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ラッコの映画生活

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2007.08.05
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カテゴリ:何故か好きな映画
CQ
Roman Coppola
88min

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言わずと知れた大監督フランシス・コッポラの息子ローマン・コッポラの第一作。2001年のカンヌで上映されたとき、映画祭に間に合わせるために急いだ仮の編集であったこともあってか冷たく遇されようだ。今回見たDVDはやや短くなり最初も最後もかなり変わっているという再編集版だけれど、ボクはなかなか良い・楽しい映画だと感じた。

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2000年頃撮影されたこの映画の舞台は1969年フランスで、トリュフォーの『アメリカの夜』(1973)のように映画の中で映画の製作過程が描かれているが、その映画中映画の物語はキューブリックの『2001年宇宙の旅』(1968)同様当時の近未来である2001年が舞台だ。今2本の映画の題名をわざわざ挙げたのは、この映画が60年代70年代の主にヨーロッパの映画への思い、憧れ、敬意、ようするに信仰告白のような作品だからだ。映画製作の映画という意味では元になるのは『アメリカの夜』と同時にゴダールの『軽蔑』(1963)でもあり、同じようにプロデューサーの監督に対する干渉が描かれ、アンジェラ・リンドヴァルの肢体の写し方はブリジット・バルドーのそれだ。トリュフォーに戻れば「ラストの拳銃はどの形にしますか?」というセリフは『アメリカの夜』のトリュフォーへのオマージュ。映画中映画のSF『ドラゴンフライ』はロジェ・ヴァディムの『バーバレラ』(1968)へのオマージュであり、月から見た青い地球の画面やパリの風景の書割のセットは、より新しい映画だが『ティコ・ムーン』(1996)をも連想させる。ローマが舞台の部分で年越しのパーティーの人々がグロッタを見にいく様子はフェリーニの『甘い生活』(1960)を思わせるし、そうでなくとも端々『81/2』他のフェリーニ作品を連想させる。映画への情熱でパートナーの女性との生活をないがしろにし、映画製作の世界で知合う別の女性への恋情を持って、パートナーに去られる主人公の様子はポーランド映画だがキェシロフスキの『アマチュア』(1979)をも思い起こさせた。

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それとはまた別に、この映画に出演する2人のフランス人俳優の雰囲気が良い。プロデューサーに解雇される監督を演じたジェラール・ドパルデューと主人公の恋人マルレーンを演じたエロディ・ブシェーズは、どちらもセリフは英語だけれど、このアメリカ映画的、あるいは無国籍テイストの映画に、濃厚なフランス人の雰囲気を醸し出していたのが面白い。特に主人公のアメリカ青年との絡みで見せたブシェーズの雰囲気は正にフランス女性であり、同じ役をアメリカ人とかの役者が演じても決して出すことの出来ないだろうフランス女を体現していた。非フランス映画で、非フランス人が演じるフランス人を見る時にある種の抵抗とか物足りなさを感じることが多いけれど、こうして全体の異空間の中にコントラストをもって置かれると、フランス人の持つフランス人的個性の強さを改めて見せつけられる思いだった。キェシロフスキが『ふたりのベロニカ』を撮る時に、プロデューサー等に主演女優はフランス人でなければフランスの観客は納得しないと言われて抵抗を持ったようだが、実際そういう要素は訳あることなのだ。ちなみに革命家の方が勝利するというラストにこだわり解雇されるドパルデュー演じる監督の名前がアンドレイというのはポーランドの映画監督アンジェ・ワイダへの仄めかしだろうか。

