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Atelier Mashenka

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2009.03.13
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カテゴリ:ウォーキング・旅

佐渡の老舗ホテルにて。
波の音を聞く。何もしない。無為の時間。

仲居さんの言っていた言葉。
「海がないと、どこへ逃げればいいかわからない、と思ってしまう」
海なし県に生まれ育った私にとっては無い感覚で、非常に興味深く感じた。
島に住む人の皮膚感覚。海のない場所での閉塞感。
私にとって海は、昔から特別な場所で"自分のもの"ではない。
むしろいざとなると、不安やとりとめなさ、危うさを感じてしまう。



佐渡でも一番の景勝地である尖閣湾は、私以外にひとりも客がいなかった。
まったくひとりで入場し、ひとりで見て回り、ひとりで写真を撮った。
寂れた感じがした。
風景は確かに素晴らしかった。
こんな景色を独り占めできるなんて!
入り組んだ湾、削られてむき出しになった岩肌、岩を洗う荒波、
何故私はこんな厳しい自然の情景にばかり心魅かれるのだろう。



















鮮やかなビリジアンの海の色が目に刺さる。
波は岩をうがち、逆巻き、白いしぶきを上げる。
岩々はそそり立ち、鋭い首先を天に向かってもたげる。
上へ上へ。
まるでイグアナかオオトカゲが天を向いているように見える。
オオトカゲの群れたち。

岩々に囲まれたときのあの感じを何と言えばいいのだろう?
岩、岩、岩。
固く荒々しくそびえ、へだて、遮断する。断絶する。
その感覚はある種、ざわざわと不穏な不安なものでもあるが、
どこか嫌いではない、とも思ってしまう自分がいる。
よく知っている馴染み深い感覚。
何からへだてられ、遮断され、断絶されているというのだろう。


バスの乗り継ぎで降り立った相川の街。
次のバスの時間までほんの短い時間歩いても
ふと辿り着くのは、昔の牢と刑場のあった場所だったりして、
何故そうしたところに行き着いてしまうのか、自分でも不思議だ。
他に遊郭や寺や古い建築物などへ行く道もあるのに。

そこで"土壇場"という言葉は、刑執行の場を表す言葉だと始めて知った。
土壇場。すさまじい言葉だ。


路線バスに1時間揺られて港に戻る。
太宰治の短編小説「佐渡」は、ユーモアにあふれ、
じんわりと寂れた感じが漂う佳作で、幾度となく読んだものだが、
"死ぬほど淋しいところ"とか"佐渡には何も無い"とか
"旅行に来るところではない"などと書かれていながらも
それを味わいに行きたくなるのが不思議だ。


ブルーグレーの海。ブルーグレーの空。
船で佐渡を後にした。

過去の自分に呼ばれ、過去にとらわれながらも
強く感じたのはむしろ今の自分、だった。
それは過去の肯定が前提にある。
そして今回のとりとめないひとり旅も、
やがて1つの体験、1つの思い出として確定するだろう。






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Last updated  2017.02.14 20:26:35
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一村雨@ Re:生誕120年 棟方志功展(11/12) お久しぶりです。 この展覧会、棟方志功の…
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