期待して買った本が面白くなかった.....
イロイロ読んでるとそういうことは残念ながら間々あります。
しかしながら今回の本は期待通りに
面白かった!
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう
山本巧次
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ
山本巧次
さてタイトルだけ見ると江戸の世界で科学的な捜査をするというふうに思えなくもない。
当時の技術で科学的な捜査といっても今と比べればたかがしれてます。
表紙絵をマジマジと眺めると、どういう内容なのか見えてくるものがあります。
なにしろヒロインが着物を着てスタンガンを持ってるので(笑)
ヒロインの おゆう こと関口優佳は祖母から相続した東京の古民家の隠し部屋から江戸の昔と現在の東京を行ったり来たりの生活をします。
隠し部屋がタイムトンネルになってるらしく行き来は自由。
アラサーのOLなんですけど現在の化粧品や食生活なんかのおかげで江戸の世界では実年齢よりも若く見られ謎の美人ということになってます。
食生活というか栄養状態で見た目ってかなり違ってきますよね。
南町奉行所の同心・鵜飼伝三郎と一緒に江戸の町で起こる事件を解決していくんですが、昔では不可能だった現在科学を駆使して証拠品を分析し、その結果を持ち帰って江戸時代でも違和感のない証拠として翻訳てきな作業をする。
そんなことができるなら誰でも名探偵になれそうですが、ではどうやって科学分析するのか?ってことが普通は問題になってきます。
既存の機関で検査してもらうにも理由は必要ですしけっこうな料金も請求されます。それに指紋の照合や血の付いた証拠品の検査なんて犯罪臭のする品物は分析してもらうまでもなく通報されそうです。
しかし優佳には心強い味方がいます。
というか、それは都合が良すぎるだろ!って思わず突っ込みたくなるような設定です。
高校の同級生で学生時代から分析マニアで今はそれを職業にして飯を食ってる宇田川という存在がこの物語ではかなり重要です。警察からの依頼で証拠品を分析するような会社の偉い人ですけど、仕事して当たり前のものを検査する日々が面白くなく、優佳が持ち込む江戸時代の品物を検査するのが面白くて仕方がない変人です。
どこから持ってきたのか?何のために調べるのか?そういうことには一切触れず、料金を請求することもなく趣味全開で嬉々として分析する。
宇田川の存在なくして物語は成り立たないぐらいの重要人物なんですけど優佳の宇田川に対する扱いはかなり雑です。お互いに男女としての興味がないからといってそれはあんまり感心できねぇーなという態度なんですけど利害は一致してるので問題が無いといえば問題が無い。しかし宇田川は性格的には難有りですけど頭は良いので、優佳が持ち込む品物の数々を分析した結果から江戸時代と現在を行き来しているというのを察します。
が、別に優佳に対して態度を変えるわけでもなく何をするわけでもない。
とまあそんな感じのキャラです。
優佳に都合の良い部分がかなりありますけど、だからこその面白さがたまりません。
物語は薬種問屋の道楽息子が殺されるところから始まり、江戸の薬種業界を通り越して江戸に住む人々全体にも影響する可能性のある大きな事件に発展していくんですけど
時代劇でよく見かける
「お主も悪よのう www」
「いえいえお代官様こそ www」
というのに近いやりとりもしっかりとあり、いかにもな時代モノにもなってます。
優佳が想いをよせてる南町奉行所同心・鵜飼伝三郎との関係にも面白いものがあります。
伝三郎にもかなり重大な秘密があり、それによって優佳の正体に薄々気付きはじめてるんですけど、そこは深く追求することなくお互いに想いあってます。でもそれが原因で深い関係になりそうでなれない。そういう関係になりそうな時にかぎって誰かがタイミング悪く訪ねてきたり。
とりあえずは微妙な関係のまま次巻に続くようです。
SFでミステリーで時代モノ。
SFで時代モノとか時代モノでミステリーとういのは今までにも何作か読みましたけど、その三つがそろっててしかも面白いというのはなかなかないかもしれないです。
というわけで一緒に買った続編の「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤」に期待するところ大です。絶対に面白いことだけは間違いがなさそうです。