小児科医の冬
小児科医の冬小児科のお医者さんは、冬はとても忙しい。かぜやぜんそくの子供たちが大勢押し寄せてくるからだ。それに比べて、夏はさっぱり。「どうしてこんなに来ないのだろう?」とくびをかしげたくなるほどという。夏は少なく、冬は多い。来院しても、ほとんどが急性疾患で2,3日で回復したりする。そんな疾患数の不安定さは、小児科経営を難しくしている。小児科医の苦労は、診察の手間にもある。子供は満足に言葉が話せないので、診察のなかから症状を判断しなければならない。レントゲンを撮ろうにも動いてしまう。血管は細く、注射や点滴も一苦労。検査は最小限にしなければならない。薬を使う量は少なく、診療報酬は安い。こうした諸々の事情から、「小児科は大変」「小児をやると赤字」というのはお決まりらしい。採算がとれないことから、私立の病院は、どんどん小児を切り捨てていく傾向にある。小児科に進む新人医師の数も減っている。日本小児科学会が、大学病院と研修指定病院929施設を調べた結果、今年4月に小児科医になったのは502人。02,03年の2年間の平均と比べて15.4%減った。秋田県と富山県では今年は0人、東京は、03年に比べて73人減の89人だった。同学会では、減少の理由について、「04年に始まった新臨床研修制度を通じて、小児科の厳しさを知って避けた結果ではないか」と推測している。医師が減る一方で小児救急の需要は高い。親は、子供のちょっとした変化でも大慌てで受診させる。大半は入院の必要のない軽症患者だ。それをさばきつつ、重症患者にも対応していく能力も小児科医には求められる。悩ましい課題の多い小児医療だが、私立病院の小児離れが進むなか、公立病院への期待が膨らむことだけは言えそうだ。この文章は、ある新聞のコラムの全文です。小児科医と小児医療の現状を端的に表していると思います。