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「遊び」と「学び」の交差点

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2012年10月17日
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カテゴリ:言葉
今まで室町時代から明治時代までの「漢字」に関わる謎解きを見てきました。

今回は、さらに時代を遡って「奈良時代のことば遊び」に挑戦してみましょう。古いからと言って難しいわけではありません。

いかに古くから日本人が「言葉」そして「遊び」にこだわってきたのか、を「漢字」で感じて(下手なしゃれでお恥ずかしい)みたいと思います。


『万葉集』には「戯書」と呼ばれる「ことば遊び」が多く見られます。これは「万葉仮名」の成立と深い関係があります。


mannyousyuu

(西本願寺本『万葉集』複製 「万葉仮名」は漢字の羅列です)


奈良時代以前、日本語を表す文字が出来ていなかったため、古代の日本人は、中国から輸入した「漢字の読み方(音や訓)」を工夫して、日本語を書き記していました。
例えば「山」のことを『万葉集』では「八万・也末・野麻」、『古事記』では「山・夜麻」と表記しています。こうした表記法は、特に万葉集において発達し、「万葉仮名」と呼ばれています。

早くも、そこに「ことば遊び」が見られます。
例えば、「恋」を表記するのに、「古非」「古比」とあるだけでなく、「孤悲」の字を用いた例がかなりあります。
このように、漢字の音だけでなく意味を考えて表記する試みが随所に見られ、今日の「当て字」に近い(「倶楽部」「目出度い」「型録」など)、すぐれた言語感覚による「仮名遊び」と言えます。

こうした、
「戯れ〈たわむれ〉」を意図した「万葉仮名の用字法」を「戯書」(戯訓)
と呼び慣わしています。

以下、いくつか面白い「戯書」を見てみましょう。


(い)「毎見 恋者雖益 色二山上復有山者 一可知美」(巻九・1787)

(訓み下し)「見るごとに 恋はまされど 色に出でば 人知りぬべみ」
 
 *「人知りぬべみ」…他人に知られるに違いないだろうから

「山上復有山」を「出で」と読ませています。この謎を解いて下さい。


(答え)「山上復有山」を訓で読むと「山の上に復た山あり」です。「山」の上に「山」を載せると「出」となる、「出」の漢字を分解した「ことば遊び」です。

いかがですか。万葉人もしゃれたクイズを思いついたものです。


(ろ)「居名之湖尓 舟泊左右手」(巻七・1189)

(訓み下し)「猪名(いな)の湊(みなと)に 船泊(は)つるまで」

「左右手」を「まで」と読ませています。この謎を解いて下さい。


(答え)「ま」=「真」で「完全なもの」。「左右手(両手)」で「真手」となるわけです。普段から両手で何かすることを「真手(まで)」と言っていたのでしょう。それを「~するまで」という助詞の用法に当てはめたのです。

これも読む人への挑戦、クイズだったのでしょう。他にも、「諸手」「二手」で「まで」と読ませています。


(は)「若草乃 新手枕乎 巻始而 夜哉将間 二八十一不在国」(巻十一・2542)

(訓み下し)「若草の 新手枕を 枕き初めて 夜をや隔てむ (に  )あらなくに」

今度は(に  )に入る読み方を考えてみて下さい。


(答え)正解は「憎く」です。「夜をや隔てむ 憎くあらなくに」〈どうして夜を隔てられようか。あなたが憎いわけでもないのに〉という意味です。
「二」=「に」、次の「八十一」を「くく」と読ませています。言うまでもなく「九九=八十一」のかけ算です。


こうした「漢数字を使った戯書」は多く見られます。
他には、「猪(しし)」を「十六」で表すもの、「三五月」を「望月(満月)=十五夜」と読ませるものがあります。


(に)「東 野炎 立所見而 反見為者 月西渡」(巻一・四八)

(訓み下し)「東(ひむがし)の野に 炎(かぎろひ)の 立つ見えて かへり見すれば 月〔 五文字 〕

有名な柿本人麻呂の歌です。

「月西渡」を何と読んでいましたか?


(答え)恐らく「月傾(かたぶ)きぬ」と覚えていた方が多いでしょう。賀茂真淵が読んだ訓で、月が「西へ渡る」を「傾く」と読むセンスは「さすが」という感じですが、この読み方、「なおも問題あり」で専門家は「暫定的な読み」と考えているようです。

 まだまだ『万葉集』も読めていない歌が何首もあります。万葉人が残した「謎解き」解明すべき課題はまだまだ残されています。


少し「漢字でことば遊び」からずれたので、最後は漢字の「音」を使った「戯書」へと戻りましょう。


(ほ)「馬声蜂音石花蜘蛛荒鹿 異母二不相而」(巻十二・2991)

(訓み下し)「いぶせくもあるか 妹(いも)に逢はずして」

 *「いぶせく」…心が晴れない 「妹」…いとしい妻、恋人

なぜ、「馬声蜂音石花蜘蛛荒鹿」を「いぶせくもあるか」と読めるのでしょうか。どこをどう読むかを分解して当てはめて下さい。


(答え)「馬声」=「イ」/「蜂音」=「ブ」/「石花」=「セ」/「蜘蛛」=「クモ」/「荒鹿」=「アルカ」と分けて読みます。
つまり、「イブ」に「馬声蜂音」の擬音を当てた「ことば遊び」です。奈良時代にあっては、馬のいななきを「イ」「イイン」と聞いていたらしいです。蜂の羽音は「ブブブ…」でしょう。

当時の「音」の感覚がわかる便利な「万葉仮名」です。なお、この一句を「すべて動物につながる漢字」で表記してあるのも、万葉人の「遊び心」と言えるでしょう。また、「妹」を「異母」と表記しているのも意味深な感じです。

さすがに、古代の文献は意味をとるだけでも骨が折れます。だからこそ、古い日本語の、ひいては昔の日本人の「文字への思い」「言葉へのこだわり」を感じ取る歴史的な意義があると言るでしょう。

ご参考に、国語学者橋本進吉博士の「駒のいななき」という文章『青空文庫』(無料)で公開されています。短い文章なので、興味ある方は是非御覧下さい。


〈参考〉書き出し

「兵馬の権」とか「弓馬の家」とかいう語もあるほど、遠い昔から軍事の要具とせられている勇ましい馬の鳴声は、「お馬ヒンヒン」という通り詞にあるとおり、昔からヒンヒンときまっていたように思われるが、ずっと古い時代に溯ると案外そうでなかったらしい。『万葉集』巻十二に「いぶせくも」という語を「馬声蜂音石花蜘」と(イブセクモ)書いてあって、「馬声」をイに宛て、「蜂音」をブに宛てたのをみれば、当時の人々は、蜂の飛ぶ音をブと聞いたと共に、馬の鳴声をイの音で表わしていたのである。…(以下略)…



「駒のいななき」『青空文庫』へのリンク





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Last updated  2012年10月17日 20時22分11秒
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