観てきました。映画『怒り』
ギミー・ヘブン スタンダード版価格:3488円(税込、送料別) (2016/10/7時点) 妹からせっつかれて観てきました。映画版『怒り』。原作は吉田修一、監督は李相日。『悪人』タッグ再びです。出演は渡辺謙、宮崎あおい、森山未來、妻夫木聡、綾野剛、松山ケンイチ、ピエール瀧、池脇千鶴、高畑充希、広瀬すずほか。 まず、先に結論を言いますといい映画です。★★★★☆『悪人』は監督が原作をつかみ切れていないという欠点が目に付き、華やかな受賞歴があるものの、なんだかなあ。。。でした。 どうもこの監督さんには『悪人』のような誰も悪い人はいないけれど、悪い場所、悪い時、最悪の組み合わせが重なって犯罪が起きる、という事件より猟奇殺人の方が扱いやすいようです。 そうそうたるメンバーで重厚な画面。リアルな犯罪現場や日常の風景に臨場感があふれています。沖縄を舞台にした部分は海の色と砂浜がとてもきれいです。《あらすじ》 東京の八王子で起きた夫婦惨殺事件。被害者はごく普通の優しい夫婦で怨恨は考えられません。それにもかかわらず、現場は酸鼻を極めた状況。犯行現場には被害者の血液で書かれた「怒」の文字が。犯人は相当な精神異常者と目されます。 遺留品と目撃証言から犯人の身元はすぐに割れますが、整形手術を施したため、予想を裏切り事件は難航。犯人は1年以上も逃げ続けます。テレビでは特集番組が流れますが有益な情報はなし。そんなとき、千葉・沖縄・歌舞伎町に犯人と同じ年頃、身体的な特徴が一致する3人の男性が現れます。素性が分からない人々に周囲は困惑しつつも、少しずつ心を開いていきますが、テレビで整形後の写真が公開されたことで彼らの日常に小さなヒビが入ってきます―。 人々の「疑心暗鬼」と人間の絆、心の闇がテーマの作品です。現代日本が抱える問題が骨太のドラマに仕上がっています。 松山ケンイチ、森山未來、綾野剛がそれぞれ事情を抱えた素性の分からない人物を見事に演じています。とてもナイスな人選で、どの人物も「もしかしたら凶悪犯かも、、、」と思えるところが◎。 どの俳優もいい仕事をしていますが、特に今回、印象的だったのが宮崎あおい。『篤姫』以降、時々はユニークなこともしますが、『神様のカルテ』、『舟を編む』、『天地明察』ほか良妻の役ばかり。昔はもっと、演技力を活かした役をしていたのに、、、と寂しく思っていました。冒頭に挙げた『ギミーヘブン』とか、『少年メリケンサック』は落差があってユニークでした。今回は、ちょっと知的に問題のある、過去を持つ元風俗嬢。7kg太って役作りをしたと話題になりましたが、映画館で観るとやっぱり細い!!原作はもっと「デブ」なのですが。。。体重増加はさておき、演技は見事でした。さすが!!の一言。かわいらしい外見、モデル出身のスタイルの良さをかなぐり捨てる名演技。女優です。 細かい設定は全て省き、タイトな作りで映像化しています。そのため、やや冗漫な印象の原作が引き締められています。そういった意味では原作を超えていますね。 水面下の設定が知りたい方は原作の小説を読むのも良し、映画だけでも楽しめるように作ってありました。 考えさせられたのが原作よりも小宮山泉の出番が少なかったこと。映画の中では広瀬すずが演じています。やはり日本を代表する俳優が多数出演する映画の中でこの少女がこの役というのは無理があったのでは?(年齢は関係ないです。過去に名子役は沢山いますから。仙道敦子とか。モデル上がりというのも無関係。宮崎あおい、二階堂ふみもモデル出身です。)名女優 宮崎あおいが顔も髪もぐしゃぐしゃにして熱演しているのに、広瀬すずはさらっとした扱い。複数の米兵に押さえつけられているシーンのはずなのに、顔も髪も乱れていないのはとても不自然。『ホワイトアウト』の松嶋菜々子を彷彿とさせました。させちゃ駄目でしょ。まあ、仕方がないんですかね。映画の制作には大きなお金が動きますし、やたらと押されている若手タレントみたいですし。 ほかの俳優がいいので映画の質は落ちていません。渡辺謙、池脇千鶴も脇をきっちりと固めていて○。この人たちが出ると映画に説得力が増す印象。 ゲイを演じた妻夫木聡と綾野剛が実際に一緒に生活したというだけあって本当にカップルみたいで雰囲気が良かったです。映画を見終わって心に残るのがこのふたりというのもなんとも不思議。