|
カテゴリ:惚れ薬
おテツ夫婦の営む団子屋の近くに出来たのは、江戸でも評
判の高い菓子舗鶴田屋喜兵衛から暖簾わけした鶴屋という 店でした。 長年奉公していた者の年季が明け、その店の屋号や商標な どを使わせてもらって新たな店を開くのが暖簾わけです。 けれど、その場合は自分の店であっても経営の好き放題は 許されません。 本店の経営方針を良く理解し、その意向に従う事が第一、 半独立の言わば支店のようなものといって良いでしょう。 暖簾をくれた店の評判を落とすような真似は決して許され ないのです。 けれども新店独自の菓子を売り出すにも本店の許可が要る 代わりに、本店と同じ品揃えが許されるのですからとても 有利であることは間違いありません。 買う側にしてみればすでに定評のある鶴田屋が暖簾わけし た鶴屋の品に間違いは無いという安心感があります。 素朴で甘みも少ない、はっきり云えば垢抜けしない団子を 売っていたおテツ夫婦の団子屋、日ごとに客が減ってゆき 団子が売れ残るのも当然の成り行きと言えるでしょう。 年寄り二人なら喰うにも困らなかった団子屋稼業でしたが 今はおトメという食い扶持が増え、そこへ減収となったの ですから大変です。 名店鶴田屋の後ろだてがある鶴屋、それにたちうち出来る 才覚も資力も無い団子屋が、この苦境を乗り越えることは とても出来そうにもありません。 ・・・・・・・惚れ薬(七十二) にほんブログ村ランキング参加中 このお話し、こちらが第一話めとなっております。 途切れることなく続けてご覧になれます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|