農民画家と言われ細密描写で知られるフランドルの画家と言えばペーター・ブリューゲルで、代表作は「バベルの塔」かも知れません。
先日、ウィーン美術史美術館に所蔵される「バベルの塔(1563年)」を模型ジオラマで再現する番組が放映されていましたので、興味深く拝見しました。
ローマのコロッセオに触発されてバベルの塔として絵画化したのだろうとの推測は納得させられましたし、王侯貴族と庶民業者の主従関係、全く意に介さない職人達、それでも仕上げられて行く塔の建築、背景にはブリューゲルの棲んだブリュッセル風景を見事に融和させている様子の細密描写は、模型ジオラマでは再現出来ないことがはっきりと分かりました。
彼のもう一つの「バベルの塔」は、生誕地フランドルに残され、オランダのロッテルダム市ボイスマン美術館に所蔵されています。
完成間近なバベルの塔には、不吉な暗雲が掛っていて、人類の結束は破局する運命を暗示している様子は不気味です。
ロッテルダムのバベルの塔
ブリューゲルの「バベルの塔」の絵がある部屋には誰もおらず、ひっそりとしていたのには吃驚しました。
ものすごい細密画で、人が又骸骨人間もいたと思うのですが、一心不乱に建設に従事している様子が描かれていたのです。
この時から間を置かず、従事した人々は飛散しバベルの塔は打ち捨てられるのですが、ブリューゲルはそれを暗雲として塔の上に漂わせ暗示しているは見事でした。