テーマ:気になる技術動向(1285)
カテゴリ:Technology
近頃、原油価格の高騰が続いて、指標となるWTI(West-Texas Intermediate)価格が遂に42ドル/バレルとなりました。 この3月から石油輸出国機構(OPEC)では3回合計日産350万バレルの増産枠を決めたのですが、中東情勢の不安、ロシア石油会社の経営不安もあって、供給不安を醸し出して、一向に石油価格の安定が得られず、このままでの高止まりが懸念されています。
石油の埋蔵量は約20年と言われて久しいのですが、カスピ海等次々と新しい油田が発見され、現在でもそのままの様ですから、本来的には供給不安は無いと思います。 一方、天然ガスの埋蔵量は3倍の60年と言われていますが、大陸棚にあるガス・ハイドレード(ガス水化物)の採掘が可能となれば200年は大丈夫とも言われています。しかし、主成分のメタンガスは空気中に放出されますと地球が温暖化して、二酸化炭素以上に甚大な被害があるとされていますので、確実な採掘法が必要です。 この豊富と思われる天然ガスから石油製造する「GTL-天然ガスから石油製造技術」の現状はどうなのかインターネットで調べて見ました。下記の記事は昨年のものですが、2000年当時の動向と変わりありません。イラク侵攻が起きるまでは石油価格は15 ドル/バレル程度で安定していましたので、頓挫していたのだと思います。 天然ガス等の化石燃料を転換して得られる水素と一酸化炭素の合成ガスから、ドイツ人のFranz FischerとHans Tropshが開発した合成法(FT合成)によって製造される燃料はGTL(Gas to Liquids)と呼ばれます。 硫黄分やアロマ分が殆どありませんので、硫黄酸化物(Sox)や粒子状物質(PM)、HC、COの削減を大幅に削減する上に、触媒の働きを良くすることから窒素酸化物(Nox)の排出量も大幅に削減することが期待されています。 FT合成法が発明されたのは1923年ですが、世界で実用化されているのは、南アフリカとマレーシアの2カ所に過ぎません。大きな理由は製造コストが高く、通常の石油採掘から精製して得られる軽油・ガソリン価格の倍近いコストとなってしまうからでした。 ところが、技術の進展によって、プラント自体のコストが下がり、競合する石油価格が高値で安定していることから、以前よりも経済性が高まり、GTLは大きく注目されるようになりました。費用分岐点は石油価格がバレル18ドル以上であればGTLは競合出来るとされています。 現在、世界的に軽油の硫黄分の規制値は厳しくなる方向で進んでおり、石油精製業界は、大幅な追加的投資が必要と見られていることも、GTLの経済性を尚高めることになり、本格的な導入が検討されています。 これらの追い風をもとに、産ガス国の多くでは、Royal Dutch/Shell、Exxon Mobilなどの石油大手やSyntroleum、RentechといったGTL技術開発企業が中心となってプラントの建設が計画されています。 アフリカ ナイジェリア、カメルーン、南アフリカ、アルジェリア 中東 カタール、イラン、オマーン 中南米 アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラ アジア太平洋 インドネシア、オーストラリア、ロシア、米国(アラスカ) 日本の石油会社にとっても、カタール等の産ガス国からGTLが大量に安価で供給された場合は、この燃料を輸入し、ブレンドあるいは直接販売する方法もあり、投資戦略に影響を与えるものと見られています。 又、世界各地で検討されて大規模GTLプロジェクトは、日本のエンジニアリング会社やプラントメーカーにとっては、大きなビジネスチャンスであり、各社とも受注に力を入れている。 一方、国内のエネルギー産業や商社にとっても、LNG事業同様に上流から下流まで参加していくチャンスがあり、戦略を練る段階から行動の段階にシフトしていくと見られています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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