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カテゴリ:経済問題
政治家が触れない財政問題
巷では(というか多くのマスコミは)軽減税率のことばかりを話題にしているが、もともと税収が足りないからということで消費税を上げたにもかかわらず、その「痛税感」を緩和するためだの、低所得者を救済するためだのという綺麗事のために軽減税率を導入するというのは、実際の小売等の現場でいたずらに課税処理の事務量を複雑かつ膨大にするだけで、軽減した税額以上に社会的コストを増加させて殆ど何のメリットもないのではないかと危惧している。 そんなに増税がダメならば、そもそも消費税を上げなければいいのだから、公約を撤回して消費税を据え置きにすればいいではないか。 また、そんなに低所得者への援助が必要であれば、一定の給与水準以下の世帯には給付金を支給するほうが、よっぽど制度としてスッキリしている(すなわち、消費増税でしっかり課税し、給付金できちんと支出するほうが制度として優れているだろう)。 大蔵省の主税局に在籍経験のある片山さつき議員によれば、現行法においては、給付金は低所得者間に格差があっても一律にしか支給できないのでそれでは不十分なのだというような説明をしていたが、その法律を変更する議論をすることは重要な政治家の仕事のはずだ。 今回の軽減税率が導入されると、例えば、 マクドナルドの店内でハンバーガーを食べると外食になるので軽減税率の対象とはならないが、 マクドナルドの店外にテイクアウト(あるいは宅配)にすると食料品となって軽減税率の対象となるんだそうだ。 こんなバカげた制度を導入して現場を混乱させて、一体何の意味があるのだろうか。 そんなこともあって、俺は「軽減税率の導入を懸念するアカデミア有志による声明」というのに賛同しておいた。 それにしても、もっと重要な財政の基本問題が語られていないのは、政治家(及び官僚)が意図的に触れないようにしているとしか思えないのだが、下記の図のように、日本財政の構造的問題は社会保障費の支出がずっと税収を上回っている状態だということであり、この不足分を穴埋めするために借金をし続けているということなのだ。 図では青または緑のラインが税収を表しているが、紫の棒グラフは社会保障費の支出を表している。 (統計の出所が違うので青と緑のラインとでは若干額が異なっているがどちらも税収を表している。) 財政全体の合計金額は赤のラインだが、これと青の差額は国債(水色の棒グラフ)+雑収入等ということを意味している。 つまり、既に1999年辺りから、税収と社会保障支出は逆転した関係になっていて、15年以上も赤字の状態が続きそれを国債という借金で補てんしているということなのだ。 国債という借金は、将来世代(我々の子供、孫、ひ孫等の世代)への増税と同じだ。 この問題を解決するには、 (1)税収を増やすように今課税する (2)社会保障費を減らす (3)その両方をやる のいずれかしかない。 どの選択も相応の負担という痛みを伴うものばかりだが、少子高齢化が極端に進む日本においては避けられない道ではないか。 この負担を将来世代に先送りして、自分達だけ豊かな暮らしを享受している状況は、もっとよく考えてみる必要があるだろう。 この問題こそが日本財政の本丸であるはずなのに、落選を恐れる政治家はこの問題を正面から議論しようとしないかのように見える。 もしそうだとしたら、彼等はもはや政治家などではなく、議員報酬とプチ権力の獲得を目指すだけのただの選挙ゴロではないか。 ご賛同頂けるならクリックをお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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