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カテゴリ:SF小説
奇跡の4B アメリア・シェーファー ウェールズ国王が、「聖なる森」の中の池にあの方程式をプリントした数枚の紙を入れようとしたその時! 「待って!国王陛下!私を置いて行くのー!」 よく通る女性の声が森の入り口の方向から聞こえてきた。 ウェ―ルズ国王は、振り返りながら声の主が誰であるか思い出した。同時に(しまった!という顔をした後に苦笑いを浮かべて) 「アメリア・・・ああ、すまない・・・私としたことが・・・」 アメリアは、ドレスの裾を少し持ち上げた格好で足早に国王に近づく。 だが礼儀をわきまえていて、国王に後3歩手前で立ち止まると、片膝を曲げて腰を低くした。 「ご機嫌よう、アメリア」 国王は笑みを浮かべてそう挨拶する決まりだ。 「そうでもございませんわ、国王陛下」 他の人なら無礼と許されない返事をして、アメリアは低くしていた腰を伸ばした。 「まあ、そんなに怒らないで、ちゃんとお前の事も書いてある」 そう言って国王は金色のタイプライターで書いた「願いの紙」を アメリアに見せた。 国王はアメリアの後ろに控える男を認めた。 「シュルツ、君が供をしてくれるのか?」 シュルツと呼ばれた男は胸に手を当て、頭を曲げお辞儀をして言う。 「左様でございます。陛下」 「それは心強い。しかし、アメリア・・・その格好・・・」 国王は、後ろを振り返った。 「そうそう、君たちにはまだ紹介していなかったね」 バッハたちを見渡して言った。 「彼女は私の姉が嫁いだシェーファー卿の娘で、アメリア・シェーファーという。私の姪にあたる」 シェーファー卿というのはフィン・シェーファー伯爵のことで、 伯爵夫人が国王の姉、ハンナ・シェーファーである。 モーツァルト侍従長は初めてではないので、頭を軽く曲げ、笑みを浮かべてお辞儀をする。 バッハたち4人は改まった面持ちで 「初めましてアメリアさま。光栄でございます」 とお辞儀をする。アメリアはそれに応えて 「私こそ、皆さんとご一緒出来て光栄ですわ」 それぞれが挨拶を交わしたところで、国王が口を開いた。 「諸君には話していなかったが、アメリアは諸君たちを偉大な作曲家として尊敬していたらしい・・・それで今回の計画をうっかり話したら、どうしても一緒に行きたいと言って聞かないのだ。どうか認めてあげて欲しい・・・」 頭こそ下げないが、国王の目が懇願している。バッハたちに嫌とは言えないではないか。 バッハはモーツァルト侍従長を見る。彼は頷いた。続いてベートーヴェン、ブルックナー、ブラームスの順に頷いたのを確認すると全員を代表して国王に向き直って言う。 「みな光栄に思っております」 国王の口から安堵の息が吐き出され、アメリアは右手で胸元を押さえて笑みを浮かべた。 満面の笑みを浮かべたウェールズ国王は、大きく頷いて「願いの紙」に思いを託す面持ちで、池の水面に一枚ずつ浮かべた。 誰が言うともなく、池の周りに全員が歩み寄り、「願いの紙」を 固唾を呑んで見守っている。 今日の好きな曲は、 アルバート・ハモンド/落ち葉のコンチェルト です。 秋だからでしょうか?思い出したら、ただ聴きたい! と選びました。 Thank you coto.pops music, for up this song. いつも応援ポチをありがとうございます。 今日もどうぞよろしくお願い致します♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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