koalaの部屋

母がお世話になっていた緩和ケア病棟の担当看護婦さんから
封書のお手紙が届きました。
そういえば、父の時も、母の元にお手紙が届きましたし、
長男はこの緩和ケアに続いている総合病院で生まれた後、
退院前に少し入院していましたけれど、
その時も、担当の看護婦さんからお手紙が届きました。
患者の家族を励ます使命を考えての決まりごとなのでしょう。

父と長男の時は、写真も同封されていました。
母のときは、私が早めに緩和ケア病棟にご挨拶に伺ったので、
その時写真を手渡ししていただきました。
今回のお手紙はこういう内容でした。（○○は母の名です）

拝啓
春色の和やかな季節、いかがお過ごしですか。
私たちは、日々感謝様のお世話をさせて頂いています。
ご家族の皆様におかれましては、いかがお過ごしですか。
皆様の悲しみが癒されるまでには、
まだまだ時間が必要なのかもしれませんね。
○○様の人生の大切な時間をともに過ごさせて頂いたことは、
私たちにとって大切な思い出となっております。
○○様のそばには、いつも娘さんが寄り添ってくださり、
いつも安心して過ごされていました。
訪室するとニコッと笑顔を見せてくださり、
私たちのほうが癒しをいただいたように思います。
○○様がお亡くなりになって３ヶ月が経ちますが、
体調を崩しやすい時期です。
どうぞお体をご自愛ください。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬具

追伸　　もし悲しみのために元気が出ない時、
緩和ケア病棟又は悲しみについて話せる場所へ
出かけてみて下さい。
私たちはいつでもお待ちしています。


百ヶ日法要が終わる頃は、悲しみの節目かもしれません。
その時期に、遺族にこういうお手紙を直筆で書いて送るのですね。
緩和ケア病棟には、ボランティアの方がいらっしゃいます。
母のときは「いかがですか？」と勧められ、
お部屋のお花のサービスを受けていました。
季節のお花が入った花瓶を部屋まで持ってきてくださり、
時々交換にきてくださる、無料のサービスでした。

談話室のソファに座った時、ボランティアの方が在室だと、
お茶とお茶菓子が出されました。
また緩和ケア内にはそこかしこに花瓶がありお花がありました。
悲しみが癒えずに苦しんでいらっしゃるとしたら、
ボランティアの立場に立つことで、救われることも、
あるのかもしれないと思いました。
自分がかつて味わった悲しみを、今味わっている方たちに、
ほんの少しの安らぎでも与えてあげる事が出来るのですから。

私自身にとっては、緩和ケアへ出かけるのは辛いことです。
そこでの母は、抹茶アイスを食べてくれたりもしましたが、
点滴を何度も刺し直し、真っ黒なものを吐いていました。
緩和ケアには、母の苦しみや痛みがシャボン玉のようになって、
ふわふわ漂っている感覚が、私にはあります。

逆に、母との楽しい思い出のある場所に出かけると、
お花がきれいだとか、これを食べましょうよとか、
弾んだ母の気持ちが、シャボン玉のように漂っている気がして、
母の楽しかった気持ちをなぞり、心の中で、
母に話しかけたりすることで救われます。

母が亡くなる前も、亡くなった後も、たくさんの方たちが、
緩和ケアで亡くなっていらっしゃることでしょう。
亡くなった方たちの何倍もの数の遺族の方たちが、
苦しみにのたうつ経験をされたことでしょう。

亡くなった方たちが、天国で安らいでいますように。
ご遺族の方々が、どんな形であれ、癒されていますように。
緩和ケアで働いてくださっているスタッフの皆さんが、
元気を失わずに、輝いていてくださいますように。
お手紙を下さった担当看護婦さん、ありがとうございました。