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2013.02.22
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カテゴリ:恋愛小説
           ちぎれた夕陽 (8)


煙草をくわえ、ポケットから使い古したジッポーを取り出す佑。

それは遠洋航海で世界の海を見てきた叔父のものだった。

陸に上がると決めた時に


「お前にやる。世界の海と港を見てきた、俺の相棒だ」


そう言って譲ってくれた、佑の宝物だ。

片手に持ち、キンッ!リッド(キャップ)を撥ね上げる。続いて

フリントホィールを親指で回す。ボゥッ!と炎が立ち上がり、煙草に火を点ける。

パキン!と リッドを閉じて、美味そうに吸った煙を吐き出す。 

そこまで待ってやるのがマキの限界だった。


「あのなあ!・・・」

「俺はなあ、マキ・・・」 

「なんなのさ!あたしの話しはまだ・・・」

「聞けよ・・・」


強い口調ではなかったが、佑が今まで見せたことの無い顔になった。

(今、逆らうと・・・嫌われるな・・・)マキの直感がそう告げていた。

(このまま、嫌われてたまるかよ・・・)

「ふん、わかったよ、聞いてやるよ!・・・」 


面白くなさそうに、それでも答えを聞きたかったマキは、

壁にもたれ、腕を組んだまま、佑を睨みつける。


「俺は、漁師町で生まれた・・・小さな漁船てのはさぁ、波をかぶると・・・
くみ出しても、くみ出しても、追いつかない・・・波の上の葉っぱみたいなんだよ」


マキは佑から目をそらすことなく、彼の煙草に手を伸ばした。

普段はまったく煙草を吸わないのだが、イライラして落ち着かない時だけは、

自分のため、周りに居る人のため、そんな時だけ愛煙家になる。

勿論、佑は、それを知ってるから、何も言わずジッポーを渡す。


「それで・・・」 マキが自分を抑えている・・・聞くから全部、そう告げているのだ。

長く細い人差し指と中指の間に煙草をはさみ、おとなしく、佑が口を開くのを待っている。


「俺が生まれ育った町は、漁業が中心でね、おまけに元々昔は海賊だった連中が漁師に
転業して、住みついたらしい。俺が中三の頃までは随分荒れててさ、漁師だけじゃなく
町全体が荒れてたんだ。

怖かったな・・・気の短いのが、些細なことで喧嘩をはじめやがる。
そんなだから、普段でも口の利き方ひとつ間違うと・・・それだけで人が怪我したり、
死んだりした・・・それがそれほど珍しくない町だった」


「けっこう、ヤバそうじゃん」 (なんか今日って肝心な返事もらえそうにないな・・・)

「『じゃん』って、お前、浜っ子か?」

「うるせえよ・・・」


そう言うとマキは、もったいないくらい長く残した煙草の先を

灰皿に押し付けながら火を消した。

佑の仲間内では、それを「見栄モク」と呼んでいる。


「まあ、港町もそうだろうけど、炭鉱の町とかも、危なかったって聞くけどね」

「それ・・・聞いたことあるよ。でさぁ、そういう所で育ったせいなのかな・・・
それと・・・危ない場面を、不思議に何度も切り抜けて来れたせいなのか・・・
考え過ぎてしまう・・・決断できない時がある・・・俺には、そういうところがある・・・」


「なるほどね・・・ 今日、バンドの人たちに会って、どう言えばいいか・・・

それで悩んでて、眠れないってことか・・・強かったり、弱かったり、読めない奴・・・」



「男らしくない・・・か」

「それは・・・本当のことを知らない奴の言うことだ・・・」

「ん?」



    


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最終更新日  2013.02.23 21:35:02
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