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カテゴリ:サーヴィスの理論と哲学
先日、テレビを見ているとあるお肉屋さんが出てました。
「ウチで扱ってる牛は穀物しか食べさせていませんから安全です。」 ええっ、それって売り文句になるのぉ? 肉骨粉とか化学物質とか使って無いという意味では安全なんでしょうが、穀物しか食べさせていないって事は、草を食べていないって事なんですよね。 牛を飼う、雌牛はCOW、ってことを、よく広い牧場で草をモシャモシャ食べてる様子を想像するんですが、肉牛、得に和牛に関してはそうじゃぁ無いんですよね。 いろいろと支障があるかも知れませんので、ちょっと専門的な用語も使って誤魔化しますが、、、 日本の和牛、大変高級な食材なんですが、日本各地で飼われているブランド牛に関してはほとんどテロワールというものの関連はありません。というのも、何処の土地で育てるかというより、血統のいい牛を選別してきて、何をどんな風に食べさせるかで品質が決まるのです。人工的による品質の良さということです。 九州や中国地方で生まれた仔牛は、雄雌を選別され、雌だけがブランド牛生産地各地へ送られます。その後、牛舎に入れられ一頭あたり10畳くらいのスペースで一生を過ごします。多分、雨にあたる事さえほとんど無いです。餌はカロリーの高い穀物が中心、大麦、小麦、トウモロコシなどでこの配合によって牛の肉質が決まってきます。それ以外は食べさせてません。緑の草を食べることはまずありません。 というのも、実は、草を食べると脂が黄色くなるからです。牛は羊や山羊と違って体内で緑黄色野菜に含まれる成分、カロテンを分解できませんから、カロテンは黄色い色となって脂にも現れます。これはフロマージュにも現れてまして、シェーブルがバッシュに比べて白いのは体内でシェーブルはカロテンを吸収してるからなんですね。バッシュの場合は吸収できないから乳の中に現れて黄色みがかかります。 フィレ肉なんかでも、白いサシがいっぱい入ったものが上質とされるんですが、フィレというのは背骨の内側にある筋肉ですから、野生の牛では筋肉中に脂が入るはずのない場所でもあるんですね。ここに脂を入れようとすると、ビタミンの一種を摂取するのを極力減らせば出来るのですが、そのため欠乏症になると脚気や失明を起こしてしまいますので、最低限は穀物飼料の中に加えられているそうです。 一方、健康にいい、体にいいという理由で大々的に宣伝をされる商品もあります。 とあるワインの輸入業者さんは「無農薬、有機栽培」の商品だけにこだわってられるのですが、ちょっと極端で、 「体に良いものだったら、美味しく無くても良いのです。無農薬、有機栽培であることが大事です。」 と、訴えていらっしゃいました。 いくら体に良くても、美味しく食べられなくっちゃ不健康ですよね。だったらアルコールなんか摂取しなければいいのに。 先日のニュースで、森 元総理のけなしたチーズが実は高級品だった。小泉総理は喜んで食べたという記事が出ていました。フランスのミモレットというの事なんですが、高級品だったから森 元総理は味の分からない人とされたんでしょうか。でも、このミモレット、本当に手作りなので、何年も洞窟みたいな所に寝かされます。何年も置いてあるので、外側に気泡みたいに穴が出来てるんですが、これって虫の喰った後なんですね。でもこれが、「自然」な形。 日本の食材で言っても、馴染みの深いカツオブシは表面にカビが取り付くことによって、あれだけ堅くなるのです。ボトリティス=シレネアに近い種類の菌だそうで、このカビが表面に取り付いて急激に水分を吸い取ってはじめてカツオブシになるのです。 もともと食文化とはこういったものだと思います。自然であるという事は、無菌室で安全に栽培されることでは無いのです。 もちろん近年ではアレルゲンなどの問題も多々出てきてはいますので、安全である事は大事です。しかし、虫眼鏡式に「体にいい」とされる成分だけを謳う事や、ことさらに危険をあおって、料理を美味しく楽しくいただけないのなら、それもまた不健康であると私は考えます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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