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若いアメリカ人(?)のポールはヌーヴェル・ヴァーグのフランスにやって来ていた。時はメ・68(フランス5月革命)の頃。彼はスチュワーデスをするフランス人の恋人マルレーンと一緒に暮らしていた。彼は自分の真実を探究し記録するとして、映画カメラを自分に向けてシネマ・ヴェリテ風、あるいはゴダール風の白黒映画を自費で撮っている。正面からアップの人物がカメラに向かって語る映像はゴダールだし、コーヒーカップの渦巻くコーヒーは『彼女について私が知っている二、三の事柄』(1966)だ。ポール(ジェレミー・デイヴィス演じるポールの小柄で端正な風貌はトリュフォーやその分身たるアントワーヌ・ドワネル [ジャン=ピエール・レオ] に似ていなくもない)は映画の編集の仕事で生活をしているが、B級SF映画『ドラゴンフライ』にも編集や第2班監督などとして関わっていた。映画のことが最重要の彼は久しぶりにマルレーンがフライトから帰ってきても映画関係の用事があれば彼女を放ったらかしだし、もともと彼が大枚注ぎ込んで撮っている映画に彼女の理解はない。そんな中彼は『ドラゴンフライ』の主演女優ヴァレンタインに心惹かれ始める。

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(以下ネタバレ)
プロデューサーとの意見の相違で最初の監督アンドレイは解雇され、引き継いだデ・マルコも交通事故に起こしたりですぐに辞退し、結局ポールが抜てきされる。ラストのことで大晦日ローマにプロデューサーのエンツォに会いに行くが、帰ってみるとマルレーンは荷物をまとめて去っていた。革命的思想から『ドラゴンフライ』は革命家が勝利するラストにしたいという最初の監督アンドレイが編集室に忍び込んでフィルムを細切れにしたり、撮影済みのフィルムを強奪したりするが、革命家が勝利するラストを彼に約束してポールは映画を仕上げた。たぶん映画として成功だったのだろう。それまで最廉価車2CVに乗っていたポールが同じシトロエンの高級車DSを運転している。

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映画の途中に『悪魔の首飾り』のフェリーニ風に挿入されるポールへのインタビュー(空想映像)はポールのやろうとしていることを批判・非難していたが、商業映画で成功した彼は「作家の映画」映画祭のようなものでも上映され、講演もするようになっていた。でも講演後に彼に話し掛けた聴衆の1人の若い女性の用件は自分の書いた脚本をデ・マルコ監督に渡してくれという売り込みだった。自分の作品『69/70』が上映される部屋のドアの隙間からポールがスクリーンを覗くと、そこにはマルレーンの姿が写っていた。懐かしい彼女との愛の記録だ。ラストはポールが監督・撮影する新しい映画のためのカラーテストのフィルム画像。そこに写っているのはヴァレンタインだった。

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なんとも微妙なバランスを保った面白い映画ではないだろうか。ベタに作られた『ドラゴンフライ』もそれなり魅力的だし、1965年パリ郊外生まれのローマン・コッポラが描いた自分のほとんど知らないメ・68等のフランスもいいし、何よりも全編にただよう60年代70年代の色々な映画の引用がいい。彼が愛するこうした映画に詳しく、更にそれが好きな観客であれば、それだけこの映画を楽しめると思う。しかも難しくではなく軽い気持ちで。映画中でポールが撮ったゴダール風の白黒映画もローマンが撮りたかったものだろうが、それだけでは作品として成立しない、というよりも広く興行することは不可能だろうが、上手く商業長編映画に溶け込ますことで我々も見ることができるのだ。映画作家のやりたいことと実際に大資本を得ての商業映画の制約、この関係を描いたものでもあるのだろう。

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最後にこの映画で印象に残ったセリフを1つ。アンドレイがポールに言うのだけれど、「いいかいポール。常にカメラの横に立て。役者が君の存在を感じ、君のために演じられるように。」最近の映画監督は役者に背を向けてモニターを見ていたり、別室でモニターを見たりしている。それはカメラの撮影する映像をモニターで同時に見られるという技術の進歩なのだけれど、これは役者の演技に従来との変化をもたらしてしまうだろう。リヴ・ウルマンはHDで撮られた『サラバンド』でベルイマンが今までのように自分の演技を近くで見ていてくれなかったことの戸惑いを洩らしている。「最近の監督は演ずる役者を直接見なくなった」と嘆いていたキェしろフスキはカメラに写らない範囲で演ずる役者に超接近していた。映画というこの虚構と現実の交差した世界の魅力はこうした撮影方法でこそ可能なのではないだろうか。

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Last updated  2007.08.14 03:06:09
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