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カテゴリ:作家
あらすじ
悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、すくすくと育った。長野高校に進学し、2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会に参加した。2か月後頃、突然、小平由樹枝と付き合っているか? と怖い先輩に言われる。その噂の理由は、由樹枝が言い寄る男達を避ける為の口実であったのである。翌年冬、その由樹枝から手編み手袋を貰う。手紙のやり取りの後、2人の仲は、デートするまで進展する。 =================================== 何回か、空振りをして、その後は当たるようになった。しかし、行き先はシャトル次第である。そして、打っている内に、力が入り過ぎていることに気が付いた。腕から手首をピュンと降るようにしたら、大きく飛ぶようになった。かなり集中して打ち合いをした。由樹枝の事を考えている暇はない。シャトルに集中している。大きくクリア出来るようになり、かなり様になって来た。 「少し休みましょうか?」、由樹枝が言った。 悠介は時計を見たら、30分が経過していた。汗が吹き出している。由樹枝は涼しい顔であるが、やはりうっすらと汗をかいているようだ。ほんのり桜色と言うのか、透き通るような肌に薄桃色の頬があって、より清純で美しく見えた。そんな由樹枝と二人で、バドミントンをする幸せを感じていた。 「ずいぶん、早い上達ね、運動神経が良いのね。」 「いや、まだまだだ。バックの打ち方がおかしいみたい。」 「そうね、バックは難しい。でも、打っていれば、感覚があってくるわよ。」 「今度は、ドロップショットの練習をしましょう。」 スマッシュと同じ構えで、ふわりとネット際に落とす打ち方である。由樹枝が、大きく打ってくれる、それを、ネット際に落とすのである。ハイクリア同様、仲々、上手く行かない。手前に落ちたり、大きすぎたりする。しかし、空振りする事はなくなった。由樹枝は、勿論であるが、悠介に比べたら、格段の差がある。悠介がどこに打っても、同じ所に返してくれる。従って、悠介にとっては、同じフォームで打てるのである。練習になる。 30分程、練習したであろうか? かなり思うように、シャトルを落とせるようになった。もう一度、休憩した。悠介は喉が渇いた。由樹枝は水筒を持っている。その水筒を、由樹枝が悠介に差し出した。 「喉、乾いたでしょう? 飲んで。」 飲んでと言われても、コップもない。由樹枝が飲んだであろう。水筒の口から直接飲んで良いのであろうか? と迷った。しかし、差し出された水筒である。口を付けて飲んだ。間接キスではないか、と悠介は気になった。 由樹枝は、気にしていないようで、悠介から受け取った水筒を、そのまま口を付けて飲んだ。悠介は、驚いたが、それを、そのまま口に出して言った。 「間接キスじゃーないか?」 「え? そうなの? まぁ、良いでしょう? 恋人って噂なんだから。」 「そうか、良いのか。じゃー、その内、ほんとのキスさせてくれ。」 由樹枝は、それには答えずに言った。 「少し休んだら、ゲームの練習しよう? ゲームの方が面白いよ。」 「ゲーム? 出来るかなー?」 「今みたいに、相手コートへ入れれば良いだけ、大丈夫、面白いよ。」 サーブのやり方を教えて貰って、ゲームを始めた。試合の相手にならないが、点数の付け方とか、サーブ権の移動とかも覚えた。由樹枝が打ちやすい所へ返してくれるので、打ち合いも続くようになった。大きく打ったり小さく返したり、ゲームらしくなってきた。慣れてくると、左右に打ったり、前に落としたり、どうすれば、相手が取り難いかも分かって来た。 由樹枝が手加減しているのが悠介にはわかる。まだ始めて1年らしいが、かなりの腕前のようだと悠介は感じた。国体を目指すと言う位だから、練習量も豊富だし、工夫しながら練習しているのであろう。 久しぶりの運動で、悠介は疲れた。集中して行ったので、心地よい疲れである。由樹枝が着替えて来た。彼女は制服になって、バッグをぶら下げていた。悠介は、着替えを持っていないので、体操服のままである。3月始めとは言え、夕方になると、寒い位だ。 又、焼きそばを食べに行った。 「バドミントン、面白いね。運動も、たまには良いなー。」 「面白いでしょう? 結構、激しい運動だし、悠介さんとだと気楽だし、何だか、リラックスできる。楽しいよ。」 「そうか、じゃー、又、教えてよ。」 「そうね、来週は、練習試合があるので、ダメだけど、その次ね。」 二人は、共通の話題が出来て、会話が弾む。悠介が憂慮していた話題を探すような事もなかった。 「あのさ、もう期末テストだから、俺とバドミントンしている暇あるの?」 「あ、そうか! 勉強もしなくちゃね。」 「そうそう、勉強第一だよ。最も由樹枝さんは、スポーツと両立だけどね。」 「あの、由樹枝さんって、何だか他人行儀な呼び方ね。」 「え? じゃー、何て呼べば良いの?」 「友達は、由樹って呼んでいる。」 「由樹? 呼び捨てで良いの?」 「良いわよ、それで。」 「そっか、じゃー俺の事は、悠介、と呼んでくれ。」 「先輩なのに、悠介で良いの?」 「いいさ、その方が、親しい間柄見たいじゃーないか?」 「うふふ。そうね、悠介に、由樹、そう呼びましょう。」 ================================= お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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