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いつも書いていることですが、人間の能力は必要に応じて目覚めるように出来ています。人間は他の動物にはない多様な能力を持っていますが、でも、生まれたばかりの赤ちゃんにはそのような能力はありません。他の動物たちと何ら変わりがありません。
大人の事情にはおかまいなく、泣きたい時には泣き、排泄したい時には排泄し、食べたい時には食べ、声を出したい時には声を出し、動きたい時には動きます。 その時点で持っているのは「人間として成長する可能性」であって、「人間としての能力」ではありません。 その「可能性」は、目覚める時期と順序と条件が決まっています。異なった時期に目覚めさせようとしても目覚めません。順序も変えることが出来ません。時期や順序は合っていても条件が整っていなければ目覚めません。 「手を使う能力」や「言葉を使う能力」が目覚める前に「考える力」を育てようとしても無理なんです。 話しかけてくれる人がいない状態で育っている子は、言葉を学ぶ時期になっても言葉を学ぶことが出来ません。 子どもの成長は、生命の働きに基づく自然現象なので社会や大人の都合には合わせてくれないのです。 幼児期には様々なものに触れ、口に入れ、匂いを嗅ぎ、動き回り、感覚の働きを目覚めさせています。この時期の子どもは生理的な本能に従って感じ、考え、行動しています。その点においては他の動物たちと何ら変わりません。 感情や、考える力や、社会性が育つのはその後の話です。 感覚や言葉の育ちが感情の育ちを支え、感覚や言葉や感情の育ちが思考力の育ちを支え、感覚や言葉や感情や思考力の育ちが、社会性の育ちを支え、そしてそれがまた感覚の育ち、言葉の育ち、感情の育ち、思考力の育ちへとフィードバックしていくのです。 また、この時期の子どもは周囲にいる人間、特にお母さんの真似をしようとします。これも他の動物と同じです。ただ、犬の赤ちゃんは犬のお母さんの真似をして、ネコの赤ちゃんはネコのお母さんの真似をして、人間の赤ちゃんは人間のお母さんの真似をするだけです。 だから、お母さんが日本語を話していれば日本語を、英語を話していれば英語を話すようになるのです。 それを英語では「mother tongue」と言います。日本語では「母国語」となりますが、子どもは「お母さんの言葉」を真似しているだけであって「母国の言葉」を学んでいるわけではありません。「mother tongue」と「母国語」は同じではないのです。 ですから、日本人の子どもであってもお母さんが英語で話しかけていれば、子どもは「日本の言葉(日本語)」ではなく「外国の言葉(英語)」を覚えます。 ただし、赤ちゃんがどのようにお母さんを「お母さん」として認識しているのかというと、「いつも傍にいて、ぬくもりと安心を与えてくれる存在」を、赤ちゃんは「お母さん」として認識するのです。 だから、人間の子どもであっても犬に育てられれば、犬を「お母さん」として認識し、「お母さん」の真似をするようになります。それはつまり、「犬らしく育っていく」ということです。 ただし、犬に育てられた人間の子どもは犬らしさを身につけてしまいますが、犬は人間に育てられても人間らしくなりません。(多少は感化されますが) 生まれつき持っている可能性の量が圧倒的に違うからです。 人間は「犬らしく」も「人間らしく」もなることが出来る幅広い可能性を持っている珍しい動物なんです。 まただから、「どういう環境で、どういう人と、どういう関わりの中で育っているのか」と言うことが、人間の育ちでは非常に重要になってくるのです。 お母さんが日常的に日本語を話していても子どもに日本語で話しかけていないのなら、子どもは日本語を学ぶことができないのです。 話しかけすらしていないのなら、いかなる「言葉」も学ぶことが出来ません。 そして、言葉を学ぶことが出来なかった子は、その後の学びも出来なくなります。当然、人間らしさも育ちません。 テレビを付けっぱなしにしていても、無駄です。いくらいっぱい動画を見せても無駄です。 言葉を聞いたから言葉が話せるようになるのではなく、傍にいる人が自分に向かって話しかけてくれたから言葉が話せるようになるのです。 子どもはお母さんや周囲にいる大人との日常的な関わり合いを通して、自分の育ちに必要なものを自分で選んで、自分の力で学び、自分の力で成長しているのです。 子育てで大切なのは「子どもの育て方」ではなく、「日常生活の中で子どもとどう関わっているのか」ということなんです。 子どもの成長を支えているのは「子育てのハウツー」ではなく、「大人自身の生き方や生活のあり方」なんです。 でも現代人は、自分自身の生き方は疎かにして、子どもの教育にばかり熱心です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.01.26 08:48:33
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