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カテゴリ:惚れ薬
我ら、いかに貧しい境遇にあろうとも武士としての誇りを
忘れてはならぬ。 たとえ満足な食事をとれずとも、ゆうゆうと楊枝をつかう 様を他の者に対し、して見せるくらいは当然の事なのじゃ。 それをやせ我慢と人に思われようが別に構わぬではないか。 吉之助、鷹は飢えても穂を摘まず、という諺を知っておるか。 鷹は、どんなに飢えていても、カラスやスズメのように 田や畑の作物の穂をつついて食べるようなことはしない という事を言うておるのじゃ。 おぬしの、武士としての誇りなどかなぐり捨てたかのごとき 所行、恥ずかしゅうはないのか。 武士が武士たる所以(ユエン)というのは、厳しくオノレを 律し、道徳を守ることにこそあるのだぞ。 それがモノを売って隠れ喰いをすること二年とはのう・・・ ワシは殿さまに仕えつつ剣の道を極めようと決めている。 吉之助ならば学問に励むことこそ肝要なのではないのか? というような事を吉之助に夜を徹して語った八平太ですから 桑田屋喜兵衛が白髪頭を打ち震わせながら哀訴したところで 聞く耳など持ちません。 そろばん勘定の上に立つ商人と、自己犠牲的な姿勢を誇りと する武士、相寄よるものは何も無いのです。 はじめ用件を言ったきり後は無言を続ける八平太。 その前に平伏したまま泣き言を連ねていた桑田屋喜兵衛。 ハテ? このお方はワタシの話を聞いていなさるのだろうか 糠に釘を打つような手応えの無さに桑田屋喜兵衛が虚しさを ようやく覚えたその時、 「桑田屋殿のご先祖は武家であらせられたのか?」 八平太の口をついて出た唐突な問いかけが場違いな、まるで 世間話のようにしか思えずに、 『やはり何も聞いてくださってない・・・』 と、ひとり落胆しつつも何故そのような問いかけを!?と 不思議に思った桑田屋喜兵衛なのでした。 ・・・・・・・惚れ薬(四十九)四日め ランキング参加しております。 お一人、一日一回のみポチ有効ですが 応援を頂ければ嬉しゅうございます。 このお話し、こちらが第一話めとなっております。 途切れることなく続けてご覧になれます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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