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カテゴリ:恋愛小説
ちぎれた夕陽 (9)
生き残ってる人は、頭を使ってたように思うよ・・・度胸不足を頭で補うっての?そんな感じだよ あんたも、生き残るタイプだと思うけど・・・」
そういうところ、マキは決して見逃さない。
「ん? そうだ、確かに運はある・・・ぜったいにある。マキって記憶力いいねぇ・・・」
「ふん!おだてたって何も出ないよッ!いいから、少し寝てなよ、あたしが起こしてやるからさ・・・」 「いやいや・・・マキが起こしてくれなくても、朝になりゃ、原付チャリンコ部隊が、ヴィーンって やって来るだろ・・・」
「ひでぇ奴、後輩のこと忘れてやんの」
寝息が顔にかかる、ってこういうことなのか・・・新たな発見が重なる。 (そうやって目も口も閉じてると、可愛いいだけだな、マキ・・・) そっと起き上がり、マキを跨いでベッドを下りた。佑は寝付くまで何度も寝返りを打つ、 そうしないと眠れない性質なのだ。
音を立てないように、カーテンを引く。押入れを使い易くするために、襖は外してある。
佑はテーブルを部屋の隅に置き、冬用の敷き布団と毛布をカーペットの上に敷いて 横になった。
佑のベッドを独り占めしている"いばら姫"は、すでに熟睡中で、時々表から酔っ払いの下手な歌声 が聞こえてくるが 俺の"いばら姫"は大物だ、寝息はさらに大きくなり、酔っ払いを威嚇しているようにも聞こえる。
このアパートの住人たちにも安息が訪れたようだ・・・・・
今朝の風は、南から北向きに吹いているようで 京王線の電車の音が、随分近くに聞こえてきた。
(始発かぁ・・・)
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