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眠りの底で

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2007.11.28
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カテゴリ:物語 鬼果

  鬼火を燃やしながら 路地裏にもどる。
  遊んでいた子らは 走り去る。
  ワタシとわたしは
  木戸を押して 古家に入り込む。
  その庭に いちじくの木があった。

  思い出した。
  ここは わたしのはじまり。 

  ワタシが言った。
  「この木に火をつけて。
   燃やし尽くしたその残骸に 鬼果が生まれる。
   鬼果を食えば 開放される。鬼の力が思うがまま。」

  思い出した。
  この木が わたしの名づけ親。

  ワタシが 地団駄ふむ。
  「花のない木はいらない。鬼果が欲しい。早く早く。」

  わたしは この木の花を 知らない。
  青い香りも 記憶にない。
  でも
  その果実を もいでくれた人の手を
  果実の味を
  思い出した。
  火は つけられない。 
  鬼火を 握り消す。
  手のひらが焦げる痛みに 目が覚めそうになる。
  まだ 目覚めてはいけない。
  やり残したことが。
  わたしは落ちる。 再び 奈落の底へ。

  女の子は 暗闇にうずくまり続けていた。
  他人の星を隠し持っている限り 外へは出られない。
  星を 暗闇でこっそり見る。
  あんなに美しかったのに くすんでしまった。

  わたしは 
  嫌がる女の子の腕をとり 暗闇から 引きずり出した。
  日の下で おびえて声も出せない女の子にかわって
  声を張り上げる。
  「かなちゃん ごめん。」
  振り向いたかなちゃんの泣き顔に
  「拾ったの。返すの遅れてごめんなさい。」
  そう言ったのは わたし いいえ 女の子。
  
  泣きたくなって

         目が覚めた。



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Last updated  2007.11.30 11:05:07
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