【粗筋】
家主の幸兵衛のもとへ借家を借りたいと来た男がいる。愛想の良かった幸兵衛だが、家業が搗米屋だというと、てのひらを返したように態度が変わり、昔話を始める。妻が死んで後妻をもらったが、朝起きて仏壇を開けると先妻の位牌が裏返しになっている。気に病んだ後妻が死んでしまうが、その後隣の搗米屋が朝早くから米を搗く振動で位牌が後ろを向いていたということが分かった。
「いってみれば搗米屋は妻の仇。そこへなおれ」
「冗談じゃあない」
【成立】
「小言幸兵衛」の一部であったが、後の道行がふくらんだためにカットされた部分。(「小言幸兵衛」の項を参照のこと)
後半の心中事件と比べて面白くないので、カットされるのも納得である。古今亭志ん生(6)がここだけを取り上げているのは異色。
安永8(1779)円『金財布』の「井戸掘」には、搗き米屋は米をついて地面が下がるから貸せないという家主が、井戸掘職人には出来合いの井戸を作ってそこらに置かれては迷惑だと言う。