昨日土曜日はアフリカ・ビジネス・カンファレンス(http://hbsafricaconference.org/2007/)に出席してきた。
HBSのアフリカ人学生が主催して、全米からアフリカ人学生やビジネスパーソンたちが集まってくるかなりPowerfulなカンファレンスだ。
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カンファレンスのテーマは、「Africa – Open for Business: Integrating Africa into the Global Economy」
アフリカの民間セクターを今後どうやって振興させ、いかに世界経済の中のプレーヤーとしての存在感を高めるか、そしてビジネスを振興することで最終的にアフリカの経済発展と貧困問題解決にどういうインパクトを及ぼすことができるか、ということについて、アフリカにおけるビジネスの第一人者たちが話し合う。
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オープニングのKey Note Speakerは、新興国向けプライベートエクイティActis社(http://www.act.is/index.asp)の、西アフリカ地域代表を務めるSimon Harfordさんという方。
若いころアフリカを旅してアフリカの人々や文化の虜になり、以降バージン航空のナイジェリア部門を立ち上がるなどのアフリカビジネスを手がける。
その後Actisにヘッドハンティングされ、主にナイジェリアを中心に投資を行っているそうだ。
ナイジェリアというと個人的にはサッカーのイメージしかなかったが、サブサハラの国々では、南アフリカに続く経済大国だそうだ。
政府も投資環境の改善に力を入れており、財政政策の引き締め、金融セクターの構造改革(それまでは銀行が乱立していたが、本当に信用のある銀行数社に統合)などを実施。その結果、海外投資家の信頼度も高まって、ナイジェリアへの海外資本の流入額はこの2年間で30億ドルから60億ドルに倍増したそうだ。国内のビジネスも着実に育っている。2025年までに韓国やイタリアを抜いて世界の経済大国Top20入りするだろうという予想もある(注1)そうだ。
Actisもその流れの中で、リターンをあげつつあり、ここ数年のCash-on-Cashは2倍以上とのことだそうだ(何年で2倍になったか明確にいってなかったのでIRRはわからないが)
だから、アフリカというと戦争・貧困・飢餓というネガティブなイメージだけを持たずに、ビジネス・チャンスという視点でも見てほしい、と強調していた。
そのあと、Harford氏は、国連前事務総長のアナン氏の、「It is absence of business which creates suffer (貧困などの苦しみを生んでいるのはビジネスセクターの弱さだ)」という言葉を紹介した。
アフリカの経済発展にはビジネスの役割は欠かせないと思っているし、プライベート・エクイティ投資家として、”Capital with Strength and Value-added”をアフリカに植えていければいいと思う。Capital with Strength and Value-addedとは、ただのseed moneyではなく、企業へのガバナンス強化や一流のマネジメント手法の導入を促進するCapitalだ。自分が投資するCapitalはそういう志をもったCapitalなので、本質的に成長を遂げると思う企業にしか投資しないし、先進国のプライベート・エクイティがやっているようなLBO手法はとらない。”Capital with Strength and Value-added”の注入を通して、アフリカの経済を強くしていくことに貢献できれば、投資家としてはなによりの幸せだ。
ここにいるビジネスパーソンたちも、どうやってアフリカを世界経済に統合していくか、一人一人考えてみてほしい。
アフリカは変わりつつある。ただ傍観者として見ているよりも、そこへ飛び込んでみたほうがきっと面白いと思う。
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その後、「アフリカのプライベート・エクイティとベンチャー・キャピタルの現状」というパネルに出席してきた。
4人の投資家(西洋人)と、南アフリカの投資銀行のバンカー(アフリカ人)が、アフリカを投資家にとってもっと魅力的な大陸にするために、なにをすべきか、ということを話し合っていた。
主に討議されていたトピックは、「Track Recordが少なくFund Raisingが困難」、「Exitの機会が少ない」、「マネジメント候補の人材不足」、「現状は、ナイジェリアやガーナなどある程度しっかりした国にしか投資できない。投資の裾野をどうやって広げるか」、「最近中国がアフリカ投資(主に資源系)にやたら力をいれているが、PE市場にも今後入ってくるか?」などなど。
現状投資している国の政治リスクの話はあまり出てこなかった。4人ともある程度民間セクターが強くなれば、政府はあまり無茶なことはできないと信じているようだ。
いろいろ聞きながら、こういう途上国投資の一番のエキスパートはこういう新興の投資家たちじゃなくて、実は日本の商社かもしれないなあ、と思いました。
ちょっと回りの商社の方々に話を聞いてみようと思います。
このほかに「アフリカの資本市場の行方」というパネルも面白かったです。
ナイジェリアの銀行が、サブサハラの企業としては初めて国の保証なしで3億ドルをユーロの債券市場で調達した話、Zenith Capitalという投資銀行がアメリカ在住のアフリカ人バンカーたちを引き抜いてサブサハラ企業向けの投資銀行サービスを強化しはじめたり、IFCのアフリカの住宅ローン市場強化策、資本市場は規模が大事だからサブサハラの統合市場を設立してはどうか、などなど、いろんな話が出てきました。
資本市場の整備は国家の重要なインフラだ!と信じながら働いているアフリカの金融人たちの熱い思いが伝わってきました。
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午後一番のKey Note Speakerは、ナンシー・ベリー(元Women’s World Banking総裁)、ジェニファー・リリア(Kenya Women Finance Trust CEO)という女性向けマイクロ・ファイナンスの大御所の対談。
結局二人の対談のメッセージは、
「Africans, GO HOME!」
![ABC Key Note](https://image.space.rakuten.co.jp/lg01/29/0000293929/61/img2db81053zikbzj.jpeg)
アフリカでマイクロファイナンスに関わっているリーダーたちの多くは若い白人の人たち。
そして、経済援助のプロジェクト予算の80%は外人コンサルタントに落ちて、20%しか現地の人に落ちない。
アフリカのビジネスの成長を妨げる要因は、現地のリーダー不足。もし、1000人、アフリカ人の有力ビジネスリーダーが出てこれば、アフリカは必ず変わる。
この講演会場には何百人ものアフリカ出身者がいる。
だから、卒業後、マッキンゼーやゴールドマン・サックスにいくのはやめなさい!(会場爆笑)
アフリカに帰りなさい。
そうすると、一人の女の子が手を挙げて、
「私はケニア出身です。ケニアは大好きだけど、死ぬ気でアメリカで勉強したんだから、やっぱり金銭的なリターンが欲しいわ!」
という質問をして、喧々諤々の議論になったり、なかなか面白かった。
でも、「Africans, GO HOME!」は本質をついているよなあ。
僕も、就職活動で途上国で何かできないかと探しているけれど、やはり外人だとvalue-addedが限られてくる。
やれるとしても、援助資金集めや、投資活動みたいなことになってしまうけど、結局主役は現地の人たちだもんな。
自分のキャリアプランも含めて、いろいろ考えさせられたカンファレンスでした。
注1)ゴールドマン・サックス経済調査部予想によるそうな。