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カテゴリ:教育
最近話題になっているデータがあります。
芳沢光雄氏(桜美林大学リベラルアーツ学群教授)による、高校生の「論述の力」が低下しているとの指摘があります。 『読売新聞』「論点」(2013年5月28日)の記事から引用します。 芳沢氏は、現在の大学入試において、「早すぎる合否の問題」を指摘します。熱心な高校の教員ほど、この問題に悩んでいるといいます。 つまり、「推薦入試かAO入試、マークシート形式の回答だけで入学する大学生は約7割に達し、学力低下を助長すると懸念されている」からです。 しかし、「大学側は、早い段階での学生確保のため改革に消極的であり、思い切った入試改革に踏み切れない」そうです。 そこで、芳沢氏は、今、入試改革に必要なことは、 法体系や制度が異なる海外の人々の理解を得るために、客観的な数字などを用いて論理的に説明する論述力である。 と訴えます。 特に、マークシート形式について(芳沢氏の専門である)「数学では、問題を解くプロセスを考慮せずに、答えを素早く当てる技術を身につける状況になっている。これでは論述力が育まれない。」と指摘します。 そこで、問題のデータです。 一昨年に日本数学会が日本の大学生約6000人に対して実施した「大学生数学基本調査」によると(昨年2月発表)、 「偶数に奇数を足すと必ず奇数になることを証明せよ」という中学2年レベルの問題で、正答(ほぼ正しい準正答を含む)とされたのは、記述式入試を行った国公立の最難関大学の学生の76.9%だった。しかし、主にマークシート形式問題を実施した私立の最難関大学では、27.8%ときわめて低かったのである。 というデータがあるそうです。 要するに、「大学入試が論述式に改革されない限り、学生は暗記に頼って答えを当てようとし、自らきちんと考えて説明することを大切にする意識をもつことは難しいだろう」と芳沢氏は考えています。 ちなみに、芳沢氏の勤務する大学では、今年2月に行われた一般入試3日目のみ数学問題を全問マークシート形式から全問記述式に改めたそうです。 学力に関して、「論述の力」は必要であり、暗記に頼るだけの頭や、数字を組み合わせるだけの能力に優る大切な能力であるのかも知れません。 しかし、マークシートが学力低下の元凶で、入試問題を記述式にすれば「論述の力」は身に付くのでしょうか? むしろ、ここから先が重要である気がします。 先の、小学校への英語教育本格導入の話題で、「英語の表現力」とともに、「表現する内容」を意識することの重要性を説く論者がいました。 私も全くの同意見です。「道具」としての英語を身につけると同時に、英語で表現したい内容を充実させることも大切です。 マークシートも同様の問題を含んでいるのではないでしょうか。 学問をする上で、「知識」と「考え」をバランス良く使いこなせる能力が求められます。大学入学に当たって、論述ばかりでなく、ある程度必要な知識を身につけて学問の準備が出来ているかを問うことも必要です。 「論述する力」とは、まず知識があり、その上で問題を考えて判断し、表現する力を言うものだと思っています。 マークシートを論述問題中心に「入試改革」を行ったとしても、正しい知識に基づく思考力や判断力を問う内容でなければ、「学問する力」に結びつくものとはなりません。 今、新しい学習指導要領による新教育課程では、「思考力」「判断力」「表現力」がキーワードとされています。 そのためには、正しい知識に基づく「構想力」が求められます。 中学生や高校生に、いきなり「論述する力」を求めても、おざなりな作文しか書けないのは当然です。 世の中の現象や歴史など、社会科学や人文科学の知識や考え方を教養として身につけて、どんな構想に基づいて考え、判断し、表現するのか、その道筋をたどり内容を深めていくことが大切だと思います。 「論述力」を身につけていくためには、まずは「構想する力」を育てるための教養を意識した勉強が必要なのではないでしょうか。 では「構想力」とは何か、が現実的な問題になります。 結局、一番大切なことは「何事にも深く考えること」「常に頭を働かせること」に落ち着く気がします。 「学力低下」が「論述力」によって解消されるとは思えません。 基本の「知識」はしっかり身につけ、「考えて構想する力」によって「表現する楽しさ」を味わうことが出来れば、理想に近いのではないかと思うのですが。具体的には難しいところでしょう。 データに基づき「論述式の試験」が増えることは方向性としては良いことだと思います。 しかし、問題は「いかにして論述力」を身につけるか、そのための「思考力」「判断力」「表現力」を育てる過程を用意すること。そして各自が「構想力」をしっかり確立していくことも大切なことと言えるのです。 何となく「言葉遊び」のような「~力」だらけになってしまいました。やはり、教育論は「力」にこだわるものなのでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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