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2004年06月12日
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カテゴリ:欧州
今日の午前に読み了えた本。
堀米庸三、木村尚三郎(編) 『西欧精神の探求~革新の十二世紀』。

私が持っているのは、2001年に出版されたNHKライブラリー版(上下二冊)。

この本の原版である、日本放送出版からの単行本を私は持っていないし、この本の元になったNHK放送大学の番組も見たことが無い(その番組が放送された昭和49年には、私は中学生であり、その頃は、中世史よりも古代ローマ史のほうに興味があった。それになによりも、当時はテニスに明け暮れていたので、テレビは殆ど見なかった)。

さて、『西欧精神の探求』。

東京大学を退官して間もない時期の堀米庸三(直接存じているわけではない私が、「先生」や「さん」と御呼びするのも不自然ゆえ、あえて、第三者の形で、敬称略にて記す。他の研究者の方々に関しても同様)と、当時、まだ四十代であった木村尚三郎が中心になり、今野國雄、新倉俊一、今道友信、伊東俊太郎、柳宗玄、皆川達夫、そして堀越孝一(以上、執筆順)という現代の碩学たちが協力して作り上げた力作。

史学に限らず、学問というものは、それが進展するにつれて、必然的に細分化する。そして、研究者は、専攻分野(専門分野)というものを持つようになって時間が経つと、隣りの分野のこと、とくに、その最近の進歩といった点は、あまり判らなくなる。これは、自分自身のことを思いつつ、書いている。たとえば、今、「大学院生を相手に、“素粒子論に於ける最近のトピックス”というタイトルで講義をして下さい」と言われたら、ギブアップするほかない。

私が大学院生であった頃(つまり十五年から二十年ほど前)、「学際(研究)」という言葉が流行していた。つまり、異なる専門分野を持つ研究者が集まって、ひとつの対象を、多面的に研究しよう、というほどの意味であるが、これは、実に大変な作業なのである。詳しくは書かないが、例えば、同じ物質科学の分野の研究者と話していても、ある事象を別の言葉で表現していたり、逆に、同じ言葉を、別の現象に適用していたりして、最初の調整に随分と時間を要した経験がある。

延々とヨーロッパ中世史に関係の無いことを書いたのは、『西欧精神の探求』という本が成立するまでの作業は、たいへんなものであっただろうと、思えるからである。そして、この本の完成には、堀米庸三という巨人の持つ求心力が、たいへん大きな原動力であった筈だ、と改めて感ずるからである。

この本が扱っている、ヨーロッパ中世史のなかの、さまざまな局面、すなわち、農耕、都市、グレゴリウス改革、騎士道、大学、近代科学といったテーマの各々に関する記述に対しては、門外漢である私が感想などを記すことは控える。

ただし、この本は、ヨーロッパ中世史に必ずしも興味を御持ちでは無い方々にも、それから、歴史に関して書かれた本は敬遠する、といった方たちにも、御奨めしたい。

専門家たちが寄り集まって、知を結集することにより生まれた、こうした本こそが、まさに知的財産と呼ぶにふさわしいものだ、と思う。





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最終更新日  2004年06月12日 15時16分15秒
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