、お遊びでやって見たいの。」 そんな事で、次のデートの約束が出来た。 焼きソバを食べながらの会話。国体を狙って頑張っていると聞いて、由樹枝との距離を感じたが、バドミントンをやろうと誘われて、翌週のデートが決まった。デートと言って良いのかどうか分からないが、二人で会うのであるから、デートと言っても良かろうと悠介は思った。 焼きソバも食べ終わり、名残りは惜しいが、家に帰る事にした。もっと一緒にいたかったが、行くところがない、行くところが分からない。クラスメートの中には、喫茶店に屯しているような者もいると聞くが、悠介は喫茶店に入った事がない。悠介の家は、お茶党で、コーヒーはない。初めてコーヒーを飲んだのは、叔母の家であった、 「何これ?」と初めて飲むコーヒーの味を思った。お茶の方が美味しいと感じたが、コーヒーを飲んで、何故か、少し大人になったような気分を味わったものである。だから喫茶店でコーヒーを頼むことくらいは出来るのである。 「そうだ、今度、喫茶店へ誘おう。」 そして、翌週の午後、バドミントンである。悠介は、学校の体操着を着て、体育館へ向かった。約束の午後3時前、由樹枝は、既に来て待っていた。バドミントンコートが3面張ってあった。2面では、選手らしい人達がプレイしていた。残る、1面が、悠介達が行うコートである。 「これ、使って。」、由樹枝が、ラケットを渡してくれた。そして、ラケットの握り方を教えてくれた。 「まず、ハイクリアの練習しましょう。 大きく打ってね。」 由樹枝に教えて貰った打ち方で、シャトルを狙った。思い切り打ったはずが、大きく空振りした。 ================================= お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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