宮本 輝 「草原の椅子」
憲太郎50歳。取引会社社長の重蔵という親友を得てからのお互いの人生感や出会い・別れ・葛藤・そして希望と再生を描いています。・・・・・・・・・・・・・・物語の中に出て来る重要な役割を果たす圭輔君5歳。たった5年しか生きていない圭輔。よくぞ生きていてくれた圭輔。母親からの虐待により心を閉ざしてしまった圭輔君が憲太郎や重蔵など周りの大人たちによってじょじょに生きる意欲が生まれ子供らしく快活になって行く様子が丁寧に細やかに描かれています。・・・・・・・・・・・・・・上下巻と長い物語なんですが、上巻だけでまとめても良かったように思いました。長すぎる物語かなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・宮本さんの人生感が哲学のように憲太郎や重蔵のセリフから発せられています。「人生の大事に対して、感情で対処した人間は、所詮、それだけの人間でしかない。」・・・・・・・・・・・・・・・「人間は弱くて脆い。だが、不思議な強さと復元力もまた隠し持っている。そうでなくてどうして、この矛盾に満ちた人生を生き抜いて行くことができよう。」・・・・・・・・・・・・・・憲太郎・重蔵・5歳の圭輔くん・そして憲太郎の恋人になるであろう貴志子の4人で旅をする場所が「生きてかえらざる海・タクラマカン砂漠」と「世界の桃源郷・フンザ」。かなり壮大な物語になっています。